世界の庭(ヨーロッパ編5):イタリア式庭園

イタリア式庭園は、15世紀、フィレンツェで生まれた。特徴は、イタリア露壇(テラス)式を斜面に沿って幾段かに重ねた立体的な構造にある。

ピッティ宮殿の裏側に広がるボーボリ庭園は、イタリアはもとより、ヨーロッパ庭園のお手本となったイタリア式庭園だ。

世界の庭(ヨーロッパ編4):ノットガーデン
シェイクスピアが晩年暮らしていた、ストラットフォード・アポン・エイボンのニュー・プレイスの庭はノットガーデンという。中世後期から庭園は明るく陽気な雰囲気をまし、長方形の花壇を組み合わせたのが典型的様式のノットガーデンが造られはじめた。

 

現実か幻想か? ボーボリ公園を歩いていると、不思議な感覚にとらわれてしまう。

池や坂道、洞窟など奇想天外。次に何が現れるか、ワクワクする。

バッカス門から入ると、カメにまたがった小男の彫刻が迎えてくれる。

ひょうきんな仕草は、ここで待ちうけている驚喜を暗示しているのだろうか。

しばらく行くと、巨大なグロット(人工洞窟)があり、ローマ神話の登場人物がずらりと並んでいる。

一つ目のグロットには、アポロとセレス、二つ目には、デウカリオーンとピュラー。

そして最後の洞穴には、華麗な噴水の中に立つヴィーナス。

もうすでに、魔法にかけられた気分だ。

ネプチューンの彫刻を飾った池から、階段を上っていく。

フィレンツェの街を一望したら、今度は糸杉と大理石の彫像が並ぶ直線道を下る。

背の高い木々が直射日光を遮り、心地よく散歩ができる。

秘密の庭や迷路を探索するために、わき道へ入ってみるのも面白い。

メインの道をかなり降りたところに、カラフルな小石で描いた大きな星印が見えてくる。

さらに道は、グラジオラスが咲く池へと続く。

鉄門の両脇には、カプリコーンの石柱と海獣の噴水。

芳しいレモンの木が植えてある島には、巨大な石の鉢が並ぶ“海の噴水”があり、中央には、高さ3メートルのオーケアノスがそびえている。

水中の岩につながれているのは、アンドロメデーとペルセウス。

白昼夢は、まだまだ続きそうだ。

ルネサンスは、まずイタリアで始まり、ヨーロッパ各地へ波及していった。

中世の抑圧的な重苦しさから解放されるときが、やっときた。

人々は、人間らしいのびのびした表現を求め、さまざまな芸術家が活躍しはじめた。

それは美術や文学だけにとどまらなかった。

庭園文化もまた、ルネサンスの影響を受け、新しい様式が花開く。

庭園は、ただの飾りではなく、人間の欲望を表すもの。

神話やおとぎ話をヒントにした噴水、彫刻、小さな洞穴は、人間の感情を代弁しているのだ。

イタリア式庭園は、15世紀、フィレンツェで生まれた。

この様式の特徴は、イタリア露壇(テラス)式を斜面に沿って幾段かに重ねた立体的な構造にある。

建物正面から主軸を延ばし、それに交わる園路を敷き、軸線のまわりに露壇を並べる。

交差点や終点には彫像、グロット、飾り鉢、噴泉、カスケード(階段状の滝)、カナル(運河)などを設けた。

ピッティ宮殿の裏側に広がるボーボリ庭園は、イタリアはもとより、ヨーロッパ庭園のお手本となったイタリア式庭園だ。

これがやがて、フランス式庭園を生み、イギリス風景式庭園とともに、ヨーロッパの代表的な庭園様式となる。

(2013-10-03 08:07:22)

世界の庭(ヨーロッパ編6):フランス式庭園
イタリアより約一世紀遅れてルネサンスが始まったフランスでは、イタリア式庭園の模倣時代がしばらく続い造園家アンドレ・ル・ノートルにより、フランス式庭園が確立していく。ヴェルサイユ宮殿、シャンティイ城、パレロワイヤルなど代表的なフランス庭園が誕生。

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イスラム庭園5:シェラ(モロッコ・ラバト)
深緑の中に浮かぶ古色を帯びた大理石とタイルの塔。アブー・ハッサン王が建てたミナレットは、モロッコの美しい建造物のひとつ。階段を降り、小道に沿って、静かな谷を下っていくと、道の両脇には、バラ、いちじく、オリーブ、バナナの木が密生しています。
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