国連の人権規約委員会が7月24日に出した勧告のなかに、今回はじめて、福島第一原発事故問題が言及されました。
福島事故が人権問題として、国連で取り上げられたのは、画期的なことです。
7月25日に行われた記者会見で配布された、海渡雄一弁護士の「日本政府報告書審査の概観」によると、審査では次のような質問がされたそうです(引用)。
「スイスのケリン委員が、福島原発後の状況に懸念があるとして、特別報告者(アナンダ・グローバー氏)のレポートを取り上げ、国際基準(年間1ミリシーベルト)の20倍の線量地域に帰還政策がとられていること、帰還した者に月次の補償がなされるのか、避難している人々にどの程度の情報が提供されているかなどの質問がなされた。」
勧告の訳は以下の通りです。
福島原子力事故
委員会は、締約国が設定した福島の被ばく量の上限が高くいこと、数か所の避難区域が解除されたために人々が高レベルの放射能に汚染された地域に戻ることを余儀なくされている状況を懸念する。
締約国は、福島原発事故で被害をこうむった人々の生命を保護するために必要なあらゆる措置を講しなければならない。そして、住民にとって危険のない放射線量である地域以外はすべの汚染された地域は、避難区域と指定しなければならない。
締約国は、放射線量のレベルをモニタリングし、原発事故の被災者に適時その情報を提供すべきである。
こうした勧告の法的拘束力がうんぬんされますが、日本は勧告を遵守しなければなりません。
人権規約委員会の英語の名称は「Human Rights Commitee」で、各国の人権を擁護し、人権の尊重を促すのを目的とし、国連で採択された「自由権規約」の実施を監視するために設置されました。
日本は1979年にこの自由権規約に批准しています。
日本国憲法第98条2項では「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とうたっています。
この自由権規約を実施していないとみなされて出された勧告には従わなければなりません。
(2014年7月29日)