2011年8月31日のメディアパルトに掲載されたポール・キレス氏(政治家・社会党・元国防大臣・元内務大臣)のブログ「原子力:なぜ国民投票か?」の抄訳です。
最近の新聞上での議論で私は、重要な問題に関して、政策決定者によって巧妙に管理された混乱が、どのように真実を隠蔽する意図をしばしば覆い隠すかを述べた。逃げ口上はつねに同じである。誤った証明、決まりきった表現、沈黙、「言ってない」……。原子力を例にとり、我々と次の世代の生活に非常に関係が深いにもかかわらず、議論のないまま政策が決定してしまうのを避けるために、より民主的な方法が実施されることを提案した。
国民投票でフランス人の意見を反映するという私の提案は、適切な論評の対象になり、私はここで自分の考えを正確に述べたい。
国民投票の原則は憲法11条(2008年7月23日改正)に規定されていることを、まず思い出してほしい。特に、「大統領の発案、政府の提案、……もしくは、両議院の共同による議会の提案に基づいて……、公権力の組織に関して、国の経済・社会・環境政策および公共サービスの諸改革に関して、あらゆる法案を国民投票にかけることができる」 議会提案の場合、国民投票は「10分の1以上の有権者の支持に基づいて、5分の1以上の議員で国民投票を発議することができる。この発議は、議員提出法律案の形式で、1年未満に交付された合法的規定の廃止を目的にすることはできない」
私は、市民の協議方法に逆らって、形式化された典型的な批判を充分に理解していないわけではない。国民投票の形への漸次的な推移(1969年)、議会手続きによる結果の方向転換(2005年の欧州憲法、そしてリスボン条約)、議会の決定力の削除、衆愚政治への傾き。これにもかかわらず、私は、人々の意思表示の道具として国民投票を用いる可能性があると確信している。それには3つの条件が必要だ。
-反対の意思表示も含めて、本当の意味での公開議論を開催するために、事前の情報が最大限に公開されること
-議会はそのやり方を敬遠しないこと
-国民投票の手続きは、問題が将来に重要にかかわることだけにすること
電力生産における原子力エネルギーの使用は、国民投票の手続きを真剣かつ責任を持って取り組む問題として適切だといえる。有用性、危険性、費用、日程表といった全面的に透明性のある情報と議論は、過剰な情熱と誤用された単純さを確実にさけることになるだろう。
そこで、4つのステップを提案する。
1.専門家を交えた研究委員会が、原子力エネルギーの3つのシナリオを念入りに作成する。そのメンバーは、これらのシナリオを正しい方法で詳述し、特に投資および消費の経費、エネルギーの代替資源の開発、日程表、雇用についての将来性を完全に分析すべきである。
3つのシナリオは次の通り。
シナリオ1:原子力による電力生産の現在の傾向のまま発展を継続し、予定されていたEPR原子炉の建設を維持し、4世代原子炉に着手し、ITERの研究を続ける。
シナリオ2:2020年までに原発の出力を60%へと徐々に減少させる目標に向けて、2012年から全ての原発施設を停止し、解体していく。フラマンヴィルのEPRの建設を中止し、パンリーのEPR計画をキャンセルし、原発施設の解体と施設区域の再生に向けた産業活動を発展させる。
シナリオ3:2020年から、寿命を迎えた(1977~1985年に建設された原子炉)施設の新たな取り替えをせず、その時点で状態を再点検する。
2.このシナリオ作りの結果は、大キャンペーンを通して情報公開される。フランス人によく理解されたところで、公開討論を行う。
3.この2つのプロセスの後、議会での審議にゆだねる。議会での討議の末、ひとつのシナリオが選択され、それを国民投票にかける議員提出法律案の形で申請する。
4.フランス人は国民投票によって、この法案に対する意見を出す。
こうしたやり方は、民主的で透明性があり、知性と責任感に訴える。この方法は難しく、「全面的な受け入れか、全くの否定か」という中身のないスローガン、まやかしの決まり文句、反論の余地のない引き受け、戯画、安請け合いという議論もないまま認可される容易さとはほど遠い。
この方法で選択することにより、左派と環境派は、将来を約束する大事な決断にフランス人を参加させる可能性を強く印象づけるだろう。
(2011年9月17日)