親と同居するイギリスとドイツの若者のパラサイト現象

イギリスとドイツのパラサイト現象について、新聞記事の紹介です。

最初はイギリスから。

「007はママと同居していたか?」の見出しで、タイムズ紙インターネット版2000年1月22日号に、親と同居する男性に関する記事が掲載されました。


ブライトン大学講師の心理学者ミック・クーパー医師は冷笑する。
「ジェームズ・ボンドがママと住んでいたなんて、ありえないだろう。親と同居する男性は、弱虫ってことさ」

住居価格の高騰でますます家を買うのが難しくなり、親と同居生活を続ける男性が増加している。社会的には非常識に見られがちであっても、経済的にはしかたがない。

これは、男性特有の現象である。

女性は親元から独立したがり、自分の部屋を借りる傾向にある。家を購入する前に賃貸アパートで生活する女性は2/3だが、男性は1/3にすぎない。男性たちは、家を出ると親子関係が薄れると言い、生活費がかさむことを心配している。

親との同居は安あがりとの考えについて、チチェスターの臨床心理学者ロン・ブレイシー医師は、「遊びまくりたいから、親と同居する男性もいる」と断定する。

26歳のTVプロデューサー、ダン・ホールは、大学卒業以来、ロンドン北部の両親の大きな家に住んでいる。「自分でビジネスを起業したので、経済的にこうするのが当然」と彼は説明する。「家にお金を入れていないが、昼飯と夕飯は自分で買っている」

内務省の調査官である兄ギーもまた、28歳まで親と暮らした。「ロンドンの環境のいいエリアにある美しい家にタダで暮らすことができる。それを放棄するなんて、バカげている」と、ダン・ホールは言う。

親と同居する男性のほとんどが、家にお金を入れない。せいぜい、形ばかりの金額を寄付するだけである。31歳の俳優ジュリアン・ナイトは、1994~1998年の4年間、親と暮らした。俳優生活は不安定であるため、母親の家に滞在せざるをえなかったのだ。

「最初は、現実的な理由で親元に戻った。公演ツアーで9ヶ月間アパートを留守にするので、借り続ける意味がなかったから。やがて、ロンドンに戻る気がなくなり、親の家に住みついた。食費を含む経費として、週25ポンド払っていた」


ドイツのパラサイトシングルについては、フランスの総合誌レクスプレス(1998年1月8日号)の記事です。


ドイツのパラサイトは、地中海沿岸(注:ラテンは同居が多いため)の表現を使い、“ホテル・マンマ”現象と呼ばれている。

あるドイツの調査会社によると、23~24歳のドイツ人の45%、30代の11%が親と同居していることがわかった。

フランスよりドイツは就職率が高いとはいっても、失業がパラサイトシングルの要因のひとつになっているのは確かだ。

他の国に見られるように、ドイツでも親子関係は進化し、世代間の溝は縮まっているため、親子の同居は快適なものとなっている。

その一方で、従順な子供を引き止めるようとするドイツの母親が、イタリアのマンマと全く同じぐらい強烈であることはあまり知られていない。
ドイツの母親の就業率は高いとはいえず、仕事を持っているのは54%ほどで、パートタイムが少なくない。

ドイツには6歳未満の幼児のための施設がなく、「母親は子供の教育の中心的な役割を果たし、過保護になる傾向にある」とドイツ人社会学者は語る。「母親は子供中心の生活になりがちで、できるだけ長く自分の手元におきたがる」と言う。

学生を対象にしたある調査によると、教育ママの母親を持つ息子はかなり多く、非常に甘やかされて育っていることがわかった。

未熟な思春期の青少年の奇癖は、特に、大学教育に見ることができる。ドイツの大学生の年齢はヨーロッパの中でかなり高く、大学院生の平均年齢は28歳だ。

ただ、独立を望む人もいないわけではない。学生のほとんどが仕事を持ち、月に約4400フランを好きなように使っている。

若者の2割は、親元を離れ、大きなアパートに数人でシェアする暮らし“WG”を選ぶ。成人する前に、擬似家族との生活を体験するのである。

(2006年2月12日)

 

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