『週刊金曜日』 「金曜アンテナ」2011年6月10日号に掲載された記事です。
フランスの放射能監視団体CRIIRADのシャレイロン研究室長は六月一日、都内の日本記者クラブで記者会見し、五月二四日から三〇日まで主に福島県で実施した放射線量測定結果や日本の問題点などについて報告した。
一九八六年設立の同団体は、科学者や市民をメンバーとする非営利組織。独自に放射線量を測定し、正しい情報の公開に努めるとともに、国家機関や企業へ働きかけ、人々の健康と環境を防護する活動を続けている。今回の汚染調査は、市民による放射線測定ネットワーク構築を目指す「測定器四七台プロジェクト」(代表・岩田歩)と共同で行われた。
福島第一原発事故発生以降、CRIIRADは入手しうるデータを基に、内部被曝や食物汚染の危険性、子どもへの深刻な影響などを警告。数度にわたりホームページ上で声明を発表してきた。現地を訪れ、住民の聞き取りを行ったシャレイロン氏は、「人々は十分な情報を得ておらず、ヨウ素剤も投与されていない。政府が食物検査を始めたのも遅かった。すでに大量の放射線に晒されてしまっている。こうした被曝のリスクは、事故直後の適確な対策で防げたはずだ」と日本の放射線監視および防護体制の不備を批判した。
そして「防護を徹底するには正確な放射線排出量を知らなければならない」と強調し、福島第一原発の状態がいまだ闇に包まれ、放射線量の厳密な数値が明らかにされていない状況に危惧を示した。
また、CRIIRAD創設の経緯について、「チェルノブイリ事故の際にフランス当局が誤った情報を流したのがきっかけ。今回も、フランスの国家機関の情報には誤りがある。国際機関も真実を伝えているとはいえない。健康を守るべきWHO(世界保健機関)と原発推進のIAEA(国際原子力機関)の癒着を断ち切る必要がある」と指摘し、市民による独立観測機関の存在意義を訴えた。