パリの店:ギフト&インテリア雑貨の店 Isle pour Elle

『専門店』「世界の専門店拝見 こんな店・あんな店」2004年11月号に掲載された記事です。

数年ぶりに、以前住んでいた通りを歩いてみた。周りの風景は少し変わっていたが、昔から気に入っていた小さな雑貨屋はそのままの姿で残っていた。パリにもアメリカやイギリス風のショップが増えてきたが、ここはいかにもフランスらしい、かわいらしさあふれるショップだ。

今回は、モンジュ通りにある「イル・プール・エル」のマダム、クロード・ラクロワさんにお話をうかがった。

-この店はいつオープンですか?

1990年です。オープンして14年になります。

-さまざまなものがありますね。

プレゼントとインテリア小物がコンセプトです。大きな店ではないのですが、たくさんのグッズをそろえています。豊富なカラーから選べること、そして、モダンとアンティークの調和。それが当店の特徴です。

-ショップはおひとりで切り盛りされているのですか?

仕入れ、ディスプレイ、そして販売員と、ひとり何役もこなします。商品はすべて私が選び、好きなものだけを集めています。たとえ売れ筋の商品でも、自分が気に入らなければ、店に置きません。店の名前は「彼女の島」で、ここは「私の島」なのです。まさに私好みの雑貨をそろっています。

-ご自宅もこのような雰囲気でしょうか?

そうですね。ここにあるのは、家に飾りたいインテリア小物ばかりですから。実際、自宅にはこの店の商品が多いですよ。すべてを家に置くのは無理ですが。

-店を始めたきっかけは?

以前はファッション業界で働いていました。ずいぶん昔のことですが。育児に専念するために一度仕事をやめましたが、再び働き始めることにしたのです。

-モードの世界に戻るつもりはなかったのですか?

何か違うことをしたくなりました。それに、時代が変わってしまっていましたし。私はパリのオートクチュールの学校を出ました。高級オートクチュールを学んだのです。でも、仕事に復帰しようとしたときには、プレタポルテが主流になっていました。それにはあまり興味を持てなかったのです。私にとっても革命でしたね。

-それでインテリアのほうへ?

インテリア業界は、クリエーターをはじめ、一緒に働く人々がとてもフレンドリーです。ファッション業界の人は少し難しく、あまり気さくとはいえません。自分にはこちらのほうが向いているようです。

-仕事を始めるにあたり、何か準備されたのですか?

アンティークの資格と、日本の生け花の免状をとりました。

-生け花?

パリで草月流生け花を習いました。生け花は、フランスでも昔から知られていました。私が生け花を始めたのは、1980年です。草月流の先生の展示会でひとめぼれし、すぐに生け花を始めました。20年以上も定期的に花をいけています。生け花は、植物の強さと空間を同時に表現するところが好きですね。

-フランス風のフラワーアレンジメントとは少し違いますね。

フランスにモダンなフラワーアレンジメントを定着させたのは、クリスチャン・トルトゥです。フランスでも花を飾ることに関心が高まりました。それに伴い、日本の生け花もますます注目されています。

-この場所を選んだ理由は?

このエリアが好きなのと、近くに住んでいるからです。

-どのような人が訪れますか?

地元の人だけでなく、各地から来ますね。10年以上も営業しているので、いろいろなお客さんが訪ねてくれます。大きな通りに面しているため、車で通って興味を持ち、わざわざ駐車して入って来る人もいます。近くにホテルが多く、外国人客もたくさん来ます。リピーターの外国人客もいます。

-商品はフランス製ですか?

フランス製だけでなく、ベルギー、オランダ、イギリスなどの製品もおいています。マレーシアや中国などの製品もあります。

-こちらでしか買えないものもあるのですか?

手書きのリボンやランプシェードは、この店のためだけに作ってもらっています。また、若いクリエーターが作っているコーヒーカップとソーサーもこの店のオリジナルモデルです。このカップ&ソーサーは31色あり、選択肢が豊富です。同じ色をそろえるだけでなく、いろいろなカラーを合わせるのもきれいです。同じ色でも、濃いのが好きな人もいれば、薄いのが好きな人もいますから。すべてハンドメイドで色つけした、リモージュの陶器です。

-よく売れる商品は?

