日本の原子力関連機関の多くは福島原発の情報を発信せず

福島第一原発の事故がなければ、原子力関係の機関がこれほど日本に存在していることを知らずにいたと思います。
「難しそうな分野」と関心が向かなかったのですが、今回、リンク集などを頼りにホームページを開いてみてはじめて、その数の多さを知りました。

以下の原子力関連機関のサイトの多くが、福島第一原発事故についてほとんど情報を発信していません。

財団法人 日本原子力文化振興財団(JAERO)
「原子力が明るい文化社会の形成に寄与することを目的」に、1969年7月に設立された財団。原子力の理解を深めるための情報提供、啓蒙活動を行っている。
今回の地震に関するページでは、「放射線の基礎知識」などが載っているが、ほとんどが他のサイトからの情報(リンク)。
このサイトから、文部科学省の原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト「あとみん」にリンクする。この「あとみん」では原発事故について一切触れていない。

全国原子力発電所所在市町村協議会
原子力発電所を有する市町村が組織する協議会。
「原子力発電所の耐震安全性の確保に関する申し入れ」を行っている。

日本原子力学会(AISJ)
「原子力の平和利用を目的に原子力の開発発展に寄与するための専門家の自発的な集団」で、学術および技術の進展、人材育成などを行っている。
サイトのトップページに福島原発事故のコーナーがあり、福島第一原発の炉内の構造解説などのプレスリリースを発表している。

社会技術研究開発センター(RISTEX)
独立行政法人科学技術振興機構の事業のひとつ。
「社会の具体的な問題を解決する研究開発を推進するため」の活動を行っている組織。
サイトを一見すると、原子力とは関係ないようだが、沿革には、「日本原子力研究所および科学技術振興事業団(当時)が連携協力体制を構築し、平成13年7月に『社会技術研究システム』を設置し、研究活動を開始した。」とある。
トップページから災害関係のリンク集にとぶことができるが、政府や公共機関がほとんど。

原子力発電環境整備機構(NUMO)
特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成12年法律第117号)により設立。「ウラン燃料をリサイクルする過程で発生する高レベル放射性廃棄物および地層処分を行う低レベル放射性廃棄物(TRU廃棄物)を安全・確実に地層処分する重要な役割を担っています」とのこと。
地震災害のお見舞いはあるが、原発事故についての記述はない。

財団法人 高輝度科学学研究センター(JASRI)
「世界最高性能を有する大型放射光施設(SPring-8)の共用を促進し、科学技術の発展・振興に寄与することを目的」に19902年に設立された。SPring-8の運転・維持管理、施設利用者への放射光の提供、放射光利用研究を促進するための試験研究、SPring-8の利用促進などの業務を行っている。
このセンターのサイトには、原発事故の記述はない。
Spring-8のサイトでは、地震の被災者へのお見舞いと、地震で被災した量子ビーム研究基盤への支援についてのみ記述がある。

一般社団法人 日本電機工業会
「地球環境保全を図りつつ、わが国電気産業の繁栄と日本経済の持続的発展に貢献」するのが会の趣旨。「電機産業の持続的発展のための施策立案・推進、政府・行政の諸施策への意見具申・政策提言」などを行っている。
エネルギーの低炭素化として、「CO2を排出しない原子力発電の推進や新エネルギーの普及拡大に注力して」おり、「地球規模での普及拡大により、低炭素化社会を構築するキーテクノロジーである」として、「燃料のリサイクルが可能であり経済性にも優れた原子力発電は更なる立地の推進、既設原子力発電所の稼働率向上を図ることにより、引き続き基幹電源としての役割が大いに期待されております。」とのこと。
今回の原発事故については一切触れず、被災者への見舞いの言葉と、「300万円の義援金を贈った」と書いている。

社団法人 日本電気協会
明治25年に発足した会が源で、「黎明期、また戦中戦後の電力危機時代から復興・高度成長期の電気関係事業を側面的に支えてまいりました。情報化が進む現在、多様化する電気関係事業に対するニーズ、課題に役立つ新たな事業活動に取り組んでいます。」とのこと。
原子力関連学協会規格類協議会、原子力規格委員会の事務局をつとめ、原子力発電に関する調査・促進のための懇親会やセミナーなどを開催している。
地震の被災者へのお見舞いのみで、今回の原発事故には触れていない。

