フランス経済誌の記事「原発の選択」の抄訳

フランスのオルタナティブ経済雑誌Alternatives Economiquesの4月号のPhilippe Frémeaux発行人コラムより。

絶対的なリスク
日本を直撃した原発事故は、フランスが選択してきた原子力政策の正当性の議論を再浮上させている。フランスの原発が福島原発より安全であろうとも、日本と同じ時期に、フランスでも、エネルギー生産の手段が提起する本質的な問題が投げかけられている。

原子力エネルギーの問題点は、リスクが伴うという固有の性質にある。この場合、たとえ小さくても、取り返しのつかない種類の事故を生み出す可能性がある点だ。思い出してみよう。プルトニウムが放射線を出さなくなるまでには何十億年もかかる。すなわち、原子力の危険性は、その絶対的な性質により、技術者や専門家にとっては貴重な確率計算を、無意味なものにしてしまうのだ。我々がこの文章を書いている今でさえ、福島原発事故がもたらす影響を完全に測定することはできない。しかし、ひとつだけ確かなことがある。1986年のチェルノブイリ事故より最悪な爆発が我々をかすめたという事実だ。爆発による汚染は、3500万人が暮らす東京の人家集中地帯まで及んだかもしれない。

脱もしくは反原発の決断は、技術的選択というより、政治的選択、社会的選択、倫理的選択であると見定めることができる。我々の同胞たち、そして将来の世代に対する人間としての責任が問われているのだ。それはまたライフスタイルの選択でもある。人類を途方もないリスクへと向わせている、つねにプラスという名目の経済システムの究極目的に対する問いである。

原子力はフランスのエネルギー生産のなかで大きな比重を占めているため、すぐに全面的な方向転換するのは不可能だ。そして、事態がどうなろうとも、放射性廃棄物の管理、老朽化した施設の段階的な解体といった残骸を責任持って引き受けなければならない。だからといって、脱原発は不可能ではない。脱原発は、エネルギー経済における並々ならぬ努力が前提とされる。さまざまな再生エネルギーへの依存を大幅に高め、よりフレキシブルで地方分権化したエネルギー提供に対応するエネルギー網と消費スタイルの再編成が求められるだろう。一方で、再生エネルギー生産の収益を上げるためには電気料金が高くなり、省エネ製品開発のための設備投資を促し、快適な生活をある程度維持しながらも消費者行動を変化させなければならないだろう。結果的には、再生エネルギーの依存が、あらたな雇用で利益を出すことになるだろう。ドイツの例にとっても、風力および光起電力の開発は、すでに35万人以上の雇用を生み出している。

原発の選択は、50年以上もの間、技術者の確信、産業界の利益、国家権力の意向によってなされてきた。どのような議論も禁じられてはいない。今こそ、民主主義に立ち戻るときである。

 

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