放射性廃棄物”核のごみ”の地層処分場をめぐりフランスは

フランスでは2013年5月15日から、ビュールに建設予定の高レベル使用済み廃棄物の地層処分場の是非をめぐる公開討論会がはじまった。

反対派はこれに抗議して中止の署名を呼びかけ、予定されていた5月30日と6月6日の討論会がキャンセルになった。

次の討論会は6月13日の予定だが、反対派は強固姿勢を崩していない。

北海道の幌延にも地層処分の研究所があり、そこがそのまま処分場の建設候補地になりそうな気配もあるので、フランスの動向が気になる。

核廃棄物処理場に反対する団体「Bure Zone Libre」のメンバー2人に、2012年3月10日、アビニョンで開催された「フクシマデー」でお話をうかがった。

ジュスティーヌ・メルズィザンさん

ビュールは人口がたった92人の小さな町です。ムーズ県に属し、ムーズ県とオート・マルヌの県境に位置しています。

1994年から核廃棄物地下埋蔵施設建設計画が開始しました。この施設は、8800㎥の長期半減期高放射能廃棄物を、500メートルの地下埋めるというものです。

施設の正面には、周辺への放射性物質排出を許可された2つの原子力施設が設置されます。ひとつは、容器詰めをする工場で、アレバで第一次容器詰めしたものを、ここでさらに新しく包装します。地下に埋めるためにより強力な容器に入れなければならないからです。

もうひとつの原子力施設は換気用で、ここから周辺への放射能漏れが予想されます。
ここに核廃棄物施設を建設する口実は、過疎地域の小さな村で、財政的にも非常に困窮しているからです。

社会学的な条件においても、理想的です。というのは、都会から少し離れたところにあり、過疎化が進み、村を去る人が多く、観光地としても遅れていて、周辺部にあるからです。

この地域で反対運動をする人はあまりいません。ここが重要なポイントです。

放射性廃棄物管理公社(ANDRA)は、地下貯蔵施設の建設が使命です。最初はフランスのほかの場所に建設しようとしましたが、住民が非常にすばやく、非常に激しく反対しました。そして突然、ビュールが核廃棄物地下貯蔵の場所に決まったのです。

私はビュールル出身ではありません。この建設に反対するためだけに、ビュールに移り住みました。外からの人が、この建設計画に反対する地元の人たちを支援しています。少数ではありますが、地元の人が1994年から反対運動をつづけています。

私たちはビュールに、「核のゴミ箱に抗議する家」と呼ぶ家を持っています。この家は、地方から来る人々を歓待する目的で作りました。闘いに参加するために来る人、学ぶために来る人など、この家を使う目的はさまざまです。

ANDRAは核廃棄物処理場の建設だけでなく、とても素晴らしいプロパガンダを展開しています。ビュール周辺の地域で、とても積極的に、とてもばかげた広報活動を行っているのです。「放射能は自然界に存在する」などと説明するために、フリーペーパーを配達したりしているのです。それはまさにプロパガンダで、誇張した言葉を使っています。

ANDRAはまた、中学生や高校生向けに展覧会を企画したり、いろいろなことをしています。つねに同じ議論を展開し、放射性廃棄物を一般化させようとしています。

ですから、私たちは自分たちで学ぶ機会を提供しているのです。放射能に関する、偏重のない、客観的な教育です。本の貸し出し、資料の公開、展覧会、集会、フェスティバルなども開催します。

もうひとつ、この家の存在として重要なのは、私たちが当事者であることを示していることです。ここは、人の住めない状況だった廃墟を購入し、改築しました。そして、風車を建設し、エネルギーも生産しています。

 

 

マキシム・ルモニエさん

ビュールの抗議行動で難しいのは、ANDRAが原子力施設建設を計画している地域が問題を抱えているということです。一番厄介なのは、原子力産業が地域経済の活性化といい、1億ユーロものお金を出すところにあります。極度の財政難という口実で。

農業で生活するのは難しく、他の産業が参入してくると、最終的に農業が消滅してしまいます。農家はほとんどなくなり、住民は高齢化しているので、経済効果と雇用創出ということで、原子力に賛成するのです。

立地地域に進出するために、数々の原子力産業が1億ユーロものお金を用意します。現実には、3000万ユーロをビュールの属する県に出し、3000万ユーロをビュールから100キロ圏内の近隣の県に出しています。

私たちは、原子力で土地を犠牲にしないよう、政策を変える決断を促す提案を地域の人々にしています。原子力産業で土地を犠牲にするより、他の方法でお金を手に入れたほうがいいからです。

原子力に反対するときには、もうひとつの圧力にも立ち向かわなければなりません。原子力産業に対する攻撃は、フランスの国家戦略を攻撃でもあり、国がそれをわからせようとします。特に警察の力がすごく、私たちの活動や家の周りを監視しています。憲兵が毎日やってきて、何をやっているのか調べるために家の周りをうろつきます。

私たちの活動目的は、原子力を公然と批判し、それを地元住民に示すことです。なのに、警察がつねに周辺をうろついています。たぶん、ビュール地域の地元住民が私たちと連帯するのを邪魔するやり方でもあるのでしょう。

例を挙げると、ある日、公共の場で集会をしたとき、平穏な集まりを脅かされました。憲兵隊がやってきて、そこにいたすべての人の身元確認をしたのです。公共の場での集会なので、何の危険性も何のトラブルもないのに。

他の例では、ビュールの家に電話をしてきた人が、電話をしたことを憲兵につきとめられました。フランスでは原子力に反対する人たちの会話を盗聴しているのだと考えられます。

フランスという国は、原子力産業に80%頼っています。これを攻撃すれば、これに反対すれば、すぐにこのような弾圧を受けるのです。

(2013年6月6日)

 

フランスの”核のゴミ”はどこへ?深刻化する核廃棄物問題
毎年、フランスの58の原子炉から1200トンの使用済み核燃料が産出される。使用済み核燃料に加え、原子炉の閉鎖や解体から出た核廃棄物もある。あわせて、1000㎥の核のゴミがフランス国内に存在している。これらをどうすべきか、処理費用はいくらか。
フランスの研究者ラポンシュ氏が「核のゴミ」問題を語る
フランス原子力庁勤務した経歴のある科学者は、「MOXは核燃料のなかでもっとも危険な物質」「今のところ核廃棄物処理のいい解決方法はなく、地中に埋めるなどとんでもない方法。日本は特に、地震が起きたら、埋めた核燃料が上昇して地表に出てくる」と語る。

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