ニジェールのウラン鉱山に反対するフランスの団体

2011年10月、ニジェールのウラン鉱山問題にたずさわる団体シュルヴィ(Survie)にお話をうかがいました。

ウラン採掘に苦しむニジェールの人々
アフリカ・ニジェールのウラン採掘の現状について、現地からの手記です。 このプロジェクトは、日本企業もかかわっています。 Altermondes 2007年12月~2008年2月号 14ページ ウラン 牧畜民の不...

2009年3月に、ニジェール北部のイムラレン鉱山の採掘に関し、大きな契約が署名されました。イムラレンは、アフリカでも重要なウラン鉱山です。ウラン採掘の競争が多くの企業を巻き込んで激化し、アレバが採掘権を手に入れました。

2009年3月にサルコジ大統領が、この契約の署名のためにニジェールに行きました。こうして、鉱山での採掘がはじまりました。

協定に関し、その時、アレバの社長が契約書にサインしました。2008年7月だったと思います。

ニジェール経済にとって、アレバはとても重要で、アレバの40%のウランがニジェールで生産されています。

アレバはまた、アフリカの多くの国の鉱山を有しています。南アフリカ、中央アフリカ、ガボン、コンゴ。同じく、ニジェールも重要です。さらに、カザフスタンとカナダです。
ニジェールの政治情勢は、2010年2月にクーデターが起き、(2011年1月に)選挙がありましたが、とても長い間不安定です。この選挙ではじめて、遊牧民族のトゥアレグ族出身の首相が誕生しました。ですから、政治レベルでは、これまで軍事政権が長く続きましたが、安定し、民主化が進もうとしています。

ところが、前大統領のママドゥ・タンジャは、任期延長を目的に憲法を改正しました。
これに反対し、ヨーロッパはニジェールと国交断絶したのですが、フランスは、経済的利益がとてもとても強いので、まったく関係を絶つということがありませんでした。

サルコジがニジェールを訪問した際も、政治経済の目的から、ニジェールの状況をまったく批判せず、ママドゥ・タンジャの反民主主義を解放しました。

フランスにとってウランと電気のほうが、ニジェールの人々より重要なのです。明らかに。私たちの団体は、それに対して多くの批判をしました。ママドゥ・タンジェを好き放題にし、アフリカの独裁者を支援するフランス政府を批判しました。

ニジェールのウラン鉱山周辺の放射能汚染や、労働環境はひどいものです。その理由は3つあります。

ひとつは、ニジェール政府とフランス政府、そしてアレバの利権。

アレバは巨大企業であり、ニジェールは世界で最も貧しい国のひとつです。力関係の差が大きすぎて、ニジェールがウランの価格を決めるのはとても難しいのです。

ウラン輸出の条件の問題の後、社会問題や環境問題の側面からも、惨状が明らかになりました。

環境レベルでは、覆いのないなかでウランを採掘するため、放射性物質が川に流れます。労働者の被ばく線量は深刻で、健康被害が問題になっています。

社会的側面では、その地域は、あまり多くの仕事がなく、仕事といえば農業です。ニジェールは収入も低く、月40~45ユーロぐらいです。ウラン採掘の労働者はニジェール人です。

もちろん、フランス人も働いていますが、フランス人は現場で作業するような仕事ではありません。それほど多くのフランス人は、ニジェールに住んでいません。ですから、アレバは、ニジェールの事務所で働くフランス人にものすごい高給を払っています。さらに、フランス人の子どもたちの学費や、フランスとニジェールを行き来する旅費などにもです。やり方がとても賢いです。

ニジェールの人々は、ウランが国の経済に重要であることを知っています。サウジアラビアにとって石油が重要なのと同じです。

しかし、ウランは危険です。市民団体や労働者がグループを作り、声を上げています。健康や温暖化について、ニジェール人は心配しています。

ずいぶん前に閉山した、ニジェールの小さな町アーリット (Arlit)では、労働組合が労働環境を懸念しています。

ニジェール政府は、ウランを独占するために、開発をやめる決断をしました。そして、2000年にウラン鉱脈があるとされる地域を隔離し、近辺の開発を中止してしまったのです。ニジェールのその地域は、遊牧民トゥアレグ族が多く住む北部の土地です。人々はニアメ(首都)の政府と対立しました。

