フランス脱原発派の声:核物質を輸送する国鉄労働者

ドミニク・マルヴォーさん (核物質輸送に反対する国鉄労働組合の代表)

私はフランス国有鉄道の転轍手でしたが、定年退職し、SUD RAILという組合の代表をしています。

フランスの原発は、58基の原子炉のある施設だけではありません。
私たちは、高濃度の放射性物質を年500回は列車で輸送しています。ウランとプルトニウムも100回ほど輸送しています。年間500回ということは、約毎日1回です。それだけの列車での核物質輸送が、フランス国内で行われていることになります。

心配される地域は、トリカスタン、クリュア=マイスあたりからラ・アーグです。

イタリアやドイツは、放射性物質の輸送に関して、はとても激しいです。列車は、ラ・アーグ出発し、列車は核廃棄物を乗せて輸送します。フランスから来る列車をブロックする反原発行動が起こります。こうした行動は、国際的な輸送では報告されていますが、フランスでは列車は森の中の一本の木のように隠れています。輸送コンテナーは、毎日フランスの鉄道網を使って輸送されます。

放射性物質の輸送にはどのような危険性があるのでしょうか。もちろん、核燃料の輸送も同じです。使用済み核燃料なので放射能を含んでいます。原子炉から抜き取った核燃料は、原発施設内の貯蔵プールに12年ほど保管し、それから、再処理のためにラ・アーグへ運ばれます。58基の原子炉が定期的に、核燃料を抜き取ります。

コンテナー自体大きく、原子炉の半分の大きさで、これに入れて運びます。このコンテナーがフランス国内を走っているのです。コンテナーの事故を想像してみてください。原子炉の爆発や事故に等しい大きさになるでしょう。フランスのどのような地域でも、こうした事故が起こりうるというのが、輸送の現状です。

事故は1998年に起きました。アレバの前身であるコジェマが資料を公表し、この事故は報道されましたが、みなさんはまったく知らなかったと思います。1998年は、車両総数の35%が放射能汚染されているという発表がありました。これは重大な事故です。鉄道労働者たちは、車両が放射能汚染されたなかで、積み替えるなどの作業をしていたのです。

ドイツのジャーナリストがそれを暴き、当時のジョスパン首相が核廃棄物の輸送について調査しました。そのころのフランス国有鉄道の輸送の5%が原子力関係でした。フランス電力公社の労働者のように、国鉄も原子力に結びついているのです。

「汚染はまだいい、事故のほうが重大だ」というのは、非常に悪質な考え方です。
調査から多くのことが情報公開されました。

「輸送コンテナーは非常に衝撃に強い。9メートルからの落下、800℃の熱、時速150キロメートルの衝突に耐えうる」というのです。私たちは、「もし途中で事故が起きたら、どうなるのか?」と質問を提出しました。たとえば、トリカスタンからラ・アーグまでの鉄道ルートには、約10の線路切り替え装置があります。

「800℃以上の熱になったら?」 モンブランのトンネル事故では、トラックの温度が3000℃に上昇しました。そのことを記憶しているかと思います。トリカスタンとラ・アーグの間には、20ものトンネルを通過します。トンネル内での事故では800℃以上の温度になると考えられます。

そして、踏み切り事故は、通常の運転でもよく起きます。トリカスタンからラ・アーグまでの間には、150以上もの踏み切りを通過します。踏み切り事故で多いのは、列車の衝突です。核物質が入ったコンテナーの列車の衝突事故は、起きる可能性が高いといえるでしょう。

これらが、ASN(原子力安全規制委員会)に質問した内容です。現在まで、事故の可能性が高くはないことを説明しつつ、ASNは回答を拒否しています。私たちは、調査の続行を待っていますが、ASNは回答を拒否しています。

2011年4月、ASNの安全に関する国家委員会から、次のような回答を得ました。「私たちは、国の安全を守ることに従事している。コンテナーの安全管理を担当している。コンテナーの安全については調査するが、輸送に関しては担当していない。旅程は担当していない」

つまり、原子力を管理する立場にない、原子力の知識を持たないフランス国有鉄道が、核物質を輸送するための旅程を選択し、必要とされる安全管理の方法を決断しなければならないということになります。ASNの仕事の基本は原子力であり、原子力に関する仕事の専門家であり、その知識が豊富であるはずで、彼ら自身もそれを知っているでしょう。しかし、輸送に関して、ASNはフランス国有鉄道に責任を押しつけています。

列車で事故が起きたら、どのような結果になるか想像してみてください。
チェルノブイリや福島の原発の事故のようなことが起きるのです。

輸送のもうひとつの問題は、核物質を輸送する列車が普通の鉄道網を走ることにあります。1998年の報告書には、核燃料のコンテナーから高レベルの放射線が放出されていることが示されています。非常に危険な放射線量です。コンテナーの0~1メートルのところに30分間いると、2マイクロシーベルト時の被ばくをします。つまり、30分の間、コンテナーの近くにいると、原子力施設の労働者の2倍の被ばくをすることになります。(ラ・アーグは観光で人気のブルターニュにありますが、列車を利用した)ブルターニュへのバカンスで被ばくする可能性があるのです。

列車は駅で止まります。パリ郊外のヴェルサイユ・シャンティエ駅で列車は15分以上止まります。それとは知らず、観光客は列車の近くで写真を撮ったりします。コンテナーから1メートル未満のところでも。パリ周辺でコンテナーが2時間近くで停車することもあります。放射性物質を乗せた列車です。一般の人も同様に影響を受けます。

3つめの危険性は、民主主義の問題、情報公開です。イタリアでは、放射性物質輸送のルートなどが自治体に公開され、15キロメートル圏内に目印をつけます。しかし、フランスではそれを伝えません。もし事故が起きても、自治体、たとえばヴァランス市の市長は避難すべき地域がわからないのです。

コンテナーの事故が、たとえばヴァランスで起きた場合、ヴァランス一帯が放射能で汚染され、住民の生活が失われます。アビニョンはヴァランスから約40キロメートルなので、ここもほぼ同じです。

ですから、原子力に関する情報を一般に公開し、実際の輸送がどのように行われているか公開すべきです。核燃料が入った核コンテナーは、幸いなことに、これまで事故を起こしていません。でも、重大な事故が起きることを忘れてはいけません。

フランスでは津波や地震の可能性はないかもしれませんが、核燃料輸送で重大事故が起きる可能性があるのです。

2012年3月9日、アビニョン市役所、フランス脱原発全国集会にて

(2013年11月19日)

 

原子力施設からの核廃棄物の輸送情報は極秘というフランス
原子炉の炉心から取り出された核廃棄物はトラックに積まれ、ラ・アーグのアレバ工場に直行する。放射性物質を積んだ列車やトラックは長年、フランス国内を行き来し、鉄道員はほぼ毎日、核廃棄物が輸送車両に詰まれるのを見る。しかし出発時刻や旅程は秘密だ。

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