世界の庭(ヨーロッパ編7):フランス式庭園の影響

ヴェルサイユ宮殿の完成後、フランス式庭園が大流行となり、イギリスでもその影響を受けた庭園が多数生まれた。

イギリス人園芸家は、フランス様式を自国の風土に適応させた。ハンプトンコートおよびケンジントン宮殿の庭園、グリニッジパークなどにそれがみられる。

世界の庭(ヨーロッパ編6):フランス式庭園
イタリアより約一世紀遅れてルネサンスが始まったフランスでは、イタリア式庭園の模倣時代がしばらく続い造園家アンドレ・ル・ノートルにより、フランス式庭園が確立していく。ヴェルサイユ宮殿、シャンティイ城、パレロワイヤルなど代表的なフランス庭園が誕生。

 

ヴェルサイユ宮殿の完成後、フランスだけでなく、ヨーロッパ各国で平面幾何学庭園が大流行となる。

フランスの園芸家は、ヨーロッパ人のあこがれの存在で、あらゆる君主が、自分のヴェルサイユ宮殿を築くことを夢見た。

イギリスでも、ル・ノートルの影響力は大きく、たくさんのフランス人園芸家がイギリスに招かれ、イギリス人園芸家がフランスを訪れた。

グリニッジパークのパルテールは、ル・ノートルがデザインしたといわれる。

17世紀、最も古い狩猟場だった場所に宮殿を建てる際、最新モードのフランス式庭園を取り入れようと、ル・ノートルにデザインを依頼した。

公園南側には、ガーデネスク様式の丸型花壇など、19世紀の特徴が表れている。

カフェテラス、テニスコートなどもあり、いつも人でにぎわっている公園だ。

15世紀から生息している鹿は、南東角の森林地帯で保護されている。

グリニッジパークの中心には、チャールズ2世が設立した王立天文台がある。

航海時の経度を知るための研究所で、1884年、グリニッジの子午線を経度0度とする国際規定が決まった。

現在は博物館になっている。

イギリス人園芸家は、フランス様式を自国の風土に適応させていった。イギリスでは、フランスのものより規模は縮小されていく。

イギリス園芸家ワイズは、ハンプトンコート、ケンジントン、セントジェイムズ、ウィンザーなどの宮殿の庭園を設計した。

今でもイギリス王室に使用されているハンプトンコートパレスは、1514年、重臣ウオルズイ卿が造った「イギリスで最も豪華な館」。

ヘンリー8世をはじめ歴代の王が改築を重ねたため、さまざまな様式が混ざっている。

最初に庭園を造ったのはヘンリー8世で、ラベンダー、オールド・ローズなどが植えられたポンドガーデンやノットガーデンには、その名残を見ることができる。

17世紀初め、チャールズ2世は、放射状に広がる西洋ボダイジュの並木とカナルを造り、ウイリアム王とメアリ王女が、イチイの並木と大噴水庭園を加えた。

キノコのように剪定されたイチイは壮観。この庭園の潅木の迷路は有名だ。

また、バラ園や、1995年に復元されたプライビィ・ガーデンなどもある。

故ダイアナ妃の住居だったケンジントンパレスは、17世紀末の建築で、庭園もそのとき一緒に完成した。

隣りのハイドパークに比べ、ケンジントンガーデンは静寂に包まれている。

ピーターパンの彫像があり、かわいらしい雰囲気だ。

この庭園は、18世紀半ばに一般公開されたが、その当時は制限が厳しく、フォーマル衣装の人のみ入場が許可されたという。

ヴィクトリア女王の即位後、誰でも入ることができるようになった。

また、イギリス唯一の温泉地バースには、17世紀の風景が残っている。

紀元前にローマ人が、46℃の温水が毎日25万ガロン涌き出るバースを発見し、その後湯治場となった。

17世紀にチャールズ2世が訪れてからは、王族の行楽地として、貴族好みの町に改造されていった。

そのとき建てられたロイヤル・クレッセントは、同じ造りの家を半円形に並べたエレガントな住宅地。

前の広場には、日向ぼっこをする市民が集まる。

社交界の中心地ポンプス・ルームから地下に入ると、ローマ浴場跡を見ることができる。

ジョージア朝の町並みが美しいバースは、自然にも恵まれている。

エイヴォン川とそれにかかる橋が絶景だ。

17世紀末になると、フランス式庭園だけではなく、オランダ式庭園も注目された。

運河と平地を利用したオランダ庭園は、大きさより細部に凝るのが特徴で、彫像をふんだんに使い、移動可能な鉢植えを多用した。

さらに、潅木の刈り込み技術が流行し、円錐やピラミッドから、鳥、人、動物といった複雑なものまで作られた。

また、当時のオランダは、東&西インド、南米などから植物を輸入し、それらをヨーロッパの各国に輸出する植物交易が盛んだった。

チューリップのブームも、この頃始まる。

人とモノの交流が盛んになったことで、庭園文化は新たな局面を迎えることになる。

(2013-10-20 10:46:17)

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