ニジェール政府はその地域に突然、ウラン燃料を製造のための工場や施設を建設しました。その地域の産業は、山羊や羊の放牧などで、そこはキャラバンやらくだが通る土地です。彼らは突然、通行を遮断されてしまったのです。

トゥアレグ族は、ニジェールのほぼ全土に散らばっていますが、少数民族です。関心の的となっているのは、武装していることです。

私たちの団体シュルヴィは、たくさんの団体からなる「Areva ne fera pas la loi au Niger(アレバはニジェールに法律を作ってはいけない)」という名の共同体の一部です。この団体に加わっているのは、2つのフランス政党、脱原発支援団体Collectif Tchinaghen、それから、フランスの著名な団体アタックなどです。アレバがビジネスを優先させ、ニジェールの人々をないがしろにしているので、私たちはこうした共同体を作りました。ニジェール以外にも、中央アフリカ、ガボン、コンゴ共和国の支援もしています。

コンゴは、シンコロブエ鉱山にかかわっています。アメリカが落とした広島と長崎の原爆のウランは、コンゴのシンコロブエ鉱山で採掘されたものです。とてもとても古い鉱山で、いったん閉山したのですが、アレバがたぶん再開するでしょう。

ガボンでもアレバはビジネスをしていて、ここは中国も進出しているはずです。

南アフリカも支援していますが、それほど多くありません。一番支援しているのはニジェールです。

福島事故後も、アレバの態度はまったく変わっていません。フランスはまだ何も変わっていません。アレバは非常に巨大企業なので、政府は決断できないのです。企業はますます人々を服従させようとしています。

脱原発の政府の決断にとって、とても重要な議論は、2012年の大統領選挙後になるでしょう。社会党が政権をとれば、脱原発は実現し、アレバに関しても多くのことが変化するでしょう。

フランスは原発依存の歴史が長く、電力生産の主要な産業なので、脱原発は難しいです。ウラン燃料を製造している企業もです。フランス全土に関係しています。

ここ50~60年のフランスの政策は、「私たちは石油がなく、アメリカとの競争に負けないように、何かしなければならない」でした。こうして、原発政策を促進してきました。
今、選択しなければなりません。

廃炉にするのは、フランスの政策として少し難しいです。なぜなら、我々は実に長い期間、強烈に、原発に依存してきたからです。ですから、フランスの一般の人たちは脱原発に反対しています。

それに対し、ニジェール人は違います。ニジェールでは、ウラン開発に反対しています。このことを知っているフランス人はほとんどいません。少し興味がある人はいますが、普通のフランス人はほんの少ししか情報を入手しないし、これに関する情報は限られています。この件に関しては、多くは話題になりません。

フランスの原発輸出で今主に動いているのは、南アフリカです。もちろんアレバです。セネガルやザンビアは、福島原発事故後、頓挫しました。しかし、チュニジアやリビアは知りません。カダフィとベン・アリが失墜した今、フランスが原発を輸出する可能性はあります。

ただ、福島事故で状況は変わりました。原発はお金がかかることがわかったからです。

(2013年11月11日)

日本も出資するウラン採掘「ニジェールプロジェクト」
ニジェールのウラン採掘「ニジェールプロジェクト」は、ニジェール、フランス、日本らの企業が出資する。フランスのアレバ社と日本の海外ウラン資源開発株式会社のHPで紹介されていた「ニジェールプロジェクト」、ニジェールのウランについてまとめた。

オーストラリアのウラン輸出、先住民の〝神聖な泉〟を汚染『ビッグイシュー日本』2月15日号

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