先日、日本の某新聞に掲載された「保守派が脱原発に転向している」といった特集を、違和感を抱きながら読んだ。
フランスは社会党政権だったときも、原発は推進されたし、来年の大統領選挙を前にした今も、率先して脱原発とは表明していない。
イギリスは、労働党のブレア前首相時代に、原発推進が加速したと聞いている。
なので、日本の記事はちょっと的外れな感じがした。
福島第一原発事故以後、フランスでも脱原発の声が高まっている。
と思っていたら、このところ、再び推進派が勢いを盛り返してきているらしい。
その動きを危惧した
イギリスの左派系高級紙ガーディアンの論説委員が書いた記事(原文、翻訳)には、唖然とさせられた。
イギリス人特有のキツい冗談なのだろうか? 私の読解力に問題があるのなら、そのほうがまだ救われる。
気になった点は多々ある。たとえば…
再生可能エネルギーの支持者(運営事業者)のことを、「小さな幸せを広げるのを唯一の目的にしている自己犠牲的僧侶の集まり」と蔑称してみたり…
原発の安全性の証明として、「同様の地震と同様の津波に襲われたのに、福島第二は無事だった」と持ち出し、「核ミサイルの攻撃を除いて、あらゆる可能性のなかで最も厳しいテストに耐えたのである」と言う。
福島第二が無事だった理由は原子炉の製造年の違いにあり、最近の原子炉は安全だとし、「21世紀の原発施設について議論しているのに、40年前に建設された施設を持ち出すのは、現代の空の旅が安全ではないことを論争するのにヒンデンバーグの炎上を持ち出しすようなものである」と反論する。
そして、放射線の健康被害については、「メルトダウンした福島第一でさえ、医学的損傷は何も引き起こしていない」と東電の報告を鵜呑みし、「現在までのところ、被ばくの影響とみられる明らかな健康被害は誰ひとり認められない。これを、火力発電所での空気汚染による年間10万人の死亡者と比較すれば、間違った危険にやきもきしていることに気づきはじめるだろう」と読者に安心させる。
きわめつけは、核廃棄物処理についての意見。ウランはそもそも地中にあったのだから、核廃棄物を厳重に容器に入れて埋めることに反対するのはおかしい、と言う。
天然ウランと使用済み核燃料の区別もつかない? 私の読み違い? イギリス人の冗談?
これがガーディアン紙のジャーナリストだとしたら、大きな失望。
フランスの左派系一般紙リベラシオンでは、経済学者の寄稿「なぜフランス左派は原子力エネルギーを支持しなければならないか?」(原文、翻訳)が掲載された。