ニート(ひきこもり)という状態:スコットランド調査から

ニートと日本のひきこもりが同じとは言えませんが、スコットランドのニートの調査を紹介します。

2005年にスコットランドでは初めてニートの調査が行われたそうです。
その調査により、いくつか今後の対策が提案されています。

男女別々の対策の必要性があげられているのと、「落ちこぼれがニートになりやすい」ため、義務教育のあり方を考え直すべきとあります。

ニートにはさまざまなグループがあり、ひとつのカテゴリーとみなすのは間違い。そのため、それぞれに適した対策を施行しなければならない。
育児や家族の世話でニートになっている女性には、別のアプローチが求められる。アルバイトを踏み台と考えている若者には、それに応える援助が必要である。
落ちこぼれがニートになりやすいことが判明したが、落ちこぼれるのは学校に魅力がないからであり、義務教育のあり方を考え直すべきである。
男性と女性は違う政策が求められる。
職業訓練機関があまり機能していないようなので、見直しが必要である。

日本も対策は同じだと思いますが、ニートやひきこもりは厚生労働省、学校教育は文部科学省で、横の連携がとれていないのではないでしょうか。
学校から労働へのつながりの悪さが、ニートやひきこもりを増加させている原因のひとつだと考えます。

スコットランドのニート対策がうまくいったのかは、よくわかりませんが、その後の調査では、ニートの数は減少しています。

2015年7月22日に更新された調査結果によると、2014年の16~19歳のニート数は、2004年にはじまった調査のなかで最も少なく、21,000人でその年齢の8.4%。男性は5,000人、女性は3,000人減少。
2014年にはじめて、女性が男性を上回り、女性は9.2%、男性は7.7%。

2018年5月に発表された2017年の労働調査では、16~19歳の8.5%がニートで、2016年より2.2%減少し、13.2%だったピークの2010年より4.7%減少したとあります。
2017年は男性のほうが女性より多く、男性は9.5%、女性は7.4%。

以下は、2005年のニート調査について、その当時このブログにアップした記事です。

「ニート=働く意欲のない若者=ダメ人間」みたいな図式ができあがっているが、2005年にスコットランド政府の教育省が発表したエジンバラ大学の調査結果によると、どうも違うようだ。

ニートとは「若者の生活状態」を指し、「一度でもニートだったことがある若者」「短期間ニートだった若者」と表現している。

また、ニートの範囲は広く、働いていない人(失業中、求職中)、育児や家族の世話をしている人、病気や障害を持つ人、アルバイト、パートタイムで勉強中、ボランティア活動をする人、旅行中の人、長期休暇中の人も含まれる。

働く意欲のない若者をニートでくくってしまうのは、柔軟な生き方を否定しがちの日本の風潮か。 ニートという言葉だけが、少しゆがんで独り歩きしているように思える。

スコットランドの調査では、「ニートといってもさまざまな種類があり、それぞれに適した政策が必要」と結論づけている。

スコットランドで初めて実施されたニート調査は、1995/96年に義務教育を終了した16/18才が対象で、彼らの進路を3年間追ったもの。

ニートは、ポジティブなニートとネガティブなニートの2種類に大別できる。

ポジティブなニートは、自分が選んだ生き方であり、「卒業後は仕事」というお決まりの人生コースを否定し、経験を積んで就職しようと考える若者。アルバイトやパートタイムをしながら勉強に励む人、ボランティア活動をする人、旅をする人、長期休暇中の人がこのタイプに入る。

ネガティブなニートは、仕事の機会に恵まれず、アウトサイダーになっていく若者。これらの若者は、家庭環境や教育(落ちこぼれなど)に問題があるケースが多く、ニートを繰り返し、働く意欲を失い、悪循環から抜け出せなくなりがちである。

一度以上ニートを経験したことのある若者は31%。女性32%、男性30%で、女性のほうが多い。

「ニートのときはどうしていたか?」の質問では、失業(もしくは就活)がトップで、男性の2/3と女性の5割がそう答えている。続いて、アルバイトかパートタイムで勉強が多い。
女性だけに限り、育児や家族の世話が7%いる。

「ニート経験は一度だけ」という若者は半分以上で、長期にわたるニートの原因となるのは、育児や家族の世話、失業だ。
短期のニートは、旅行、アルバイト、ボランティア活動をしていた人に多い。

ニートは増加しているが、3年間6回の調査でのニート割合は5~16%と上下しており、連続して増加しているわけではない。
ただ、2/3以上のニートが、半年後の調査でも同じ状態のままだった。

ニートでなくなる手段としては、就職する人が最も多く、進学するケースもある。

「どのような人がニートになりやすいか?」の質問では、「学校の成績が平均以下」「女性」「登校拒否」「父親の仕事が安定していない」「少なくとも片親が失業中」の若者との結果になった。

「ニートは将来の生活に不利か?」を調べたところ、早い時期にニートを体験すると、「大学へ進学する意欲がなく、教育、仕事、家庭生活に夢を持っていない」若者になる場合が多い。
このような若者は、ニートを繰り返しやすい。

また、育児や家族の世話をする人、病気や障害を持つ人も、再びニートになりやすい。

しかし、ニートの4/5以上が求職中か職業訓練中で、2/5以上が過去4週間に就職活動を行っている。一年中ニートという若者は1/5のみである。

 

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