フランス脱原発派の声:廃炉作業の雇用は”要注意”です

2012年3月9日、フランスのアビニョン市役所で開催されたフランス脱原発全国集会にて、廃炉および原子炉の解体などで生じる問題についてのお話をうかがいました。

エリザベット・ブルニエール (ビュジェ原発廃止を求める団体の代表)

マルクール原子力施設は、アビニョンから近く、解体のモデルとされています。マルクールは巨大な施設で、現実に解体が進行中ですが、それにはかなりの時間がかかると思われます。

私は、ビュジェ原発廃止を求めて2011年に設立したCollectif STOP BUGEYの代表です。ビュジェには4基の原子炉があり、非常に古く、フランスで最古のフッセンアイム原発より数ヶ月遅れて建設されました。ですから、フランスでも古い原発として知られています。ビュジェ1と呼ばれる原子炉は解体中です。

私たちは2011年10月15日にはじめてのデモを行いました。この施設内に、核廃棄物貯蔵施設が建設される計画があり、それに反対するデモです。原子力企業ICEDAの計画に不満で、この計画をつぶそうとしました。

ICEDAは、核廃棄物のロジスティック(物流・情報管理システム)のプラットフォームを構築しようとしています。ここですべての放射性物質を受け入れるというわけです。完全停止して解体中の第一世代の9基の原子炉(ビュジェ、サンーロラン、シノン、シューズ、ブルニリ)で出た核廃棄物です。これらの核廃棄物は容器詰めして受け入れます。
これらの核廃棄物は、新しい最終核廃棄物貯蔵所が完成したら、そこに送ります。しかし、最終貯蔵所の建設が不可能であれば、他の解決策はないため、解決策が見つかるまでそこに保管するのです。

すでに廃炉になった9基の原子炉だけでなく、さまざまな地区の放射性物質を受け入れ、現在稼動中の原子炉の解体から出た核廃棄物もここで受け入れます。

この施設はフランス唯一のものであり、さまざまな施設のさまざまな原子炉の解体による核廃棄物など、フランス国内のすべての核廃棄物を受け入れます。核廃棄物が輸送されるときに、その近くでは被ばくしますし、事故などが起きる可能性もあります。

この施設の建設に対し、7団体が、管理許可に反対して、国務院に起訴しました。クリラッドもそのひとつです。建設中止を求め、2012年1月6日に行政裁判で建設が中止になりました。にもかかわらず、フランス電力公社は建設を続行するつもりでいます。

反対運動をする団体のなかでも、ブルターニュの団体が多いです。ブルターニュでは、自分たちの土地から20キロ圏内に施設を建設するための許可命令に反対する運動が起きました。特に、コンバイユ原発に反対する団体が行動しました。なぜかというと、彼らの土地の近くには、解体中のブルニス原発があるからです。

この原発は1985年に停止し、さまざまな作業が非常にゆっくりと進行しています。解体の許可がおり、解体がはじまりましたが、その作業中に放射能が周囲に放出されました。完全に停止し、解体の許可のための最終命令に対し、裁判が行われました。国務院はこの許可を無効とし、新たな許可が昨年7月に交付されましたが、これに対しても反対しています。

解体作業の雇用について、「要注意」と私は言いたいです。「解体は市場になる」「解体は輸出市場になる」といわれており、「フランスは解体の専門家であり、解体ビジネスを輸出できる」と思っていますが、それは常識はずれです。なぜなら、原発を運営していた事業者自身が解体することが絶対条件になるからです。施設について熟知し、運転の仕組みを理解しているのは事業者です。外部の人が解体をするのはばかげていて、事業者が解体を主導しなければなりません。

解体の第2段階の分解については、教育の未熟な労働者が作業します。ですから、放射線量の高いゾーンでは線量計に従って、掃除などの作業をします。解体作業の種類ごとに、現場で働く労働者も変わるべきです。

解体は雇用なのか、それとも奴隷なのか。それも問題です。

解体の特徴は、非生産的であり、その費用はつねに高すぎるという点です。私たちは自由経済システムのなかにいて、経営のために人件費を抑える傾向があります。非常に厳しい市場において、労働者や環境に対して軽視しがちです。これは深刻です。

第1段階の完全停止は、いますぐにでも実施しなればなりません。後戻りは許されず、原子力の基本的リスクを取り除くためです。原発の燃料タンクは、稼動している原発と同様に危険な状態で放置されています。

それに対し、第2段階の分解はまったく逆で、待たなければなりません。放射線が分散されるリスク、労働者の被ばくのリスクを減らし、放射能廃棄物の「一時的な」貯蔵、ブジェのような仮置き場の建設を避けるためです。核廃棄物を保管する解決策がないので、たぶん、50年間近く、施設内に置いておくことになります。それはまた、核廃棄物の輸送を減らすためでもあります。核廃棄物の輸送も大問題です。

原子力は完全停止していないかぎり、放射性に汚染された装置の解体を許してはいけません。

(2019年11月2日)

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