アレバのウラン探鉱企業買収にからむ疑惑

フランスのネットマガジンMediapartが2011年6月22日、フランスの原子力企業アレバのウラン探鉱企業ウラミン買収にからむ疑惑について報じました。

アレバでは、アンヌ・ローヴェルジョン最高責任者の退任発表以来、“沈黙の掟”が突然破れ、グループ内部では、彼女側の社員と社長交代を望む社員たちが互いにけなしあい、社外へ秘密を漏らす人も出てきたそうです。
これまで厳重に隠されていた資料が表面化し、財政問題も浮上しています。そのなかには、カナダのウラン探鉱企業グループだったウラミンの2007年の買収も含まれているそうです。

記事は次のような内容(全訳ではありません)。

6月14日、財政委員会のヒヤリングが行われ、アンヌ・ローヴェルジョンは長時間にわたって資料について問われた。しかし、回答は全く納得のいくものではなく、この資料を明らかにするための議会調査委員会を立ち上げるにいたった。

水曜日の朝、国民議会財政委員会の委員たちは、エネルギー予算専門委員の社会党議員と、国家財政参加専門委員の国民運動連合議員に、フランス電力公社(EDF)とアレバの財政状態に関する特別報告書を作成する任務を依頼した。
「2大企業がお互いに交わした契約内容すべてを問題視しなければならない。法外な価格での買収にまでさかのぼらなければならない。その一環として、ウラミンの買収についてももっと知る必要がある」と委員は説明した。

しかしなぜ、今になって、カナダのウラン企業の買収にそれほど関心が向くのだろうか。当時、25億ドル(18億ユーロ)の買収はほとんど問題にされなかった。アレバは、ウラン供給を確実にするために、戦略的な活動を展開した。

しかし、買収以降、約束通りには開発されていないようだ。ナミビア、南アフリカ、東アフリカのウラミン鉱山では、2008年に開発着手のはずが、何も実際にははじまっていない。

アンヌ・ローヴェルジョンは確信している口調で、財政委員会でこの遅れを正当化した。「ウランの探知から採掘開始には平均15年はかかる。我々の必要に応じた速度で、運営と開発を行っている。開発を急いげば、価格低下を招く危険がある」

アレバの最高責任者は、グループが直面していると思われる技術的および産業的困難ついて述べるのを避けようとしていた。ウラミンから買収した鉱脈は、鉱石の含有量が非常に少ない。採算の合う条件で運営するのはとても難しい。中国の電気事業者、中国広東核電集団(China Guangdong Nuclear Power Corporation)は、ウラミンの株の49%を所有するはずだったが、断念した。その変わり、20年間にわたって生産量の60%を手に入れる契約をした。

買収当時から、アレバは、状況はさほど単純ではないと暗黙の了解で知っていた。年次報告書では、環境に配慮し、経済的な条件で生産する目的で、開発のための新しい技術と方法を研究するよう指定している。アレバは何もしなかったのだろうか? 鉱山の運営は、本来、危険をともなう。探鉱企業グループはどこも、見込みどおりではない鉱脈から利益を得ること、採掘しうるのが難しいとわかること、支持者に説明することが、どんなに不快かを知っている。いまだ開発されたことがなく、鉱石の含有量が少ないとわかっている鉱脈の採掘権だけを手に入れるために、アレバが25億ドル支払ったのを正当化できるだろうか? これが、多くのオブザーバーと、いまでは議員も、執拗に疑問視している点である。

6月14日の質疑に対し、アンヌ・ローヴェルジョンは、「我々は、ウラミン社を25億ドル、つまり18億ユーロで購入した。指摘に反して、プレミアムの総額は全く模範的なものである。ロスチャイルド銀行が操作しているのは確かだ」

2006年終わりから2007年はじめにかけて、ウランは途方もない投機対象となった。原発再建にかかわるあらゆる業者が、非常に有望と予測されるこの分野に狙いを定めたがっていた。投機バブルが見る見るうちに形作られていった。半年も経たずに、ウラン相場は半キログラム25ドルから130ドルへと上昇した。探鉱グループは、大規模な株式公開買付で鉱脈の争奪戦を繰り広げた。ウラン生産企業の株は上昇した。ウラミン株は他のもの以上に過熱した。

2005年に創設されたウラミンは、この分野では小粒でしかなかった。これまで一度も開発されたことのないアフリカの鉱脈をいくつか有しているだけだった。しかし、経営陣は、その存在を示すのに躍起で、2007年2月に、戦略の見直と売却の可能性を示唆した。

ウランを巡る過熱の最中だっただけに、あらゆる方面から関心が集まった。ウラミンの責任者は、欲望に火を注ぐことに絶えず心を配った。

証券取引や探鉱に関するサイトでは、株にまつわる数え切れないほどのウワサが飛び交い、買い手の候補者たちは熱を帯びた。株価は4ヶ月足らずで2.8から6.8カナダドルへと上昇。ウォール・ストリート・ジャーナルが、中国の公益グループ、中国核工業公司(China National Nuclear Corporation)の買収の可能性を報じ、一時7カナダドルを越えた。

6月11日、ウラミン経営陣は、名前は明かさなかったが、有望な買い手との例外的な交渉をしている情報を示唆した。その日のうちに、相場は上昇。ウラミンの資本は19億カナダドルを超えた。2006年終わりに230億カナダドルの損失を公表し、まだ開発されていない鉱脈の採掘権のみしかなかったグループにとっては喜ばしい結果だった。

翌日、アレバがウラミン株の5.5%をすでに購入し、この企業の関心を引いていることを発表した。買収の合意は、その数日後に発表された。アレバは、ウラミンだけでなく、すべてのウラン相場が歴史的な高騰をみせた週に買収した。買収額は総計25億ドルだった。

合意が成立したとき、ウラミン経営陣は、「これは夢のような話である。このような手順はまったく想像していなかった。我々は4億ドルからスタートし、25億ドルで終わった」と語った。3週間後、サブプライムの危機が発生し、ウランはじわじわと値を下げた。

数年後に取引銀行は、理解しがたい買収だと告白。「時間の余裕があったはずなのに、なぜアレバは投機バブルの最中に、株価が上がっている探鉱企業を買い急いだのだろうか。どこに利益があったのか?」

この問題に関するウワサと論争を断ち切るために、アレバの監査審議会は2010年夏、国の合意を得て、投資委員会委員長のルネ・リコルに会計審査を依頼した。決算によると、アレバは、現アレバ・リソース・南アフリカのウラミン株になんと4億2600万ユーロを費やしている。それでいて、契約時の約束は全く守られていない。

 

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