『週刊金曜日』2017年3月3日号に掲載された記事です。
「南スーダンの情勢を知れば知るほど、怒りがこみ上げてきます……。私の息子に限らず、自衛官が1人でも危険に晒されることが耐えがたい苦痛なのです。誰の子どもも、殺し殺されてはなりません」
2月21日、札幌地裁で行われた自衛隊の南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣差し止めなどを求める訴訟の第1回口頭弁論は、原告の平和子さんの意見陳述から始まった。同裁判は、自衛官の息子を持ち、自衛隊基地の街・北海道千歳市に住む女性が、自衛隊PKO派遣の違憲性を問う、全国で初めてのケースとなる。
原告側は、「派遣による平和生存権の侵害」で損害賠償を請求する一方、国は派遣差し止めの却下、損害賠償支払いの棄却を求めた。
防衛省が公開した日報やモーニングレポートを巡って、原告側は黒塗りの部分の開示を要求。「紛争当事者間の停戦合意」などPKO参加5原則の破たんの事実が隠されている可能性があると主張した。
閉廷後の会見で弁護団は、「南スーダンが武力紛争中か否かが第一の争点」と強調。今後、国連など国際機関の公式判断を基準に、〝内戦状態〟を証明していくと力説した。
昨年7月のジュバの状況に関しては、米英仏の主要メディアや中東のアル・ジャジーラなどが、「衝突=clash」や「戦闘=fighting」を同じ意味で交えて用い、現地の惨状を伝えている。稲田明美防衛大臣が2つの言葉を使い分けてどう答弁しようと、ジュバに限らず南スーダンは〝危機的状態〟に陥っているというのが国際的な認識だ。
弁護団長の佐藤博文弁護士は、「戦場に自衛隊を派遣し、自衛隊が戦死者を出す事態に直面している現実を立証していく。本訴訟を通し、日本が抱く国連PKOの〝善意の誤解〟を解き、その全容を明らかにして、憲法9条との関係性も問いただしたい」と述べた。