原発のストレステストは、人々にストレスを与えるばかり。
日本は欧州をならってストレステストを実施するといいますが、フランスでも悪評です。
2011年10月に発行された、フランス雑誌『カナール・アンシュネ』の原子力特集号に掲載されたストレステストの記事から、一部引用しました。
EUは13カ国に原子炉143基(62の原発施設)を保有する。福島第一事故の4日後、加盟国の国民を安心させるために、EUエネルギー担当のドイツ人のギュンター・エッテンガー欧州委員が「ストレステスト」の実施を発表した。この有名な耐久性テスト、90年代以降は銀行融資のために実施されるイメージがある。
「地震、洪水、津波、テロ攻撃、電気系統の故障といった、あらゆるリスクを再評価することが重要である」とエッテンガーは言う。しかしながら、各国は、欧州の専門家が見守られながらもこっそり、「テスト」と誤って命名された「再評価」にとりかかるだろう。
そして、関係する国(欧州全体ではなく)の失格した原発施設は閉鎖されるかもしれない。ドイツがすぐに老朽化した7基の原子炉の停止を発表し、欧州のいたるところで環境団体が「欧州レベルで計画を立て、協力して」脱原発を要求する声が高まったとき、その脅威がフランスの原子力当局を恐怖に陥らせた。
ヨーロッパ大陸で反原発の熱が優勢になるのをどう避けるべきか?
フランソワ・フィロン首相は、「耐久性テスト」の基準や方法について理解しないまま、フランス原子力安全局に緊急要請し、洪水および地震によるリスク、電力供給の停止、冷却システム、事故時における管理体制の5項目についてのテストを命じた。
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欧州の原発施設の大がかりな試験は6月1日にはじまり、9月15日に各国の原子力安全局がコピーを提出し、11月中旬に結果が発表される。
「飛行機の墜落やサイバー攻撃といったリスクは排除し、すべてがうまくいっていて、何のリスクもないことを示すための飾り立てられた方法であり、きれいごとのテスト」とフランスの脱原発ネットワークは不満を隠さない。「このテスト実施を監視する欧州の専門家のなかには、独立した立場の専門家がひとりもいない。運営会社がイエスかノーか答えた質問書をまとめるだけだ。(安全性への)不信を矮小化するデマをまきちらすのをやめさせならない」とエネルギー研究団体グローバル・チャンスのベンジャマン・ドゥスュは言う。
いずれにせよ、フランス原子力安全局が言うように、「テストの日程はかなり詰まっているため、監査は本質的には既存の試験結果に基づく」ことになる。ゆえに、原発施設の安全性の真の再評価ではなく、自然災害のテストを実施するわけでもない。
(2012年1月19日)