「福島の農作物を食べないで!」福島で話したこと(2)

2011年6月、福島で4人の女性(母親)からお話していただきました。

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2011年6月、福島で4人の女性(母親)からお話していただきました。 そのなかで出てきたのが、行政や学校にかけあう際にぶつかる壁。 これは、福島の原発事故に限ったことではなく、これまで打破できなかったがために、今回、子どもを...

放射能は目に見えないが、空気や水、土を汚染する。

福島の食材をけなすわけではない。しかし、「安全」と言って福島の農産物を売り込むのは、食品偽造の手法に似てないだろうか。

汚染の事実が判明したとき、“風評被害”以上の被害をこうむるに違いない。

福島のお母さんたちは、当然、食品についても心配していた。

2011年5月に開催された福島の母親の講演会で、妙に心に残った一文があった。

『息子が年下の女性と結婚するとしたら、今、学校給食を食べている世代かなぁ』と想像したとたん、給食に汚染された食品が使われるのではないかと心配になった。

これを聞いて、「息子の嫁の心配ね~」とちょっと思ったけど、なんだかとてもリアル感があり、ふと、彼女が孫である赤ちゃんを抱いている姿が目に浮かんだ。

「汚染された食品は危険」という言葉では得られない、感触やヴィジュアルで“いのち”に近づいたというか。
命をつなぐ、というのは日常的な営みにあるのだなぁ、と。

1ヶ月後、その発言をした女性に会ったとき、地元新聞のコラムを見せながら、こう言った。

男の人も父性愛があるし、子孫繁栄を考えている人もいるんだろうけど、子どもがいるいないにかかわらず、女性の性って、『種を守る』ことにあると思うんですよ。

これを受けて4人の福島の女性たちはこう語る。

Aさん:一番何が悲しいって、福島が命を継承していく場所じゃなくなったんだな、というのが、それがすごく悲しいです。

Bさん:うちの娘は高校1年生ですけど、「私も避難したほうがいいのかな」と言うから、「これから子どもを産む人は避難したほうがいいって言われているね」と答えたら、「私、産まなくてもいいや」と。

Aさん:高校生の女の子は、そう言いますよ。「子ども産まない」って。

Bさん:高校生の女の子にそういうこと言わせるこの社会って、なんでしょう? そんなこと言わせてるんだ、私たち…。

Aさん:私もそれは感じます。これは大人の責任だ、と。福島で20マイクロシーベルト超えてたときに、情報が流れなかったから、雨の中で子どもを被ばくさせてしまった、と友だちが悩んでて。どれだけ子どもの体に影響があるのか、自分でインターネットで調べたら、「子どもを産むのにはダメだ」とわかって。「私、結婚しないから」と娘はお母さんに言ったそうです。それを聞いたら、涙が出てきてしまって。

「命を継いでいく場じゃなくなったんだな」としみじみと述べる彼女たち。

Aさん:食べるものは、本当に今、困ってます。買うものがだんだんなくなってきて。

Bさん:春頃は九州産とかが多かったのですが、最近、見かけなくなりましたね。お店に聞いたら、「暖かくなったので、九州産は入れなくなった」と言われました。千葉産とか茨城産とかしかなくて、どうしようかと。最近は、肉ばかり食べてます。

Aさん:肉はよくないらしいですよ。放射能で壊れた細胞をメンテナンスするのに、肉はあまりよくないって、聞いたことがありますよ。

Cさん:宮城産はやっぱりダメですかね?

Aさん:宮城は今、線量が高くなっているんですよね。

Cさん:宮城産のキュウリ。「宮城は大丈夫ですよ」と言われたんですけど、やめたほうがいいかな。

Aさん:子どもは食べないほうがいいですね。私は、高知産のナス、青森産のダイコン。緑のものは、山形産のニラ。後は長野の実家から送ってもらいます。

Bさん:北海道に避難した友人に送るよう頼んで、週1回、送ってもらいます。そういうつながりができれば。

Dさん:今まで3回とか調べていたけど、それを1回にして、検査する種類を多くするんですって。それ、怖くないですか? 1回で何もなければ、解除しちゃうんですよ。
Aさん:余計怖いですよね。余計買いたくなくなりますよね。

Dさん:種類が増えたら、3回は大変なのはわかりますけど、それだけのことをしちゃったんだから、大変とかなんとかじゃなくて、お金をそこにつぎ込んでよ、と言いたいです。

Bさん:検査する機械は、高いものなんですか?

Dさん:高いらしいですけどね。

ー原発造るよりずっと安いですよね。

みんな:そうそう。

Cさん:生協で、三陸産のワカメとか買ったんですけど。

Dさん:大間マグロがおいしいっていわれているのに、今造ろうとしているのは、大間でしょ。だから、マグロはもうだめになっちゃう。

Cさん:福島はこれだけ汚染されてしまったけど、今、除染を一生懸命がんばります。だから、何年か後にはきれいになります。というのが本当ですよね。

みんな:そうそう。

Cさん:ちゃんと事実を伝えれば、みんな助けてくれるのに。それが本当のことだと思うんです。農家の人たちはかわいそうですよね。あの人たちが悪いのではないし。売らされていて、最終的に、「やっぱりダメだったんじゃない!」となったときに、本当に買ってもらえなくなっちゃうから。

Dさん:汚染水が海に流れたら、お魚が食べられなくなるんですよ。お魚が食べられなくなると思ったらゾッとしますから。すでに汚染はされているんだけど、今の数値だったら、まだきれいにする方法もあるのですから。でも、あれを見ちゃったら、悪くなる一方じゃないですか。魚はどこにいくかわからないじゃないですか。福島に残る人はここで、避難した人は避難した場所で、声を上げて、原発を反対しないと。

(2013年9月23日)

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