パリの店:植物&インテリア小物の店 Les Fees d’herbe

『専門店』「世界の専門店拝見 こんな店・あんな店」2000年5月

ここ数年、パリでもガーデンブームが話題になっている。アパートで暮らすパリジャンたちは、中庭やバルコニーを利用し、緑の空間づくりを楽しんでいる。これにともない、植物、花をテーマにしたショップも増加しているという。

バスティーユの東、職人のアトリエが多いことで知られるエリアにある「レ・フェ・デルブ」は、室内観葉植物を集めたショップ。伝統的な花屋とは違う、植物とデコレーション小物、オブジェをそろえた店だ。オーナーのドミニク・ベルナール氏は、長年ブティックなどのウインドーデザインをてがけたデコレーションのプロ。彼のお気に入りのものばかりを集めたショップは、独創的なディスプレイで、訪れる客を楽しませてくれる。

-床に小石を敷いてあるんですね。まるで本当の庭にいるみたい。

一歩店に入ったら、庭を歩いている気分になるよう、白い小石を敷いてあります。店に初めて来る人は必ず驚いて、とたんに態度が変わるんです。お客さんの様子を見るのも楽しいですよ。

-いつオープンしたのですか?

2年ほど前、1998年の春です。ここを始める前は、装飾関係の仕事をしていました。ショーウインドーのデコレーションが主な仕事で、イブ・サンローランなどの装飾をしていたのです。植物とオブジェを組み合わせたデコレーションの経験を活かし、この店を始めました。

-鳥の鳴き声が聞こえますが…。

奥をのぞいてみてください。自分のアトリエを改造し、緑あふれる空間を演出しています。本物のインコ“サロモン”もいて、庭みたいでしょう? 自然光が入るよう、屋根もガラス張りです。

-植物に興味があったのですか?

園芸の専門家というわけではありませんが、装飾の仕事をするうえで、多少の知識を身に着けました。知り合いに園芸家も多いので、彼らからいろいろ教えてもらったりします。植物はもともと好きでしたから。
ここにおいてあるのは、ほとんど観葉植物です。花は気温、栽培方法などそれぞれ違い、育てるのが少し難しいので、植物を通してお客さんとコミュニケーションがとれるのも楽しみのひとつです。栽培のアドバイスをしたり、話が弾みます。

-植物は室内用が中心ですね。

テーブルの上に飾ったり、プレゼントするような、小さくてかわいらしいものをそろえています。今日は種類が少ないほうなのですが、好きなものを選んでもらえるように、いつも豊富にそろえてあります。
たとえば、このハート型の鉢は、ギフトに最適でしょう。植物の種類は季節によって変わりますが、バラなどは定番ものです。

-今、パリでは庭がブームですね。

屋外の庭だけでなく、料理に使うバジル、ローズマリーなどのハーブを窓際で育てることも流行ってますね。

-日本では英国式ガーデンがブームでしたが…。

フランスの庭園といえば、ヴェルサイユの庭のように広大な空間を思い浮かべるのではないでしょうか。パリの庭はけっして広くなく、この近辺ではアトリエの裏の小さな中庭で庭造りをするのが一般的です。さまざまな種類の植物を使い、アフリカのバラック小屋のような、ちょっと雑多な感じがパリ式ですね。
また、バルコニー・ガーデンも注目されていて、オリーブや竹、ブドウの木を育てて楽しんでいる人もいます。ガーデンブームで、最近、花屋も装飾小物をおくなど、変わってきました。これは新しい傾向です。パリの人はミックス感覚が好きなのです。

-この店も、植物だけでなく、インテリア小物が豊富ですね。

以前の仕事の関係で、室内装飾のクリエーターをよく知っているので、彼らの作品を店においています。一般の家庭でも、これらの小物を楽しんでもらおうと思ったのです。クリエーターの作品だけでなく、ここの小物は、パリ、フランクフルト、ブリュッセルなどの展示会で仕入れます。

-びっくりするぐらいバラエティ豊かな品ぞろえ…。

いろいろなものをミックスするのが好きなのです。乱雑になりすぎず、それでいて色とりどりのオブジェにあふれている店をめざしています。
商品は定期的に変えます。毎週来る人もいるので、目新しさを大切にしているのです。

-トンボや蝶、バッタなど、昆虫の装飾品も面白いですね。

特に蝶のクリップが人気ですね。これはシャネルの広告にも使われたんですよ。カタツムリの置物は、大小そろっていて、おもしろいでしょう。一番小さいのは、たった20フランなので、ちょっとしたプレゼントに買っていきます。

-おすすめの商品はありますか?

店でとてもよく売れているのが、ソフィー・マルソンというアーティストが作っている陶器です。
すべて手作りで、ブルー、ピンク、グリーンといったカラーの皿に、蝶が一羽描かれています。40色のなかから好きなカラーを選ぶことができ、大きな皿が150フラン、小さいのが120フランと手ごろな値段。2~3色違う色を混ぜ、蝶のデッサンにも変化をつけて注文する人が多いですね。

-この場所を選んだのはどうしてですか?

私もこの近くに住んでいて、みんな知り合いで、とても感じのいいエリアだからです。バスティーユがにぎわいはじめたのにともない、この地区には新しい世代が住み始めました。ずっと昔から暮らしている人もいるので、さまざまな人がミックスして、ちょうどよい雰囲気を醸し出しています。村的ではありますが、すべてのカテゴリーの人がバランスよくブレンドされています。
すぐ近くにはたくさんのアトリエやロフトがあり、建築関係のクリエーターや職人が住みついています。バスティーユのように大きなレストランやカフェが集中しているわけではなく、小さなカフェやレストランが点在していて、パリらしい地区といえますね。

-どのような人がこの店にやってきますか?

子どもからおばあさんまで、いろいろな人がやって来ます。気取った人はいませんね。みんな好奇心旺盛で、「どうしてこれは高いの?」「これとあれはどう違うの?」「品質は?」と積極的に質問してきます。

-ウインドーのデコレーションも素敵ですね。

ウインドーは、1か月半おきぐらいに変えています。店の顔ともなっているので、いつも趣向を凝らしています。近所にはアートにうるさい人が多く住んでいるので、ウインドーは大切なのです。幸い、店にたくさんのオブジェがあるので、それらを使い、楽しく装飾しています。
花屋という印象を強調しないように、いつもユニークな素材を見つけて、オブジェと植物をからめて演出するんです。次はどのようなデコレーションにしようか、いろいろ思案しているところです。

15年ほど前に、装飾の仕事で東京と大阪に2週間滞在したというベルナール氏。驚きの連続で、とても興味深く、東京が大好きだという。
ショップのコンセプトは“びっくり”と“ミックス”。ベルナール氏がセレクトするオブジェとグリーンは、彼のユニークなキャラクターをのぞかせる愉快なものばかりだ。

*2000年の情報です。お店は閉業しました。

 

世界の専門店拝見 こんな店・あんな店 パリ
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BBCのテレビ番組にも出演するガーデンデザイナーに、ガーデンデザインという仕事の魅力をうかがった。コピーではない自分の庭造り、新しさを追求して模様替えする庭をモットーとし、「現代の生活にマッチした日本庭園を追求するがおもしろい」と言う。
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