「100%安全」と豪語する原子力企業

原子力企業ウエスチングハウス・インターナショナルのヨーロッパ・中東・アフリカ部門アンダース・ジャクソン社長が、3月17日にイギリスのTVに出演し、自社の原発の安全性について語っています。
番組の会話は、イギリスのガーディアン紙が公表したメールの63ページにあります。
このメールは、イギリス政府と原子力企業との間で交わされたもの。

イギリス政府が原子力企業に安全神話PRの協力を迫る
イギリス政府の経済省とエネルギー省は福島第一原発事故の2日後に、フランス電力公社(EDF)やアレバなど原子力企業に「原発の安全性」をアピールするPR作戦の協力を迫るメールを送っていた。ガーディアン紙がそのメールのやりとりを暴露した。

以下、抄訳です。

最初に、今夜は番組に出演いただき、感謝を述べさせていただきます。イギリスに原発を建設したいと考えている企業はたくさんありますが、インタビューに応える企業は多くありません。フランス電力公社(EDF)、E.On、Centrica、Scottish and Southernはすべて、我々のインタビューの申し出を断りました。ですから、あなたが今夜出演してくださったのはとてもうれしいことです。

世界中の原子炉の半分は、貴社のデザイン、もしくはそれらの一部をデザインされています。日本で何が起こっているか教えてください。原子炉は安全なのか、ご存知ですか?

出演させていただき、ありがとうございます。まず、世界中の原子力企業にとって、安全性は第一の優先課題です。ウエスティングハウスにとっても、そうでしたし、これからもそうです。わが社の原子炉はすべて、建設時に安全であり、今日も安全で、明日もまた安全です。建設した時点から、安全システムは構造保全の向上、新しい機器、新しい安全システムといったように追加されています。ですから、今日の原子力施設に自信を持っています。

ヨーロッパでは、原子炉の「ストレステスト」が実施されますが、これに合格するという自信はありますか?

もちろん、ストレステストの経過を見ていく必要があります。しかし、わが社の施設、競合する他社の施設もまた、安全性は確かです。ヨーロッパには信頼できる優秀な査察官が存在しています。わが社が原子炉を建設するとき、そしてその後も、査察官は原発施設の状況を監視しつづけています。嵐、洪水、地震といった深刻な状態や、ヨーロッパ中のさまざまな地域的条件も考慮されています。ですから、原発は安全であり、安全を維持する自信があります。

貴社は福島第一原発の原子炉にはかかわっていませんが、東芝ウエスチングハウスは、地震の直後に日本の2つの施設―核燃料施設―を停止しました。これらについての最新情報を教えてください。運転を再開しましたか?

運転再開に向けて取り組んでいます。しかし、もちろん、我々はまず、地震によるあらゆる可能性を調査しなければなりません。これらの施設を停止したのは、津波の影響ではなく、大規模な地震が原因です。我々は、運転再開の前にすべてのシステムをチェックしたいと考えています。先ほども申したように、安全が我々の一番の優先だからです。

世界中のほかの原子炉すべての安全をチェックするのでしょうか?

わが社は運営企業ではありませんが、運営企業が支援を望むのであれば、サポートする準備はできています。わが社の製品やサービスを利用しているすべての顧客に対し、あらゆる安全システムのチェックに参加するでしょう。

あなたは自社の技術、それが既存の技術であっても、その安全性に自信をお持ちです。しかし、ドイツは脱原発の動きを速めたいようですし、中国は新規の原発建設を保留しました。人々は、原発の安全をはっきりと確信していません。

非常に早すぎる決断、と私は思います。今、最も重要なことは、じっくり慎重に、日本の原発事故の原因が何かを見定めることにあります。引き金となったのは、震度9の地震と、それに続く10mの津波であり、そうした地震と津波はヨーロッパでは起こりません。

どんなにあなたがリスクを軽くみなしても、原子炉がフェールセーフ(誤操作や誤動作で障害が発生した場合は常に安全側に制御すること)のようなものではないのは明らかです。しかし、貴社が注意を払っていても、人的ミスや自然災害で、事故はいつも起こります。原発の場合、それは大惨事になります。

それがわが社の施設やヨーロッパの施設で起きるということには同意しません。我々は、事故を防ぐために、莫大な量の安全システムと多様性を備えてデザインしています。それはまた、想定外のことが起きたとしても耐えうる安全システムでもあります。我々はいまでさえ、大変自信を持っています。

しかし、それらはフェールセーフではないですよね?

