札幌の自主夜間中学が公立化か(2017年)

『週刊金曜日』2017年2月24日号に掲載された記事です。

2月15日、札幌市の秋元克広市長が、市立向陵中学で週1回行われている自主夜間中学「札幌遠友塾」(遠藤知恵子代表)を訪れ、4クラスの授業を約20分見学した。

この視察の前週6日に、札幌市議会文教委員会で、「公立夜間中学の早期開設を求める陳情」が全会一致で採択されたばかり。昨年12月には、各都道府県に最低1校の公立夜間中学の設置を盛り込んだ法案が成立している。

義務教育の未修了者らが学ぶ公立夜間学校は8都府県に31校あるが、北海道には存在しない。
秋元市長は受講生約50人の前であいさつし、「地方自治体として、具体的に検討していく時期になってきている。多くの方に学習の場を提供できれば」と強調した。

ただ、「国の動きと合わせて」とも述べ、学習指導要領など国の指針が出るのを待つ姿勢だ。

14日に文科省が公表した小中学校の学習指導要領改定案では、中学の総則に「夜間中学などに通う学齢を経過した者への配慮」が加わり、「年齢、経験などの実情を踏まえ」「指導方法や指導体制の工夫改善に努める」と記されている。

夜間中学に通う生徒の層は、地域により異なる。北海道は戦後の引揚者や移住者のなかに未就学者が多く、高齢者の割合が高い。

「実際に見ていただいたのは大きい。市長からいろいろ質問が出た。”国の枠組み”の発想を変えないと。学習指導要領に合わせた授業は絶対むり」と遠藤代表は言う。

「北海道に夜間中学をつくる会」(工藤慶一代表)は9年前の陳情廃案を機に札幌や北海道の各会派の議員に働きかけ、国への「法案整備を求める意見書」提出や「未就学者の実態把握のための国勢調査の『教育』項目の改善」要請など、全国に先駆けて進めてきた。

工藤代表は、「まず協議会で議論を重ね、中身を詰めていく。北海道から流れを作っていきたい」と夜間中学の公立化に意欲を示した。

 

約126万人が義務教育未終了で夜間中学の必要性訴える
東京都内で全国夜間中学校研究大会が開催された。夜間中学は、戦後の混乱期、昼間通学できない子どもたちのために1947年ごろから各地に誕生した。公立夜間中学は8都府県に31校あるのみで、他の自治体は、有志が自主夜間中学を運営している。
通信制中学のドキュメンタリー映画『まなぶ』の監督
5年間、東京都の神田一橋中学校通信教育課程で学ぶ高齢者の姿を追った太田直子さん。映画『まなぶ 通信制中学60年の空白を越えて』は、義務教育を受けられなかった背景には、戦争や貧困がある。「学ぶことで人は変われる」と、学ぶ場の大切さを問う作品。
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