ランプはよく売れますね。木の枝を利用したランプなど、面白いでしょう。花瓶にいけると本物の植物のようです。額縁、香りのキャンドル、ナプキンもいろいろ種類がそろっていて、売れ行きがいいです。

-ディスプレイがまるで美術館のようですね。

ありがとう。人に見せるディスプレイを心がけています。なんでも一緒に並べたいのです。プレゼンテーションはとても重要で、ウインドーのディスプレイも私なりの理論があります。季節ごとに雰囲気を変えます。

-絶妙な配置というか…。

モダンというよりスタイリッシュでしょう。特に意識はしていないのですが、私は色に対して敏感で、カラーを慎重に選び、調和させるのが好きですね。ひとつの色におさまるのはつまらない。さまざまな色を混ぜ合わせるのが楽しいのです。

-すべてに色へのこだわりが感じられます。

ラッピングも大切にしています。美しく包むことで製品が完成するのです。ステキな包みは、受け取る人を気持ちよくさせます。中身の色と包み紙やリボンの色の組み合わせに、いつも気をつけています。

-お好きな色は?

店のテーマカラーである、とても優しい緑色が好きです。“島”らしい色でしょ。しかも、赤、黄、青、緑など、あらゆる色と調和しますから。ボルドーなど、さまざまな赤も好きです。反対に青はあまり好きではありません。トリコロールの青は、いかにもフランスっぽいので(笑い)。

-フランス人はインテリア雑貨が大好きですね。

この店をオープンした当時は、専門店の数も少なく、装飾家が経営するブティックがほとんどでした。今ではいたるところに同じような店がありますね。オリジナリティがなくなり、少し残念です。私は私のスタイルを維持しようと思っています。

-確かに、世界中似たような店が多いような気がします。

すべて同じというのは、ちっとも面白くありません。ロンドンやニューヨークなど、世界の都市にはどこも同じような商品が並び、ショップに個性がありません。パリでも、このような現象が起こっています。私は人と違うのが好きだし、いつもそれを求めています。それが私の仕事ですし、手間はかかるけど、楽しみでもあるのです。

-フランス人は個性を大切にしますね。

フランス人は個人主義だから、オリジナルなものを求めたがるのだと思います。でも、若い世代はそうでもないみたいですよ。彼らは昔の人ほど個人主義者ではありませんから。

-オリジナリティを保つ秘訣を教えてください。

いつも面白いものを探しています。見本市はもちろんですが、個人的にもいろいろ出かけます。ベルギーやイギリスに実際に行き、商品を見て回ります。独自性はとても大切です。

「これらは生け花っぽいですね」と売り物の花瓶に生けてある花を褒めたら、「そうでしょ、わかる?」とうれしそうに笑ったクロードさん。
「無理に商品をおしつけたりしないの。お客さんの趣味を尊重しています。満足して買ってくれたほうがうれしいから」
クロードさんとインテリア雑貨選びの喜びを分かち合いたくて、人々はここに集まって来るのかもしれない。

41 Rue Monge 75005 Paris

*2011年に閉業

 

世界の専門店拝見 こんな店・あんな店 パリ
『月刊専門店』1991年1月号~2008年5月号(日本専門店会連盟)に掲載された記事です。 1999年1月号 香りの専門店 Diptyique 1999年3月号 フランス各地の工芸品 La Touile à Loup ...
パリのインテリア素敵な暮らし(1996年)
『FRaU』1996年10月22日号に掲載された記事です。 フランス 光、色、形に自分の手を加えて、生活しやすい空間を創り上げる 手作り小物とユニークな発想で パリ18区、アーティストに人気のモンマルトルの丘の麓に...

パリの食べ物屋(28のレストランやカフェを紹介)

タイトルとURLをコピーしました