幸せな愛は存在しないのか 親子関係の書籍紹介

フランスで話題になった親子関係の本です。

『N’y a-t-il pas d’amour heureux?
Common les liens père-fille et mère-fils conditionnent nos amours.』

タイトルの意味は、「幸せな愛は存在しないのか? 父と娘、母と息子の関係が、どのように愛を条件づけるか」。

著者のギー・コルノー(Guy Corneau)氏は、カナダ・ケベック出身のユングの分析家。カップルや家族関係などについて、ケベックで教鞭をとっている他、フランスなど世界各国で講演を行っています。1989年にモントリオールで発行した「Père manquant, fils manqué」はベストセラーになり、8ケ国語に翻訳されました(邦訳『男になれない息子たち 』)。

大人になってからの男女の関係に問題が起きるのは、子供時代の親との関係が大きく影響する。

そうした考えから、前半は、娘のファザコン、息子のマザコンがどのように生まれ、それによって、子供が成長する過程でどのような弊害があるかについて書かれています。

後半は、夫婦、カップルの関係を続けるためのアドバイス。

特に、父親の存在の重要性について説明していて、日本で売れている『父性の復権』といい、世界各国でこの父親不在は問題になっているようです。

グリム童話や、自分の患者を例にあげたりしながら、比較的わかりやすく分析しています。

「母親と息子の性的近親相姦が多い」「夫は妻以外に愛人を持つのは一般的」という日本についてのコメントもありますが、この例の出し方はちょっと誤解をまねくような気がしました。

親子の理想的な関係が、子供の自己アイデンティティを形成し、それぞれ違うお互いの人格を尊重することで、男と女の恋愛関係は保たれる。カップルの関係についてより、親子関係についての分析は、日本人も考えさせられると思います。

この本を読んで、神戸殺人事件の犯人(中学生)の心理について考えさせられました。

アイデンティティがあいまいな日本社会、このまま放っておくと恐ろしいことになりそうです。

内容

・女性は独占できる男性を捜し、父親的なものを求める。男性は女性の夢を実現できない
ことに罪の意識を感じる。
・女性はパートナーを理想の王子様にするため、あらゆる努力をするが、男性はそれをプ
レッシャーに感じる。子供の頃、母親に期待をかけられた時の気持ちが甦ってしまう。

・女性は自分が男性にかける夢の重さに気づかず、男性はプライドの重さに気づかない。二人はお互いにお互いが気づかないことに気づかず、女性は待ち続け、男性は逃げる。

・これまでの社会は男性本位であり、男と女がお互い尊敬し合うというカップルのモデルが存在していない。女性の力が強くなっても、家父長制度は残っている。

・アイデンティティには、2つの働きがある。愛を見つけるために他人に近づくことと、お互いの違いを認めるために距離をおくこと。

・誕生と同時にアイデンティティは生まれるが、肉体が男か女のどちらかであっても、アイデンティティの性は、生まれつきのものではない。

・子供は自分と同じ性の親に似る。もし、自分と同じ性の親が不在の場合、自分が男もし
くは女であることに嫌悪する傾向にある。

・無口な父親を持った娘は、父に愛されていないと感じ、ファザコンになる。

・父親不在で母親に育てられた息子は、女性嫌い、女性を愛せない男性になる。

・マザコン、ファザコンの男女が関係をもとうとすると、同じことを繰り返す。

・父親不在の環境で育ったファザコンの女性は、女性を愛せないマザコンの男性と生活を始めるが、女性の甘い夢は破れ、相手に失望し、子供に願いをこめて教育熱心になる。そのような母親に育てられた息子は、母親に捕らわれたというネガティブなマザコンの意識を発達させ、すべての女性を恐れ、パートナーとなった女性や娘を無視する。その娘は、ファザコンを発達させ、女性を愛するのが恐い男性と結婚する。

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