フランスの団塊世代の無責任さと若者のパラサイト現象

1990年代、フランスでは、「若者のパラサイト現象はその親世代に問題がある」という議論になりました。この親世代は、日本でいう団塊の世代です。

パラサイト現象にとどまらず、当時の若者の問題、就職難や失業率の高さ、貧困なども、その親世代の問題として議論されていました。

日本では、ロスジェネ世代(ロストジェネレーション)が話題になるものの、その親といえる団塊の世代の責任については、まったくといっていいほど議論されません。

以下、フランスの総合誌レクスプレス(1998年1月8日号)のパラサイト特集で掲載された記事の紹介です。


精神科医で精神分析学者のパトリス・ユイエ氏のインタビュー。

<若者が長期間親と同居するのはどうしてか?>
現実問題として、親たちは若者が大人になってほしくないのだ。
68年世代は、自分が永遠に若いと思い込んでいる。
彼らは社会を変えたかったけれど、結果的にはつねに希望通りにいかなかった。
それでいて、50歳になった今でも、彼らは若いままでいたいと思い続けている。
それを実現するためには、自分たちの子供を子供のままにしておく必要がある。
若者が成熟するのを防ぐことで、無意識的に、競争を避けようとしているのだ。

<意図的に距離をおくということか? 親子関係は親密になっているように見えるが>
世代間の暴力は包み隠されているが、本当は激しい。
動物行動との比較に基づいているといえる。
若者と、グループの中心的権力を有する大人の間には、つねにライバル意識が存在する。
旱魃期における数種の哺乳類の行動を見ると、年の若いほうは、成年に追放されるか、もしくは孤立状態に追い込まれる。
人間世界では、中心問題は水面下に隠れ、目に見えないが、暴力は減少したりしない。

<思春期の延長は、若者にとって苦痛の原因になっていると思うか>
思春期というのは、19世紀中ごろからの就学期間の延長によってもたらされた、かなり近代的な概念である。
子供と大人の間の思春期は、発展途上国には存在しない贅沢な期間であり、それと同時に、危機的な時期ともいえる。
数多くの荒々しい経験をする時期であり、恐ろしいほどの不安にさいなまれて行き詰ると、ストレスは最高潮に達する。思春期の弱さでいっぱいになる。

<心理的な問題が増加するのか>
心理的苦痛は大きく増加する。若者は、どうしたら大人として認められるのかがよくわからない。
子供から成人へと成長する通過点として、以前は儀式があったが、現在は目印がなくなった。
自殺未遂や家出の数の増加がそれを説明できる。
多くの若者にとって、自殺未遂や家出が大人への入門的な経験となるのだ。
どのような文明であれ、成人になるためには、危険に直面する必要があった。
現在、親たちは、あらゆる危険を拒否して、若者を子供の状態のままにしたがっている。
結局、一種の違反を犯しているということだ。

<未成年の状態に閉じ込められたことに対し、若者は反乱を起こすだろうか?>
若者がおとなしく、従順なことに、実は驚いている。彼らは社会の犠牲になりながらも、親たちに感謝している。若者たちの自己規制が信じられない。
若者たちは多くの潜在能力を持っているのに、それをどう利用していいのかわからないでいる。彼らは待っているのだ。
若者たちは、自身が社会に影響を与える力があるということを想像できないでいる。彼ら自身が大人になるのを禁じているのだ。成人した大人とは、服従しないで責任を引き受ける人のことをいう。支配的な世代は断固としたところがあると思う。
社会のあらゆることを自分に有利なように持っていくのが大人であっても、若者の邪魔をしないで道を譲るものだ。
大人は若者を社会のはみ出し者にはしたりしない。それがわかっていたら、反動が起きていただろう。若者たちは今のようにいい加減に暮らすのではなく、利用されていることに気づいたはずだ。おとなしく従うのをやめて、反乱を起こしただろう。


経済情報予測局の当時の副局長ベルナール・プレエル氏のインタビュー。

団塊世代の退職と、その子供世代の将来について、2005年の予測。

68年世代は、定年を迎える2005年頃になって初めて、辛い経験をし、身をもって学ぶことになるだろう。なぜなら、自分の子供たちが、社会に虐待されていることを知らないでいるからだ。

現在の若者たちは、ぶらぶらと暮らして抜け目なく楽しんでいるが、少なくとも65歳まで、たぶんそれ以上働かなければならないだろう。年金も減少するに違いない。現在の20~30代は、年金受給年齢の廃止といった議論に直面するだろう。

2005年には、第三世界の発展とIT産業の成熟で成長期がやってくる。同時に、労働人口は減少に向かう。このような新しい状況のなか、トップとなるべき労働者が欠乏し、移民への依存か定年の延長かの選択を迫られることになる。現実には、若者たちが冷たい仕打ちを受けることになるだろう。

68年世代の親たちは、自分たちが自由を手に入れたこともあり、子供たちにも寛容だった。 しかし、抑圧されていた不満が2005年から表面化するだろう。

たとえば、自分の年齢を認めたがらない親の無能さや、永遠に年をとらないと信じて若作りするやり方に対する不満が爆発するだろう。68年世代はまた、中年の愛欲にとらわれてもいて、熟年離婚をしたり、お金で若い娘を誘惑したりもする。

2005年になったとき、若者たちは、親が目標を立てることを許さなかったこと、親としての権威が不足していたことに気づき、反発するはずだ。

今の若者たちは、36歳になって初めて、権力を手に入れるのだ。

 

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