フクシマ後の気候とエネルギーの方程式

フランスのネット・マガジンTera-Ecoに掲載された記事(省略、意訳あり)です。
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福島原発事故以来、関連記事が毎回掲載されています。

フクシマ後の気候とエネルギーの方程式

L’équation climat-énergie après Fukushima - Terra eco
La catastrophe nucléaire de Fukushima repose la question de la place du nucléaire dans les politiques énergétiques du monde entier. Elle va (...)

福島原発事故は、世界中の国々のエネルギー政策における原子力発電に疑問を投げかけた。原発事故は、気候とエネルギーの方程式の解答を、円積法のように複雑にしてしまった。しかし、この事故はまた、深淵に向って盲目的に突っ走っていた人類にとって、今必要とされている気づきを与えてくれたともいえる。

ヨーロッパおよびフランスのエネルギー計画に必要な大改訂

私たちはまだ、福島原発事故の規模がわかっていない。スリーマイル島原発事故より深刻だといわれている。この原発施設は、非常に高レベルの技術を有し、地震地帯として明白な日本に位置している。その事実が、原子力分野への信頼を崩した。

信頼喪失により、「この事故は地震地帯と関連しており、福島の原子炉は老朽化していた」という常識的な議論は聞くに耐えないものになるだろう。政府がそれを知っていながらそのままにしていたのであっても、それに気づいていなかったのであっても。どちらのケースにしろ、このような重大なリスクを、誰が故意に、もしくは無意識に隠蔽しているのか? その疑惑は、原子力産業の情報開示が一流とは考えられないだけにいっそう深まる。

原子力運営に対する疑問は、より具体的で鋭さがともなう。どのような措置が信頼に値するのか? 東京電力がそうであるかのように、民営の事業主は安全確保やメンテナンスへの予算を抑えるだろうとつねに疑うべきか? 政府の安全委員会は、必要なときには指令と手厚い補助を強制する重みを持ちうるのか? 非常事態の際に、事業主と政府の関係がどのよう組織されるのか? つまり、ヨーロッパで全面的に行われているエネルギー市場の自由化が、主要な問題点なのである。この事故の不幸中の幸いともいえるのは、エネルギー政策を支配している新自由主義のイデオロギーが「モンスター(怪獣)」(フランスのエネルギー組織)の根源であり、性急に問うべき課題を再認識できたことだ。

原子力の減速

福島原発事故につながった第一の要因は、「低コスト・万全ではない安全性」の実施計画にあったはずだ。不十分な安全対策は想像できる。原子力発電所の封鎖を求めるのは不可能ではない。

封鎖は、信頼喪失という社会的許容の理由からだけでなく、経済的収益性と巨額な出費からもいえる。福島原発事故の経済的影響を見積もるのは容易ではない。津波、地震、原発事故を総合した影響は、日本の国内総生産に及び、日本経済は数ヶ月間厳しい状況を強いられるだろう。

人々の暮らしや経済政策において、潜在的リスクが高いのが明らかな原発政策に関し、銀行との契約を結ぶ委員会、そして新しい原発施設を着工中の政府のなかの誰が、決断を下すのだろうか。

原子力競争は大幅に減少するだろう。

目を開く

すべての国が同じ方法で問題を解決するわけではないが(原発による電力の依存度はゼロから、フランスのように75%と異なる)、福島原発事故が、原発への依存を減少させる方向に動くのはほぼ間違いないだろう。

私たちは、根本的な選択に直面している

1)火力とガスの発電で原子力の分を補う。火力とガスは現在でも低予算で電力を生産している。しかし、この選択がもたらす結果は明確である。二酸化炭素の排出による温暖化の悪化だ。

2)方向転換し、エネルギーの消費を大きく減らし、再生可能エネルギーで原子力の分を補う。
まず、エネルギーの消費減少を強制的に行う。第一に節電。エネルギーの浪費は、幸せにつながらない。私たちはそれを知っている。その一方で、電力消費は経済活動や雇用活動をもたらす。マーケティング関係者は広告でいっぱいにし、永久に欲望を喚起させる。私たちはそうした生活を解毒しなければならないが、それは簡単ではない。

さらに、投資を増やさなければならない。住居の断熱材は、100㎡当たり約30,000€する。3,000万の住居の改築を早く実現させるには相当な費用である。実際のエネルギー料金としての一世帯の収益性は明らかではない。しかし、すべての分野で、エネルギー効果を改善しなければならないだろう。

再生可能エネルギーに基づく多くの希望もある。風力や太陽エネルギーは、世界で250TWH(1.5%)だが、非常に急速に増加している(ここ10年で年30%の伸び)。将来の増加スピードに注目したい。年10%で増加したら、20年後には250から1,700TWHになる。20%で増加したら、2030年には10,000TWH近くに達する。他の再生可能エネルギーも多かれ少なかれ増加するだろう。

再生可能エネルギーの効果的な導入を速めるには、さまざまな要因に関係する。企業を支援する市民の努力、需要に応える十分な材料の入手とそれによる低価格化などだ。

気づきへのアピール

気づきは大きな挑戦である。この賭けは不可欠である。危機と暴力にあふれた世界を持続させるのをやめ、より人間的な世界を創るための「計画」に挑む激しさをともなっている。

それは簡単なことではない。

私たちは、これまで拒否してきた束縛を受け入れなければならないだろう。エネルギー料金はますます高くなる。同時に、消費を減らし、リバウンド効果の回避へと向わされる。

収入の多くを投資し、消費を減らす。それは社会政策なしには不可能であり、この仮定のもとでは、まったく困難である。

資源とエネルギーの消費を減少させる活動へと、経済の変化が強いられ、加速するだろう。それがなされるとき、必ず抵抗や強い疑問の声が上がるだろう。これまでのエネルギー生産や配分における「消費者」分野での雇用が失われ、修繕、リサイクル、メンテナンス、建築、農業といった分野で雇用が生れる。これらは若者にあまり人気がないのだが!

福島原発と中東の危機がもたらした強烈な衝撃が、私たちを目覚めさせ、前例のない挑戦を受け入れさせ、挑戦する気にさせることを願う。

 

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