財団法人 電力中央研究所
「電気事業に必要な研究・技術の開発と、これらを通じて産業や社会の発展に寄与することを目的」に1951年に設立された。原子力技術関係では、原子炉施設の耐震設計技術の確立、立地点の調査や建設、放射性廃棄物の処理・処分対策などの研究などを行ってきた。
4月1日に発表された研究課題には、「今回の震災対応に直結する課題等にも迅速に対応致します」とある。
しかし、トップページの更新は3月10日が最後で、被災者へのお見舞いのほかは、原発事故に関する記述はない。

公益財団法人 原子力環境整備促進・資金管理センター
日本で唯一の放射性廃棄物の調査研究機関。放射性廃棄物の調査研究と資金管理の活動を行っている。
サイトでは、今回の事故に関しては一切触れていない。
放射性廃棄物の処理は、放射能漏れの問題をつねに抱えているはずなのだが。

社団法人 原子力燃料政策研究会
「地球環境に優しく、エネルギーの安定供給に欠くことのできない原子力の平和利用、そのための原子燃料リサイクルの確立のため」に設立された公益法人。
サイトには、今回の事故についてはまったく記述がない。
この研究会は、「核兵器を地球から廃絶するためにも、プルトニウムの平和利用を積極的に進めるべきであると考え、活動を続けています」とある。
福島第一原発3号機では、プルトニウム漏れ出しているのだが。

独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)
「海洋に関する基盤的研究開発、海洋に関する学術研究に関する協力等の業務を総合的に行うことにより海洋科学技術の水準の向上を図るとともに、学術研究の発展に資することを目的」として活動しているという。
サイトには、原発事故について記述がない。海洋への放射能放出は、研究の対象ではないのだろうか。

社団法人 火力原子力発電技術協会
「会長(東電)のご挨拶」に、「火力発電と原子力発電の安全性・信頼性の確保、向上ということは勿論、…(略)…、原子力発電の新増設や利用率向上による原子力発電の利用拡大といったことがらは、ますます重要なテーマとなって参ります。この点については当協会の最重要テーマとしてより広く深い支援を展開してゆくべきであります。」とあり、調査研究、発刊、普及が主な活動。
今回の事故については一切記述がない。

財団法人 原子力研究バックエンド推進センター
原子力研究開発機関や大学等で発生する放射性廃棄物の処理処分に関する調査を行う機関。
今回の事故に関しては何も記述がない。

財団法人 高度情報科学技術研究機構
1981年設立の財団法人原子力データセンター(NEDAC)が、1995年の組織の変更で同機構になった。「原子力、地球環境等の分野における情報科学技術の高度化、大規模計算機の利用技術の開発、原子力分野のコード・データベースの提供などで多くの実績を上げ、この分野での発展に貢献しています。」とのこと。
今年2月24日以降更新がなく、今回の事故についても記述がない。
原子力百科事典ATOMICAでは、放射能についてなど、原子力に関する情報を提供している。このサイトも最後の更新は2月28日。

財団法人 核物質管理センター
「核物質を取り扱う事業者から国へ報告される情報の処理、また、核物質が適切に管理されていることを確認するための検査や分析」を行っている。
東海村と六ヶ所の保障措置センターでは、安全管理業務として、職員の個人線量管理、施設内の作業環境にかかわる放射線管理などを行っている。
今回の原発事故については一切記述がない。

社団法人 海外電力調査会
日本の電気事業が重要な基礎産業として急速な発展を遂げたていた1958年、海外の電気事業との情報交換を組織的・恒常的に行う重要性から、設立された。
活動のひとつに、「発展途上国の電力基盤整備、原子力の安全性向上、原子力導入に対する技術協力を会員会社や関係機関等と協力して進めることにより、国際協力の推進、友好関係の醸成」がある。
今回の原発事故については一切記述がない。

 

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