料理ができないフランス人に“家庭の味”教室が盛況

『日刊ベリタ』2006年9月22日に掲載された記事です。

手軽な家庭料理を楽しみながら学ぶ教室がフランスで人気を博しているという。高級料理を教えるルノートルやリッツといった専門学校はあったものの、一般向けの料理教室はほとんど存在しなかった。フランスでは、女性の社会進出で母親から料理を習わなかった世代が増えている。家庭料理教室は、こうした世代向けの新ビジネスといえるが、ひとり暮らしが増えている現代社会の需要にもマッチしたようだ。

フランスのルモンド紙によると、フランスでは70年代のフェミニズム運動以降、家で料理をする母親が減少した。女性の多くが料理を不名誉で屈辱的な行為と否定的にとらえ、当然のことながら、自分の子どもたちに家庭料理を教えなかった。

Apprendre la cuisine en s'amusant
Pour ceux qui veulent réaliser de bons petits plats, certains chefs ont créé des cours d'un nouveau genre. De l'épluchage à la dégustation.

それと平行するように、食のファーストフード化が進み、フランスの食材に無知な子どもや大人も増えつづけ、食生活の乱れはいまや危機的状況となっている。

さらに、独身者や離婚者といった単身暮らしは年々増加し、人々とテーブルを囲んで手作りの料理を食べる機会は減っている。

こうした状況の中、ここ数年健康や食品への関心が高まっているのも事実で、特に都会人の間では快適に楽しく料理を学びたいという欲求が強まっていた。ひとり分のレトルト食品で簡単に食事を済ましている層も、人と時間を共有する価値を見直している。

こうした要求をすべて満たすのが、新感覚の料理教室というわけだ。ブームの火付け役は、ブルグロー兄弟が創設したアトリエ・デ・シェフだ。「プロが教える実用的で低価格の料理教室」とのふれこみで、2004年7月にシャンゼリゼ界隈に開校したのを皮切りに、パリ市内の2件のデパートにも教室をオープン。フランスの地方都市にも進出し、今年6月にはボルドーに、9月初めに教室ができた。

昼のコースは各30分で2回開かれ、連日満員だ。スーツとネクタイにエプロン姿といったビジネスマンもキッチンに立つ。仕事を忘れて熱中する料理は、ストレス解消にもなっているようだ。

料理を教える講師はいずれも一流料理学校で指導しているプロばかりだ。高級料理学校では4~5時間かけて繊細な料理を仕上げるのが普通だが、この教室は短時間でできる一般家庭向けレシピだけに的を絞っている。

高級食材は使わず、スーパーマーケットで手に入る食品を材料にしているのも特長だ。固形スープ、ジャガイモ、チョコレートといった、どの家庭の戸棚にも置いてある食材で作るシンプルな料理がメニューに並ぶ。

従来の料理教室同様、参加者のほとんどは女性で、孫から教室のギフト券をもらった高齢者や、自炊をはじめたばかりの20代が多い。しかし、最近は男性の姿も目立つようになってきたという。

 

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