マジダさんのセンターについて、今回が最終回です。
彼女は100円ショップで、子どもたちのために、イラスト入りのメモ帳や面白い形の消しゴムなどを選んでいました。文房具だけでなく、知恵の輪といったゲーム類もいくつか購入していたのが印象的です。
子どもたちをいかに楽しませるか。
そのためには、大人が大人としての役目を果たさなくてはなりません。
マジダさんのセンターでは、指導員やボランティア、母親の育成、そして地域の人々の意識改革にも力を注いでいるそうです。
以下、彼女の話を紹介します。
指導員やボランティアを育成するにあたり、2つの大きな障害が存在します。
ひとつは、大人も精神的な問題を抱えていることです。
スタッフのトラウマについて、ガザにある唯一の精神ケア専門施設に相談したところ、「うちのスタッフも同じ問題を抱えているので、そちらのケアはできない」と言われました。
もうひとつは、外部との接触が難しいことです。
外国のボランティアや専門家を呼びたいのですが、イスラエルの許可がおりません。
迷路の中のウサギのように、ただ走り回っているように感じることもありますが、できる範囲で、指導員やボランティアの能力開発のための特別プログラムも実施しています。
年度初めに、指導員とボランティアは2ヶ月の研修を受けます。テーマは、人権、子どもの権利、教育方法、芸術などです。教育に関しては、学校教育とは異なる“学び”の考え方、従来とは違う教育について学習します。
週の最終日にフリーディスカッションと評価を行い、指導員やボランティアが意見を述べます。その結果により、さらに別の研修を行います。
また、3ヶ月に3日ほどリフレッシュデーを設け、外部から講師を呼んで、指導員たちに新しい教育法やワークショップの方法を学びます。子どもたちの成長は非常に早いため、指導員はそれに対応できなければなりません。
母親たちへの教育も大切です。
月に2回ほど母親たちを集め、センターでどのようなことをしているか説明します。
それと同時に、子どもたちが家でどのように過ごしているか教えてもらいます。
こうした取り組みは、パレスチナでは斬新です。
センターの活動を継続させるには、親や地域社会の理解が不可欠なのです。
センターの建築には、フランス政府が補助金を出したのですが、建設に関わるのは地元の人に限定することを条件にしました。備品なども地元のものを優先しています。
ガザで購入できる物品は少ないのですが、地元経済に貢献したいと考えています。
ハマスが政権を獲得した2006年は、非常に厳しい年でした。
国際社会の批判を受け、その結果、子どもの教育に打撃を受けました。
無償で配布されていた教科書さえ不足し、私たちの活動予算の大部分が、義務教育の学費、靴や通学服といった緊急支援に向けられました。
食糧が不足しているときに、私たちの活動だけにエネルギーを注ぐことはできないので、社会状況を考慮してはいます。
とはいえ、私たちの活動は、緊急支援を主旨としているわけではなく、コミュニティー開発というか、子どもたちを通じて地域社会に力をつけ、地域を底上げし、建設していくことにあります。
(2007.04.26. 15:20)
日本もパレスチナ問題の解決に国際的責任を『日刊ベリタ』12月1日