仏紙に掲載「日本の新型コロナによる看護師の差別問題」

フランスのルモンド紙電子版に掲載された、日本の新型コロナウイルスによる看護師や患者に対する差別についての記事(2020年5月15日)の抄訳です。

Au Japon, les soignants et malades du Covid-19 stigmatisés
La crainte de la contamination provoque un phénomène d’ostracisation des personnels de santé et de leurs enfants, tandis que les hôpitaux craignent de perdre le...

日本では新型コロナウイルスの看護師と患者が公然と非難されている

感染の恐怖は、医療機関のスタッフとその子どもたちの村八分現象を引き起こし、一方で、病院は、ウイルスに感染した患者を受け入れることで、他の外来者を失うことを恐れている。

対策が不十分で、感染する恐れがあり、ある種の村八分が見られ、日本の医療システムは、新型コロナウイルスの流行で困難な状況におかれている。この国では、医療機関のスタッフの仕事に感謝する夜8時の拍手はなく、病院を訪問したり、支援を表明する大臣もいない。反対に、「人々は看護師を新型コロナウイルスと同一視しているかのようだ」と、TBSテレビで、看護助手は語る。

東京都の小池百合子知事は、「恥ずべきこと」と訴え、日本赤十字社は、「不安と恐れ」から生じた差別と説明した。雑誌『プレジデント』電子版は、4月末に「医療従事者の子を『コロナいじめ』から守るにはどうするべきか」を掲載した。

こうした反応は、日本特有ではないが、そうといえないこともない。広島と長崎の被爆者は、長年、差別されていた。2011年3月11日の津波でも、1923年の関東大震災のときの朝鮮人に対する差別のようなことが再び起きた。

医療スタッフに対する差別の感情は、流行病それ自体に関連する数々の問題のひとつである。日本は、5月6日の感染者数が15,477人”だけ”であり、ヨーロッパの国々と比べて非常に少ない。公式発表によると、死者は577人で、数は減少している。しかし、感染症専門の青木眞氏によると、日本医師会は、救急治療は”すでに崩壊している”、優れた医療システムではあるが、”流行病に対する備えがなく”、分断の犠牲者となっているという。

この危機以前の集中治療室の10万人当たりの病床数は、フランスの7.5床に対し、日本は4.5床である。日本では、2月現在、人工呼吸器が22,000台強、体外式膜型人工肺(ECMO)は1,400台ほどの数だった。これらの対策は不十分である。感染者が最も多い東京では、5月6日の時点で、利用可能な病床の62%が埋まっていた。そこで、東京都は、新型コロナウイルスの患者の大量感染に備え、その数を5倍に増やさなければならなくなった。

伝染病に関する法律は適正ではないとみられる。それによると、軽い兆候の場合でも、ウイルス感染者は全員、入院させなければならない。業務を軽減するために、東京を含む自治体は、重症ではない場合、ホテルの部屋に集めることになった。

しかし、流行病の管理は、微生物学者が圧倒的に多い国立感染症研究所の管轄である。「日本以外のすべての国では、微生物学者、臨床医、疫学者が同数存在している」と青木氏は無念がる。

日本では、多くの病院が、患者を拒否している。4月1日から25日の期間、発熱のある1,919人は、診察を受けるまでに5つの医療施設から拒否された。東京では、自宅から350キロ離れた病院に入院しなければならなかった80代の男性が、死亡した。「私たちのレベルで患者を受け入れると決めても、院長が拒否する」と集中治療の医師は説明する。

私立病院は、閉鎖しなければならないことを心配している。東京の佼成病院は、新型コロナウイルスに感染した患者が見つかり、消毒のため、1ヶ月間閉鎖しなければならなかった。新型コロナウイルス患者の発覚は失敗と認識されるかのごとく、イメージが悪くなった。「こうした行動は驚くことではない。1995年に東京の地下鉄で起きたサリン事件の被害者を受け入れた病院(聖路加国際病院)の院長は、日野原重明(1911~2017)医師だけだった。他のどの病院も、それをしたがらず、大臣もそれを強要しなかった」と、日本医療政策機構の乗竹亮治理事は指摘する。人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO)が必要な患者を受け入れる病院への補助金は、状況を変えるものではない。

病院が警戒している要因となっているのは、予防物資の欠乏と感染症専門医師の不足があげられる。「日本には専門家の割り当てがない。学生は将来性があり、お金がもうかる専門課程に進む」と神戸の感染症専門医師の岩田健太郎医師は残念がる。看護師の不足も同様だ。大阪のなみはやリハビリテーション病院では、100人もが感染し、感染していた看護師2人に仕事をさせていた。

(2020年5月15日)

 

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