「安全」とは、人の命を守り、人間が生きていくうえで必要不可欠な自然環境、動植物、生態系を守ることをいうのだと思っていた。
でも、この国の「安全」は、経済界や産業界を守ることが優先されている。
放射能の危険から守るため、フランスではどのような体制がとられているか、調べてみた。
公的機関のひとつのホームページで、政府省庁から原子力企業、非営利団体まで、放射能監視機関を概観することができた。
一般の人も、このサイトを見れば、その流れがわかる仕組みになっている。
同じようなものを日本で探したが、まったく見つからなかった。
どこがイニシアティブをとっているのか、どの公的機関がどこと連携をとっているのか、そうした体系をつかむことができない。
公的機関をチェックする非営利団体の存在など、まったく除外されている。
原子力関連機関のリンク集を参考に、安全と名称につく機関、放射能関連の機関、その他の機関のサイトの「福島第一原発事故」の情報について調べた。
機関の数は多いが、情報量は少ない。
よその国のフランスのサイトのほうが、この原発事故について詳しい。
フランスと日本の安全体制を並べてみて、気づいたことがある。
「原子力安全・保安院」は経済産業省の管轄だ。
だから、守るべきは、人命や環境ではなく、経済・産業界なのも理解できる。
放射線量率などのモニタリング測定は各地で行われているが、その方法や基準などが一貫しておらず、それらのデータを組み合わせて分析する総合的な組織もない。
放射能監視体制に、農業・食品関連機関がまったく含まれていない。
原子力産業の従業員を保護する、厚生労働関係の機関も関与していない。
さらに、環境省が何の役割も果していない。この点が、フランスとの最大の違いである。
大気や海、土壌の放射能汚染は、明らかに環境問題なのにもかかわらず、日本の環境省は、この分野にまったく登場しない。
環境省のホームページでは、「節電」とか「省エネ」といった情報ばかりが目につく。
フランスでは、「環境」とか「エコロジー」といった言葉はあまり使わない。
こうした問題は、「持続可能な開発」に含まれることが多い。
なので、扱われる分野は、環境破壊、温暖化といった、いわゆる日本の環境問題から、搾取的開発にともなう労働や人権の問題など広い。
日本で、原子力・原発は、この国の経済を支える重要な産業であり、産業界に必要なエネルギーであり、そのためには環境を破壊しても、人体に悪影響を与えても、関係ないのだろう。
「経済や産業のため」という言葉に、私たち日本人は弱い。
この原発事故から、日本のいろいろな悪い側面が見えてくる。