リスクのない人生などありません。車に乗ろうとして歩いているとき、ゴルフをしているとき、ガーデニングをしているときにもリスクはあります。エネルギーを生産するとき、原発はいまのところ他の方法よりも安全です。そして、我々はこれを趣味でやっているのではないことを忘れないでください。電気は、貧困や飢餓を助けるために重要です。
30 億以上の人々が、1日2ドル以下で生活しています。彼らには、電気と水が不足しているのです。

わかりました。世界の人々はエネルギーが必要である点を指摘しているのですね。イギリスでの貴社製の施設は、AP1000を組み入れています。健康安全局が先日認可し、貴社がイギリスで建設したがっている新世代原子炉です。福島原発にAP1000があったら、どうなっていたでしょう?

AP1000は、原発の安全性において目覚ましい発展であり、高度に変化しています。AP1000は一度運転がはじまれば、安全のバックアップシステムは何ひとつ必要ないのです。引力や自然現象などのように、自然の力という受動安全装置が作動し、あらゆる安全が守られます。発動機やポンプなどなくても、機能します。すべての安全を網羅するので、(福島原発の原子炉がAP1000であったなら)何の問題もなく、津波に対処したでしょう。

AP1000は、人間の介入なしに、自動的に安全に停止し、無期限に停止しているのですか? 100%安全でしょうか?

今日の一般的な原子炉は、運転員が停止し、考えるために与えられた時間は30分間だけです。AP1000は、72時間までそれができるようになりました(訳注:72時間停止するので、その間に適切な措置をとることがきる)。ですから、どんな事故の場合でも、AP1000は安全に停止するのです。

しかし、72時間後にどうなりますか?

72時間後も完全に安全な状態である可能性が最も高いです。なぜなら、作業員は、その時間までにすべきことをするだろうからです。しかし、72時間の間は、ひとりも作業員を必要としません。

AP1000は、72時間の間100%安全で、その後も安全であると。少なくとも、あなたが願う限り。貴社が健康安全局に提出したデザインは、そのいくつかがイギリスで建設されるかもしれません。日本で起きた事故を鑑みて、再度デザインを提出する予定はありますか?

私が今知る限りでは、それは全くありません。もちろん、日本の事故から何か特別に学ぶことがあれば、現在運転中の施設や新規建設の施設に対して、考慮に入れるでしょう。しかし、現在私が知る限りで、わが社のAP100の安全は完璧であるという自信を持っています。実際、イギリスで最も安全でしょう。

既存の原子炉に話題を戻したいと思います。世界原子力協会は、世界中の約400の原子炉のうち、90が活発な地震地帯に建てられていると述べています。そのことを憂慮すべきでしょうか?

わが社が原発施設を建設するときは、つねに建設地域の立地条件を考慮します。たとえば、北欧地域では、深刻な凍結の問題や海の凍結で何が起こるかを考えなければなりません。洪水の多い地域であれば、洪水を考慮します。大地震が起きる地域に建設するときは、もちろん、原発施設はそのタイプの事故に耐えうるデザインが必要とされます。ですから、どこに建設しようとも、明確な規定がなければならず、その地方で起きるであろう災害を防護する適確な安全装置を備えなければなりません。ヨーロッパの査察官が確実に任務を遂行し、それゆえに原発が非常に安全であり、私はそれを大変誇りに思っています。

 

【フランス】原発のストレステストでストレス倍増
日本は欧州をならってストレステストを実施するというが、フランスではテストの基準や方法を理解しないまま、実施することになったという。2011年10月発行のフランス雑誌『カナール・アンシュネ』の原子力特集号に掲載された記事からの一部引用。

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