世界の庭(ヨーロッパ編12):個性の庭の時代

20世紀、庭園の目的は多様化し、美観を追求しながらも、人間生活に直接役立つべきものという考えが主流となる。

公園の重要性は増し、新しいタイプのオープンスペースが次々と登場する。スペインのグエル公園、パリのジャルダン・デ・アールを紹介。

世界の庭(ヨーロッパ編11):フランス印象派の庭
19世紀末、美術界で印象派画家が活躍し始めた頃、園芸の分野では、ワイルドガーデンが新しい様式として注目されるようになる。植物そのものからのインスピレーションに頼る手法の感性豊かな庭園が、フランスのアーティストを中心に造られることになる。

グエル公園へ向かう。地図ではすぐなのに、坂道なので遠く感じる。

シエスタの時間は日差しが強く、かなりキツい。しかし、公園に着いたら、疲れは驚きに変わってしまった。

スペインのバルセロナにあるこの公園は、アントニオ・ガウディが設計を担当した。

風変わりな動物像や小さな家、グロテスクな柱と壁など、この公園は彼の作品そのものだ。

これらのオブジェが、ヤシなどの樹木と調和し、不思議な雰囲気をかもしだしている。

19世紀末、都市計画の一環として造られた公園は、傾斜地を利用したユニークなデザイン。

廃棄物利用のベンチ、不良品のタイル片で造ったモザイク、ビンのかけらをはめた彫像など、リサイクルがコンセプトになっているのは画期的だ。

高台になった広場は、広々として気持ちがいい。

タイルのベンチに座り、持参したサンドイッチを食べる。

お金を使わない贅沢な過ごし方を、この公園は教えてくれる。

20世紀、庭園の目的は多様化し、美観を追求しながらも、人間生活に直接役立つべきものという考えが主流となる。

パーティ用の芝生や野外炉、テニスコートなどを設け、実用的な場としての庭園が、住宅に併設して造られるようになる。

また、植物栽培が娯楽となり、園芸を趣味にする人も増えた。

環境問題が深刻化するのにともない、公園の重要性は増し、新しいタイプのオープンスペースが次々と登場する。

伝統にとらわれない、大胆なスタイルの公園も造られていった。

ボダイジュの並木道や花壇、芝生の広場を有したジャルダン・デ・アールは、パリの中心街にある公園だ。

実はこの緑の下に、近代的なショッピングセンターが隠れている。

ここは以前、パリの胃袋といわれる市場があった場所だ。

市場移転後の1979年、文化およびレジャー施設を備えたショッピングセンターとして生まれ変わった。

 

周り風景と少しちぐはぐなアバンギャルドな物体が、そのフォロム・レアールの建物だ。

中心に広場を持つローマ時代のフォラム(公共広場)をイメージしているという。

デザインに関しては、賛否両論あるようだが、今ではすっかりパリの顔になっている。

公園内には、貝形にデザインした広場、頭をかたどったモニュメント、植物がからまるアーケード、小さな熱帯植物園に加え、子供用の遊園地もある。

ここ数年、庭園ブームのパリでは、アパートの狭いバルコニーを利用し、都会のオアシス作りをする人が増えている。

1999年の秋には、大規模な展覧会「全地球の庭園」が開催された。

会場となったのは、近未来風の総合博物館ラ・ヴィレット。

この敷地内にある1867年建設の鉄骨建築の中に、巨大な庭が造られた。

人間と自然の関係、庭園の歴史、植物や昆虫の生態を、散歩しながら学ぶ工夫がされている。

さまざまな民族を紹介するビデオ、世界の珍しい植物、プラントハンターたちの遺品など、興味深い展示がいっぱいだ。

竹筒から聞こえる虫の声を推測したり、虫メガネをのぞいたり、香料の匂いを嗅いだり、全身で楽しめる演出だ。

子供そっちのけで喜ぶ親や息子の質問に熱心に答える父親など、みんな童心に戻った表情。親子連れだけでなく、若い人も多く、連日大賑わいだった。

人間が自然をコントロールする時代は終わった。

これからは、自然を愛しみ、親しむことが、庭造りの中心になってくるのではないか。

21世紀を代表する庭園は、どんなものになるのだろう。

(2013-11-21 08:54:32)

 

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イスラム庭園9:オスキュラ&アロンソ(マラガ)
マリーナ広場から海沿いに続く緑あふれる公園通りと、アルカサルのそびえる小高い丘の間に位置するのが、プエルタ・オスキュラ&ペドロ・ルイス・アロンソ庭園。たくさんの種類の植物が育ち、樹木の深い緑がとても印象的です。公園は夜遅くまで人々でにぎわいます。

 

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