2012年9月8日に東京で行われたフサームさんの講演によると、劣化ウラン弾を投下されたイラクでは、放射線の危険性が知らされておらず、調査も行われていないとのことでした。
フサーム医師は、1970年にイラクの南部バスラで生まれ育ち、バスラの医学部を1993年に卒業。地方の病院で研修医をした後、1999年からバスラ産科小児科病院の専門医となり、2010年からバスラ子ども専門病院勤務。
以下、講演会でのお話を紹介します。
1991年の湾岸戦争は、クウェートとバスラだけが戦場になり、この地域で劣化ウラン弾が使用されました。
2003年のイラク戦争では、バスラだけでなく、イラク中部など、北部以外のイラク全域で劣化ウラン弾が使用されました。
サダム・フセインが戦車などを市街地に隠していたからかもしれませんが、そうした兵器を攻撃する名目で、劣化ウラン弾が市街地に投下しました。
劣化ウランに汚染された戦車やミサイルは、戦後も市街地に放ったままにされています。
放射線の危険性について、誰も警告をしません。
イラクの人々は危険性を知らされていないため、子どもたちは破壊された戦車をおもちゃにして遊んでいます。
また、そうした金属を解体し、スクラップして売り払ってしまうケースもあります。
放射線の危険性について、政府も無頓着です。劣化ウランの影響調査については、ほとんど行われていません。
日本人の科学者を含む何人かの科学者が調査したらしいのですが、組織だって包括的に行われていません。国際的な機関による調査は行われていません。
数人の科学者や専門家の調査は十分ではなく、あくまでも個人レベルにとどまっています。その結果を教育や啓蒙に役立てられてはいません。
アメリカは、イラクに民主主義をもたらしたと主張しますが、劣化ウランの放射線も拡散しました。これは非常に深刻な問題です。
確かに米軍は撤退していますが、イラクには世界最大のアメリカ大使館が存在し、その意味でも、劣化ウラン被害の調査を妨害する可能性もあり、適切な調査が行われるか疑問です。
イラク政府もまったく頼りにならず、劣化ウラン問題には目を向けていません。
個人的な意見ですが、私はアメリカが民主主義をもたらしたとは信じていません。
アメリカはイラクに破壊をもたらしました。イラクの石油の利権を奪うのが目的だったのだと思っています。
(2012年9月18日)