福島朝鮮初中級学校の除染作業を見学しました

6月26日(日)の朝7時から、郡山市にある福島朝鮮初中級学校で、2回目の放射線除染作業が行われた。
あいにくの雨の中、父兄8人を含む福島県の在日韓国・朝鮮人、関東などからの応援も加え、30人以上が活動に参加した。
朝鮮学校の校庭の放射線量は最高時で毎時0.9マイクロシーベルトほどで、国の基準の毎時1マイクロシーベルトに達しておらず、財政補助の対象外だ。現在、運動場の線量は毎時0.7~0.8マイクロシーベルトだが、校舎横の溝や校庭の遊び場は毎時2マイクロシーベルト以上と数値は高い。

運動場奥の一帯は草が生い茂り、ホットスポットになっている。ここは集中的に、草を刈り、土を削る作業が行われていた。雨降りの中、土を掘り起こすのは、作業する側にも被ばくの危険性がないとはいえない。「もっと重装備してくればよかった」と、この場に近づくのをややためらってしまう。

1時間半ほどの作業で、汚染土の入った袋が50個以上も積み上げられた。この汚染物の処理にも頭を悩ませなければならない。

福島原発以降、学校では毎日線量を測定している。「ここは0.5マイクロシーベルト。この辺は0.08マイクロシーベルト。寮や校舎の中は大丈夫ですが、遊び場とか、体育館の前とかが高いです」
測定器は文科省から学校用に配布されたが、当初、朝鮮学校には配られなかった。「教育委員会に連絡したら、4台送ってきました。連絡がこないの、なにをするにもね。こちらが言ったら、借りられるし、もらえるけど」と父兄のひとりは言う。

2.4マイクロシーベルトあった校舎横の溝は、泥を取り除き、水で洗い流したところ、0.39マイクロシーベルトまで数値が下がった。

学校の常任理事会副会長のリ・ハンスさんに学校の寮を案内していただいた。「ここは建物が頑丈だといわれていたんですよ」 福島朝鮮学校は、3月13日から月末まで避難所として使われた。福島県から依頼があり、喜んで受けたそうだ。最高で36名がここで生活し、そのうちの18名は日本人。全国の在日の仲間が支援物資をたくさん送ってきたため、郡山北工業高校に避難されていた人たちや、南相馬市に届けたという。

校舎もさほど壊れていないのだが、15人の全生徒は、5月中旬から新潟朝鮮初中級学校で合同授業を行っている。放射能による子どもへの影響を心配しての対策だ。「学校の自主避難は、父兄で話し合って決めました。娘を持つ若いお父さんたちが特に、『気になって、いてもたってもいられない』となって。とりあえず2週間ということで、新潟へ送りました」とリさん。
学校の規模や安全性、距離などを考慮して、いくつかの候補のなかから、新潟を選んだ。両校は数年前から交流があり、生徒同士も顔見知りだ。
郡山市から新潟市までは高速バスで2~3時間。小学4年生までは毎週、それより高学年は隔週の土曜日に福島県に戻り、翌日の日曜日に新潟へ向う。交通費は今のところ大部分を自費でまかなっている。
「土曜の夕方5時に帰ってきて、次の日の午後2時半に出るんですよ。子どもも休まらないじゃないですか。うちの中1の子どもは、先々週かな、『いつまで行かなきゃならないの?』と帰るときにちょっと涙ぐんで。かわいそうだなぁ、と思いますね」
中学2年の息子と小学5年の娘を持つ父親は、「親元を離れるのは寂しいはず。月曜日に学校がはじまると平気のようですが、新潟に発つとき、子どもたちが一番悲しみます」と語った。

子どもたちが帰ってくる日にあわせて、父兄会を開く。この日の午後は、「2学期をどうするか」が話し合われた。
福島朝鮮学校は、今年40周年を迎える。秋には記念イベントを開催する予定だった。その実行委員長でもあるリさんは、「10月23日が本イベントですが、学生がいなかったら、できません。来年に延期するかもしれません」と残念がる。

学校の敷地面積は7,700㎡(8,600坪)。運動場の土を削るとなると、費用は160万円ほどかかるそうだ。
在日本朝鮮総連合会福島県本部常任委員会のチャン・テホ委員長は、「1マイクロシーベルト以内も予算化されれば、この運動場もやっていただけるのかな、と。ただ、うちは各種学校扱いですから、対象になるのか、という心配も少ししています。そういうことはないと祈ってますけどね」と心の内を明かす。
高校無償化で朝鮮学校がはずされた現実があり、今回も安心はしてはいないようだ。
「生徒が新潟に行っている点も口実にならなければいい」とも言う。朝鮮学校だけが新潟に避難して、それで除去してくれというのは虫が良すぎるのではないか。「そういう風潮にならなければ」と危惧する。「原発事故は、自然災害ではなく、人的なものですからね」とチャンさん。「仮にそうなれば」の話として、「人災による放射能汚染に対して、『外国人だから』というのは、問題のすり替えであって、責任回避だと思います。この周辺にある小学校も1マイクロシーベルトに達しないため、公的資金での運動場除染を行っていません。人災の同じ被害を受けているのであれば、日本の学校と朝鮮学校を平等に扱うのが当前でしょう。教育の場ですから、専修学校だとか、各種学校だとか、外国人学校だとかで区別するのは、差別につながるのではないでしょうか」と述べ、「まあ、そうならないと思いますけど」と笑った。

6月9日に体育館横に植えたヒマワリが芽を出した。26日も50袋のヒマワリの種を用意し、校庭に植えた。

 

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