若者への優遇措置でフランスの商店街に活気を

『専門店』2010年3月号に掲載された記事です。

パリの商店街はなぜ元気か?

日本の商店街は、店主の高齢化や新規開業における資金不足がネックになっている。その点、1973年に制定されたフランスのロワイエ法は、柔軟に商業活動に従事できる仕組みが徹底している。

ロワイエ法は、小売商業者や職人が保護する大店法として知られているが、それだけでなく、小売業者の人材育成や新規開業者への助成、近代化や転業を望む小売商業者・職人への支援なども定められている。

たとえば、新規開業を意図する若者は、十分な資格や技術を取得していることを条件に、優先的貸付が認められている。若者への貸付措置がとられた背景には、70年代の失業問題があり、こうした施策は、失業がいまだ深刻な現代社会において、重要な雇用対策のひとつとなっている。

若者の職業教育や職業訓練を重要視しているのも、失業問題に起因している。職業訓練制度は、国や企業、地方自治体、職業訓練機関、労働組合などが連携して実施されている。その内容は、中学レベル(16歳)の初歩的な訓練から大学レベル(26歳)まで、年齢や経験に応じて各種用意されている。

フランスの教育課程の最後の二年間は、小売業や職人としての実習・見習教育を受けることができ、それが単位として認められる。実習生を受け入れた事業主には奨励金が交付されるなどの優遇措置もとられる。

こうした職業訓練制度は、若者が知識や技術を身につけるとともに、さまざまな職種への関心や認識を高めることにも役立っていると思われる。自分に適した職種の資格を取得し、就職へのアクセスもしやすくしている。

一方、高齢者に対する施策としては、60歳以上の商業者・職人に給付金が支給されたり、活動が遂行できなくなった者への給付金がある。こうした保証のおかげで、引退や廃業に踏み切りやすくなっているようだ。

若年層への助成金支給や職業訓練、そして、高齢層への給付金という制度のおかげで、フランスの小売商業者・職人は、世代交代がわりとスムーズに行われ、新規開業や商業の活性化が促されているように見受けられる。

若者の雇用問題が深刻さを極めるなか、フランスのこうしたシステムが日本でも適用されるべきではないか。同時に、後継者不足に悩む店主たちにとっても、望ましい施策ではないかと思う。
また、シャッターを開放し、若者たちに就業のチャンスを提供するのも、ひとつのソーシャルビジネスといえないだろうか。

フランスでは、社会問題はもとより、都市計画や交通計画も、中小小売業に関連性をもたせている。さらに、こうした計画の策定にあたり、市民参加型で活発に議論されている。

 

界隈の価値に注目したパリの都市計画と商店街 1/3
その地域の特質を生かした都市計画が実施された二つの街路、モントルグイユ通りとムフタール通りは元気づいている。「界隈」の価値や魅力を尊重し、保全・活用する都市計画「界隈の土地占用計画」がパリで打ち出されたのは、1990年代に入ってからのことだ。

パリの都市計画と商店街 乱開発から伝統重視へ 2/3
パリの都市計画と商店街 街づくりも住民参加で 3/3
パリの市場事情から日本の「市場」を考える 1/2
パリの市場事情から日本の市場を考える 2/2
フランスでは住民参加で商店街に活気を

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