9.1さようなら原発講演会

関東大震災から90年を迎える9月1日、東京・日比谷公会堂で「つながろうフクシマ! くりかえすな原発震災」講演会が開催されました。

「ジンタらムータ」の演奏の後、主催した「さようなら原発1000万人市民の会」呼びかけ人の鎌田慧さんがまずあいさつ。

「今日は防災の日で、戒厳令がしかれた恐ろしい日です。日本は関東大震災の後、軍事国家へと突き進んでいきました。
安倍政権がやろうとしている、弾圧体制を作ろうとしている今、90年前を忘れてはいけない。
憲法の改悪や軍隊の強化に抵抗するのに、脱原発が大きな圧力になっています。
選挙は敗北しましたが、これからです。9月1日から、もう一度、脱原発運動に力を入れていきたい。
日本だけが軍事国家に進んでいくのは恥ずかしいことです。日本社会がどういうところに向かっていくのか、考えてください。もう一度ここでよく考えて、次のエネルギーにしていきたい」

そして、大江健三郎さんが講演しました。

「いとうせいこうさんの『想像ラジオ』が芥川賞候補になっていたのですが、残念ながら落選しました。
選考委員会が「センチメンタリズム」を批判しましたが、福島について書く作家を励ますことこそヒューマニズムであり、それをセンチメンタリズムというのは違うと思います。
「(震災で)多数の人が亡くなり、それを小説に取り込むことを無礼じゃないか、モラルにかける」と批判する人がいますが、私は事故後、毎日、「(すでにこの世を去った)尊敬する方たちだったら何と言うだろうか」と考え、口にしてみます。
この行為は非礼ではなく、こうした行為が文学であり、そこから出発しなければならない」

大江さんは、亡くなった2人の文学者について考える、とおっしゃり、井上ひさしさんと加藤周一さんのお話をされました。

「去年、フランスのブックフェアに呼ばれ、討論会に出演した際のテレビ中継で、原発反対について話しました。
司会者は原発推進で、通訳がいても、『あなただったらフランス語でどう言いますか?』と、私に下手なフランス語で話させ、やりこめようとしました。
私がフランス語で話すと、会場にいた地味な服装の30~50代の女性が大きな拍手をしてくれました。
司会者は、、『こんなひどいフランス語を全国放送で流したことをお詫びします』と言いましたが、応援してくれる女性たちがいました。
私がフランス語で話したのは、加藤周一さんも同じことをするだろう、と思ったからです。
(ブックフェアは)ちょうど大統領選挙の前で、就任したフランス大統領は、日本と協力して原発を進めていく約束をしました。
それでいいのか? 日本とフランスの知識人の間に議論がなくていいのか?」

そして、チェコから亡命したフランスの作家ミラン・クンデラの語る「一番大切なモラル(le moral de l’essentiel)について触れました。
「クンデラは『自分たちは次の世代とこの地上で生きのばせ、生かさせる。その環境を壊してはいけない』と言っています。
人間にはいろいろなモラルがありますが、もっとも大事なモラル、“エサンシエルなモラル”を次の世代につなげる。
エサンシエルという言葉が大切だと思います。
一番大切な、中心的なモラル、エサンシエルとは何か。それについて考えたことがあるでしょうか。
もっとも重要なエサンシエルなモラル。
『星の王子様』の物語のなかに、このエサンシエルが出てきます。
キツネが自分の星に帰るときにこう言います。「声に出さない言葉が一番大切なエサンシエル」と。

最後に、「日本政府は脱原発を宣言しませんが、方向転換がきます。その根拠があります」と次のように断言されました。

「フランスの中高年の女性たちがしっかりした声を上げたように、日本の女性たちの声が高まるのは確かです。
日本でも、世論調査で女性たちは『脱原発』と言っています。
『広島、長崎、福島の経験をした日本がなぜ、脱原発をしないのか?』という外国からの質問に、しっかり顔を上げてこたえなければなりません。
それはできると思います。そこで女性たちが活躍するでしょう。
黙っているのは、日本人の美徳ではなく悪徳です。
エサンシエルなモラルを次の次の世代に残す。エサンシエルなモラルを確立していかなければなりません」

第二部では、ザ・ニュースペーパーのコントで大いに笑った後、小出裕章さんが講演。

はじめて生で聴いた小出裕章さんのお話が一番心に残りました。

「フクシマを忘れない。これはすべてにつながっている課題です。
炉心がどこにあるのか、どうなっているのかわからない。
事故はいまもつづいています。
この2年半、ただひたすら水を入れて冷やすことしかできなかった。
水を入れれば汚染水が増えるだけ。ずっと海に流れていたのです。

責任という言葉は甘く、これは犯罪です。
「日本人は1年に1ミリシーベルト以上の被ばくをしてはいけない。放射線管理区域から1㎡当たり4万ベクレルを越えたものは持ち出してはいけない」という法律も反故にされました。
政府が最大の犯罪者です。

「原子力を持つ」という決定権を持たない子どもたちにゴミを残すのですから、これは未来犯罪です。
他者を犠牲にする原子力、原子力的なものをなくなさければなりません」

ここで小出さんは、1960年に日比谷公会堂のステージで起きた浅沼稲次郎の暗殺シーンを流し、「自由と平和を手に入れるのは本当に難しい」とつづけました。

「私たちひとりひとりがしっかりしないと、平和は守れません。
とても大変なことを、私たちは請け負わなければならないのです。
一国のための平和主義ではなく、世界全体を平和にするために、軍隊をもたない。
(メディアにだまされるのはしかたないにしても)、だまされたからといって、無罪とはいえません。
だまされた責任があります。
子どもたちにいずれ、『そのとき、お前たちはどう生きたか?』と問われることになるでしょう。
ただ一度の命なのですから、歴史と事実をしっかり見つめ、自分の思いに忠実に生きていきます」

この後、呼びかけ人の澤地久枝さんが、「原発をやめるしかないです。停電といっていた人たちは知らん顔をしています。どこが停電していますか? アベノミクスといいますが、生活をあずかる人はよくわかっている。
物価は上がり、生活に行き詰っています」、内橋克人さんが、「フクシマから学ぼうとしない政治家を国会に送ってはならない。現実は逆。日本人は何を考えているのか。3年後また政治家を選ぶ機会がある。何をすべきか。飴と鞭の手法を見破らなければならない。新しい原発神話が作られている」と訴えました。

閉会のあいさつは落合恵子さん。

「この会場を一歩出た銀座の街で、ショッピングしている人をつかまえて、離さないで、『話を聞け』と言うしかありません。
スキャンダルがないかぎり、政治は変わりません。でも、週刊誌はあちら側を守り、こちら側をたたくばかり。
まるで原発事故がなかったかのような政治をやって生きている。
この会場こにいる人はわかっていても、「知らなかった」とまだ思っている人がいます。
はじめの一歩から声をかけつづけなければならない。
ここにいない人たちにこそ、声をかけたい。ノックしつづけたい。決してあきらめないで」

集会が終了後、首相官邸前のデモに合流。

 

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