マリ人が語った2013年のフランスのマリ共和国軍事介入

2013年1月にフランスのオランド大統領(当時)がマリへの軍事介入を決断した。

フランスによるマリの軍事攻撃について、今はヨーロッパに住んでいるマリ出身の知り合いに、家族の安否を尋ねるとともに、状況をメールで聞いてみた。

私もてっきり「フランスの帝国主義的暴挙」と思っていたのだが、彼からは意外にも、「多くのマリ人がフランスの介入に救われ、喜んでいる」といった答えが返ってきた。

そこで、「日本では、『資源や利権が目的としたフランスの新植民地的行動』と批判の声が上がっている。あなたのコメントをブログで紹介してもいいか?」と尋ねたところ、日本での批判には触れず、「名前を載せないならいいよ」と快諾を得た。
彼は次のように述べている。

この戦争がどのようにはじまったかはわかっているが、どう決着するかはわからない。
マリにいる家族と話したところ、圧倒的多数のマリ人は、フランスがイスラム過激派に対して攻撃する決断をしたことに救われた思いで、喜んでいる。
残念なことに、マリの政府と軍隊は、この脅威の措置においてまったく無能だ。
フランスの介入がなければ、10日以内にマリの首都がイスラム過激派に占領されただろう。
マリのイスラム教徒は非常に穏健だが、イスラム過激派のリーダーは外国人(主にアルジェリア人)で、アフガニスタンのようなイスラム社会をマリで作ろうとしている。
それゆえ、困難な状況ではあるが、マリの人たちは希望に満ちている。
戦争が終結したら、マリが主導してチャンスや雇用の機会が作り出されるだろう(特にマリ北部で)。
みじめな貧困があるかぎり、暴動や問題が再び表面化するだろうから。

フランスの新植民地的行動、というのも、ひとつの側面としてあるのだと思う。
イスラム過激派を生み出した根本的原因は、植民地化したフランスにもあり、軍事介入で問題が解決するはずはない。
しかし、現実に脅威にさらされているマリの人々がいたわけで、植民地化を批判するだけでは片付けられない複雑な状況があるのも確かだ。

アフリカや中東に関して日本語で読める情報はあまりにも少なく、しかも、フランス語圏の情報となると、さらに限られてくる。
そうしたなかで、的確な判断や分析、批判をするのは、非常に難しい。

マリの軍事介入が引き金となって、アルジェリアで人質事件が起きた。
犠牲になった日本人は気の毒だ。
その一方で、アルジェリアにおける日本企業のあり方に、強い違和感を抱いた。
液化ガスの事業は、本当にアルジェリアの人たちのためになっているのだろうか?
アルジェリアのためなら、なぜアルジェリアの企業が主導して事業を行わないのだろうか?
儲けているのは、日本企業じゃないのだろうか?
犠牲者のなかには派遣社員や下請けの方がいたが、こうした雇用システムは正当なのだろうか?
こうした日本の行いは、「新植民地主義的」とは言わないのだろうか?

アルジェリアだけでなく、アフリカには多くの日本企業が進出している。
“開発”の名のもとに。
それが、本当にその国の人たちの生活を豊かにしている“開発”なのだろうか。

宗主国ではない先進国の日本に大きな期待をかけているアフリカ人は少なくない。
マリの知人もそのひとりだ。
「日本に来るのはいいけど、放射能汚染に気をつけたほうがいいよ」とメールしたら、次のような返事をよこした。

日本は民主主義の国だから、もし本当に危険だったら、政府は放射能汚染を隠し立てできないだろう。
賢い日本の人たちは、それを告発するに違いない。

(2013年1月26日) 

 

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