世界の庭(ヨーロッパ編8):イギリス風景式庭園

自然の風景を基にしながらも、中国風建築を設置したり、遠近法も取り入れりする新しい庭園様式は、イギリスで誕生し、急激にヨーロッパ各国に伝播していく。

フランスでも、ヴェルサイユ宮殿のアモーやシャンティイ城などこのような庭園がたくさん造られた。

世界の庭(ヨーロッパ編7):フランス式庭園の影響
ヴェルサイユ宮殿の完成後、フランス式庭園が大流行となり、イギリスでもその影響を受けた庭園が多数生まれた。イギリス人園芸家は、フランス様式を自国の風土に適応させた。ハンプトンコートおよびケンジントン宮殿の庭園、グリニッジパークなどにそれがみられる。

 

無邪気に遊ぶマリーアントワネット。

子供の頃に熱中したコミックで、その庭園の名はすでに知っていた。

ワラぶき屋根の田舎家を集めた庭園アモーだ。

ヴェルサイユ宮殿内に造られたこの庭園は、フランス様式とはかなり違い、中国の山水を盛り込んだ、まるで手を加えていないような自然らしさを装っている。

また、王妃が恋人フェルゼンとひとときを過ごしたという愛の神殿は、古代ギリシャ・ローマ風のさっぱりしたデザインだ。

このような軽妙洒脱で自由奔放な庭園は、大規模で格式ばったスタイルへの反動として生まれた。

この頃になると、人間の本性を問う自然法思想が流行し、大げさな庭園を風刺する知識人も現れた。

そして、完璧なレイアウトに代わり、親しみやすい、崩した様式が注目されるようになる。

初期の風景式庭園は、のどかな田園風景を模写することから始まった。

イタリア旅行を慣行したイギリス貴族は、そこで目にした荒々しい景色に刺激される。

彼らはクララウドらの風景画を買いあさり、それを自分の敷地に再現しようと試みた。

また、輸入品の中国陶器に描かれている景色からも、大きな影響を受けたと考えられている。

やがて、自然の風景を基にしながらも、中国風建築を設置したり、遠近法も取り入れられるようになった。

この新しい庭園様式は、イギリスで誕生し、急激にヨーロッパ各国に伝播していく。

フランスでも、このような庭園がたくさん造られた。

ルイ・ジョゼフは、1774年、シャンティイ城の敷地内に、イギリスおよび中国風の庭園デザインさせた。

田舎風の5つの家が集めた庭園アモーは、ヴェルサイユ宮殿のプティトリアノンのものとそっくり。

このような庭園がいかに流行していたかがうかがえる。

また、サンクルー公園にも1824年にイギリス式庭園が造られた。

イギリス式風景庭園の大きな特徴は、移動する視線を意識して造られているという点にある。

これまでの様式は、あるポイント地点で静止し、じっくり鑑賞するようデザインされていたが、風景式は、映画のように次から次へと変わるシーンを楽しむことができる。

同じ庭園内にも、場所ごとにさまざまな違うデザインがされている。

ナポレオンは、フォンテーヌブローに「絵画のような庭園」を造るよう命じた。

人工の川、曲がりくねった道、小さい森などを設けた典型的なイギリス庭園は、移り変わる情景を鑑賞できるよう工夫されている。

イギリス風景式庭園が生まれたのは、周囲に広がるすべての風景も庭の一部として取り入れようという発想の転換にあったからだ。

敷地以外は野蛮な世界とする中世の考えは否定され、自然を協力者とみなす考えに変わった。

こうして、自然に対する思想が大きく変わることになる。

(2013-10-24 08:38:42)

世界の庭(ヨーロッパ編9):イギリス王立キューガーデン
国立キューガーデンは、1840年に本格的に一般公開された。オープン当時、年間300万人が訪れたそうだ。約3.5ヘクタールの植物園は、世界最大の植物コレクションを誇り、「鑑賞」「教育」「科学研究」という3つの目的は創立当初から変わっていない。

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イスラム庭園7:アルバイシン(グラナダ)
アルハンブラ宮殿の北に広がるアルバイシン。窓辺いっぱいに飾られた鉢植え。白い壁にはブルーに彩色されたタイルや絵皿。アルバイシンに並ぶ家は、どれもデコレーションに工夫が凝らしてあり、垣根ごしに見える藤の花や梅花うつぎなど、見て歩くのが楽しい。
英国ガーデンデザイナーのデビッド・スティーブンス氏
BBCのテレビ番組にも出演するガーデンデザイナーに、ガーデンデザインという仕事の魅力をうかがった。コピーではない自分の庭造り、新しさを追求して模様替えする庭をモットーとし、「現代の生活にマッチした日本庭園を追求するがおもしろい」と言う。
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