『日刊ベリタ』 2008年06月29日に掲載された記事です。
香港の市民メディア記者も成田で拘束
北海道洞爺湖でのG8サミット開催を来月7日に控え、取材などで来日する外国人が空港で足止めされるという事態があいついでいる。G8メディアネットワーク(以下G8MN)によると、6月26日、香港の市民ジャーナリスト3人が一晩成田空港で拘束された後、「入国不適合」として強制退去寸前となった。3人は翌日入国を許可されたが、拘束された理由は明らかではない。28日には、グローバリズム批判でしられるフランスの著名は女性活動家スーザン・ジョージさんが同空港で拘束された。香港のメディアは3人の拘束を社会面トップで報じ、在日英国人ジャーナリストは「信じられない表現の自由の抑圧」と批判している。
▽「日本の暗部を見た」
3人は香港の市民メディアの男性記者で、大学の講師や農業で生計を立てながら、市民記者として執筆やビデオ撮影などの活動をしている。すでに市民メディアセンター(札幌)に登録済みで、取材のため来日した。
入国手続きの際、一人がパスポートを提示したとたん、入管審査員が電話をかけ、別の係員に別室に連れて行かれた。残りの2人も同様に拘束され、翌朝まで、聞き取りと待機の状態がつづいたという。
3人は入国後の予定を話さないなどの理由で、強制退去の可能性が高まり、G8MNのメンバーが深夜1時半頃まで担当官と調整。しかし、打開策が見えないまま翌朝を迎えた。
午前8時過ぎから入管側と交渉するがらちがあかず。その1時間後の電話で、「『入国は不適合』という結論に至った」と報告をうけたという。入管担当者の説明では、「国内での滞在のスケジュールがあいまいであり、入国を許せる条件に合わない」とのこと。G8MNのメンバーが説得を試みるが、「決定は撤回されない」の一点張りだったそうだ。しかし、このやりとりの途中で突然「状況が変わった」と告げられ、3人の滞在に関する資料一式を送付した後、午後2時半過ぎに、「入国許可」の連絡が入ったという。
強制退去から急遽、許可に変わったのは、彼らが国会議員の秘書の携帯電話番号を知っており、その秘書の働きかけが効いたものとみられている。
彼らは何も悪いことをしておらず、なぜ自分たちが拘束されたのか、最後まで疑問だったそうだ。
自分たちの話には耳を貸さなかったにもかかわらず、議員秘書の一言で担当官の態度が急変したため、「日本の暗部を見た気がする」と語っているという。
香港の地元メディアでは、すでに彼ら3人が日本で拘束されたニュースが社会面トップとなって掲載されているとのこと。記者が撮影した写真はテレビ局に送り、原稿は中国と香港の新聞社2社に送信している。
また、同じ27日、別の女性ジャーナリストがやはり拘束され、入国は許可されたものの、わずか4日間の滞在しか認められなかった。2日間ほど予定が空白だったのが、滞在短縮の理由だという。ジャーナリストやメディア関係者は、不測の出来事を取材するケースがあり、あらかじめ取材日程を決めるのは難しく、スケジュールが埋まっていないのも普通だ。にもかかわらず、予定が埋まっていないと、その前に帰国を命じられることもあるという。
▽市民の視線でのG8取材を
今回のG8サミットのホスト国であり、先進国であり、民主主義国家である日本が、外国からの訪問者をこのように扱うのは、国際社会の一員として恥ずべきことだ。
G8の取材で入国しようとしているジャーナリストやメディア関係者の拘束(場合によっては入国拒否)は、表現の自由を抑圧する行為といえる。
大手マスコミ以外のメディア関係者は、市民の視線でG8を取材するために来日している。彼らの活動の抑制は、市民の声を伝える機会を奪い、権力側に偏重した報道を助長させるだけだ。
東京在住の英国人ジャーナリストは、「この話を聞いて非常に当惑している。日本のような大国が、このような方法で表現の自由を妨げるとは信じられない。海外から来るジャーナリストやメディア関係者は、テロリストでも犯罪者でも危険人物でもない。そうみなすとしたら、あまりにも危険すぎる。日本は民主主義を支援する国であるべきだ。表現の自由や司法の自由が保障されなければならず、政治家に操作されてはいけない。これはまさに検閲と呼ぶ行為だ」とコメントをよこした。
なお、G8メディアネットワークは、週明けに東京で記者会見を開き、法務省への抗議、政治家への働きかけなどをする予定だ。
2008年の洞爺湖G8サミットに関する記事一覧
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