約126万人が義務教育未終了で夜間中学の必要性訴える

『週刊金曜日』2016年12月16日に掲載された記事です。

12月1日・2日、東京都内で第62回全国夜間中学校研究大会が開催され、教師、生徒、関係者ら約200人が全国から参加した。

夜間中学は、義務教育を修了できなかった人たちが通う学び場。戦後の混乱期、昼間通学できない子どもたちのために、1947年ごろから各地に誕生した。

日本の義務教育未修了者数は、85年の国会答弁で約70万人と表明されたが、その後政府は実態調査を行っておらず、正確な数は把握できていない。全国夜間中学校研究会の2003年の調査では、約126万人と推計されている。

一方、公立夜間中学は、千葉、東京、神奈川、京都、奈良、大阪、兵庫、広島の8都府県に31校あるのみで、生徒数は1849人(15年5月現在)にとどまる。

それ以外の自治体は、有志が自主夜間中学を運営している。

札幌では、26年前に自主夜間中学「札幌遠友塾」が開校した。場所の確保などで苦労を重ねながらも、今年3月までに384人が卒業。現在、旭川と函館にも「遠友塾」が存在する。北海道は、樺太や満洲からの引揚者、農漁村や炭鉱地への移住者のなかに、教育の機会を失ったケースがみられるという。10年国勢調査によると、15歳以上の未就学者数は大阪府に次いで2番目に多い7374人、未就学率は全国で10番目だ。

7日に成立した教育機会確保法には全都道府県に最低1校の公立夜間中学設置が盛り込また。公立夜間中学の開設を求めてきた「北海道に夜間中学をつくる会」の工藤慶一代表は、「『お願い』ではなく、対等な立場で行政と交渉できるようになった」と言う。

在籍者は変遷し、中国からの引揚者、不登校生、90年代以降は新渡日外国人が増加している。

前述の研究大会では、3人の現役生が、敗戦後の貧困、居所不明、いじめといった自らの体験を発表。学校で学ぶ喜びを語り、夜間中学の必要性を訴えた。

 

札幌の自主夜間中学が公立化か(2017年)
義務教育の未修了者らが学ぶ公立夜間学校は8都府県に31校あるが、北海道には存在しない。秋元市長は受講生約50人の前であいさつし、「地方自治体として、具体的に検討していく時期になってきている。多くの方に学習の場を提供できれば」と強調した。
通信制中学のドキュメンタリー映画『まなぶ』の監督
5年間、東京都の神田一橋中学校通信教育課程で学ぶ高齢者の姿を追った太田直子さん。映画『まなぶ 通信制中学60年の空白を越えて』は、義務教育を受けられなかった背景には、戦争や貧困がある。「学ぶことで人は変われる」と、学ぶ場の大切さを問う作品。
タイトルとURLをコピーしました