フランス左派系新聞の「原発擁護」記事

2011年7月28日にフランスのリベラシオン紙電子版に掲載された、ダヴィッド・スペクトール(パリ経済大学准教授)の記事です。
なお、これに反論するフランスのメディアパルトの記事に関してはこちら
*意訳しています。誤訳があると思います。ご了承ください。

なぜフランス左派は原子力エネルギーを支持しなければならないか?

ドイツ人は生真面目である。車のCMや戦争映画、ドイツ語の複雑からその情報を得ることができる。ドイツの右派は、そのなかでもさらに生真面目だ。なので、ドイツ右派が脱原発を決意したら、原発から脱しなければならない。この議論は弱いだろうか? しかし、脱原発を訴える急進派のすべての人々にとっては最も説得力がある。他のことを調べてみよう。

第1の議論は、安全性だ。福島原発事故は、ヨーロッパでも今後数10年の間で大規模な原発事故が起きる可能性があることを見せつけたといえる。しかし現実には、逆の結論が認められた。福島第一原発は地震には耐えたが、津波には耐えられなかったとの結論である。一度危険が確認されたら、その対処法がわかる。西ヨーロッパでの自然災害は日本ほどすさまじくなく、安全当局はずっと独立しており、原発が大発展した約40年間に唖然とするような大事故は一度も起きていない。なかでも、安全性は改善しつづけており、現在すでに建設されている原子炉は福島第一原発の40年以上前の古いタイプとは全く違う。そこにパラドックスがある。原発反対派は、現在の原発施設の運営を15年間つづけることには賛成だが、それよりずっと安全な第3世代の原発施設の後にくるものに取り替えることには反対である。そこにあるものを理解するのは難しい。

2つ目の議論。原子力は、地球環境を保護するといわれる再生可能エネルギーの発展を妨げる。間違いでしかない。実際、再生可能エネルギーは原子力の代用になることはできない。費用がかかること、そして、貯蓄しておくことができない電力にとって致命的な欠点になる生産の不安定さが特徴だからである。いつかたぶん、こうした限界を克服し、この点での努力を促さなければならない。

しかし今のところ、原子力に代わるのは、二酸化炭素を排出する化石燃料(ガス、石炭、石油)である。気候の専門家(そしてエコロジストも!)によると、温暖化の二酸化炭素排出を防ぐ対策は今すぐしなければならない。なので、原子力と再生可能エネルギーを同時に発展させる必要がある。反原発の適切な議論には、再生可能エネルギー分野で普通では達成できないほどの超スピードでの技術的突破口を仮定しなければならない。しかし、ここで2つ目のパラドックスに突き当たる。再生可能エネルギーの問題では、技術向上に絶大な自信があるのに、原子力の安全の問題になると、これほどまでに不信を抱くのか?

その上、中国やインドといった新興国は、経済急成長にブレーキをかける恐れのある強制を拒否している。原子力エネルギーの発展は、二酸化炭素排出の削減という共有の努力を受け入れるという基本原則の貢献をしている。脱原発は、温暖化に取り組む人々の半分を失うことになる。

3つ目の議論は、フランスの再生可能エネルギー関連産業が後退する恐れだ。原子力と再生可能エネルギーとの対立には根拠がない。アレバがこの2つの分野を担っていることがそれを示している。とにかく、この市場は世界規模である。中国の企業がソーラーパネルを発展途上国に販売すると同時に、再生可能エネルギーで躍進中のフランス企業が負担する一部もフランス国内で選択された混成エネルギーから独立する。そして結局、これが、再生可能エネルギーと原子力のエネルギーを同時に大きく取って代わることができる。

大統領選挙を控え、社会党は扇動的な反原発にしぶしぶ譲歩している。この方向転換は、原子力エネルギーが根本的には左派であるだけにいっそう悲しい。原子力エネルギーは、質が高くて十分な給料の労働者の雇用をたくさん生み出した。プーチン(ロシア)の天然ガスや、事故や病気で毎年大勢の炭鉱労働者が命を落とす石炭のほうが好ましいのか。フランスの原子力産業は、産業政策のなかでも、珍しく成功した最良の例である。原子力エネルギーは、国家戦略家がそれだけが頼りの市場で欠けている長期的ヴィジョンを達成できることをよく示している。

当然の成り行きとして、エコロジーのエネルギーであり、左派の原子力への支持は、緑の党と社会党の連立の絆になるはずだ。

 

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