北海道警裏金訴訟メディアへの権力介入認める

『週刊金曜日』「金曜アンテナ」2009年4月24日号に掲載された記事です。

北海道警裏金訴訟不当判決 メディアへの権力介入認める

北海道警裏金問題を扱った二冊の書籍をめぐる訴訟の判決がでた4月10日、札幌市で「道警裏金訴訟を考える会」が開催された。

この裁判は、事実とは異なる記述により名誉を傷つけられたとして、元道警総務部長の佐々木友善氏が、『北海道新聞』(道新)と同社の記者二名、出版元の旬報社と講談社に、計600万円の慰謝料と本の回収などを求めたもの。

被告側の主張する「記述の真実性」は認められず、計72万円の支払いが命じられた。

集会には、清水勉弁護士、市川守弘弁護士、道新記者の高田昌幸氏と佐藤一氏、旬報社社長の木内洋育氏、補助参加しているジャーナリストの大谷昭宏氏と作家の宮崎学氏、元道警本部の原田宏二氏が出席。

大谷氏は、「不当というより”誤判”。我々の側から間違いを正さなければならない」と発言。

「約20人の道警関係者に事実確認を行ったにもかかわらず、捏造だと言われたら、今後どのように取材をしたりいのか」と佐藤氏は、調査取材への厳しい制限を懸念した。

市川弁護士は、「権力と立ち向かうべきジャーナリズムに及ぼす影響は大きい」と強調。

また、木内氏は、「内容が事実であるかを出版社や編集者がチェックするなど不可能」と、出版社への制約にとまどいをみせた。

この判決は、メディア規制の強化以外なにものでもない。提訴の目的は、いったいどこにあったのか?

清水弁護士によると、「名誉棄損ではなく、道新をとことん追いつめ、潰すことにある」という。
権力に挑むメディアは許さない。つまり、裏金問題取材班の記者のようにはなるな、との警告なのである。

宮崎氏は、補助参加の理由として、「他のメディアは絶対応援しないだろうと思った」と述べた。

その言葉通り、この裁判に関しての報道は、道新はもとより、地元マスコミで取り上げられる機会は少なかった。道新の二の舞は踏みたくない、との意図が透けて見える。

報道されないがために、一般市民の関心もきわめて薄かった。裏金問題キャンペーンは評価しても、関連した係争が今でも続いていることを知る人は多くない。

さらに、裏金報道は、「道警と道新の”正常な関係”」を壊し、道新社内の亀裂も引き起こしたようだ。

裁判では、佐々木氏と道新幹部が、提訴にいたるまでの数か月間、「裏交渉」を行っていた事実が、原告側の提出した証拠から発覚した。記者たちも寝耳に水だったという。
隠し録音された面談の記録は350ページにもおよび、報道機関としての倫理に違反すると思われる内容も含まれている。

そもそも権力とメディアとの”正常な関係”とは何を意味するのか?

「裏金取材は、道警担当記者が書いた。記者クラブにいるのは、仲良し関係を築くためではない」と高田氏。

被告のほとんどが、控訴する意向だ。判決が投げかけた、「メディアの問題」に、今度こそ一丸となって毅然と立ち向かうべきだろう。

 

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