イタリア式庭園は、15世紀、フィレンツェで生まれた。特徴は、イタリア露壇(テラス)式を斜面に沿って幾段かに重ねた立体的な構造にある。
ピッティ宮殿の裏側に広がるボーボリ庭園は、イタリアはもとより、ヨーロッパ庭園のお手本となったイタリア式庭園だ。
現実か幻想か? ボーボリ公園を歩いていると、不思議な感覚にとらわれてしまう。
池や坂道、洞窟など奇想天外。次に何が現れるか、ワクワクする。
バッカス門から入ると、カメにまたがった小男の彫刻が迎えてくれる。
ひょうきんな仕草は、ここで待ちうけている驚喜を暗示しているのだろうか。
しばらく行くと、巨大なグロット(人工洞窟)があり、ローマ神話の登場人物がずらりと並んでいる。
一つ目のグロットには、アポロとセレス、二つ目には、デウカリオーンとピュラー。
そして最後の洞穴には、華麗な噴水の中に立つヴィーナス。
もうすでに、魔法にかけられた気分だ。
ネプチューンの彫刻を飾った池から、階段を上っていく。
フィレンツェの街を一望したら、今度は糸杉と大理石の彫像が並ぶ直線道を下る。
背の高い木々が直射日光を遮り、心地よく散歩ができる。
秘密の庭や迷路を探索するために、わき道へ入ってみるのも面白い。
メインの道をかなり降りたところに、カラフルな小石で描いた大きな星印が見えてくる。
さらに道は、グラジオラスが咲く池へと続く。
鉄門の両脇には、カプリコーンの石柱と海獣の噴水。
芳しいレモンの木が植えてある島には、巨大な石の鉢が並ぶ“海の噴水”があり、中央には、高さ3メートルのオーケアノスがそびえている。
水中の岩につながれているのは、アンドロメデーとペルセウス。
白昼夢は、まだまだ続きそうだ。
ルネサンスは、まずイタリアで始まり、ヨーロッパ各地へ波及していった。
中世の抑圧的な重苦しさから解放されるときが、やっときた。
人々は、人間らしいのびのびした表現を求め、さまざまな芸術家が活躍しはじめた。
それは美術や文学だけにとどまらなかった。
庭園文化もまた、ルネサンスの影響を受け、新しい様式が花開く。
庭園は、ただの飾りではなく、人間の欲望を表すもの。
神話やおとぎ話をヒントにした噴水、彫刻、小さな洞穴は、人間の感情を代弁しているのだ。
イタリア式庭園は、15世紀、フィレンツェで生まれた。
この様式の特徴は、イタリア露壇(テラス)式を斜面に沿って幾段かに重ねた立体的な構造にある。
建物正面から主軸を延ばし、それに交わる園路を敷き、軸線のまわりに露壇を並べる。
交差点や終点には彫像、グロット、飾り鉢、噴泉、カスケード(階段状の滝)、カナル(運河)などを設けた。
ピッティ宮殿の裏側に広がるボーボリ庭園は、イタリアはもとより、ヨーロッパ庭園のお手本となったイタリア式庭園だ。
これがやがて、フランス式庭園を生み、イギリス風景式庭園とともに、ヨーロッパの代表的な庭園様式となる。
(2013-10-03 08:07:22)