活断層の変動履歴から地震を予測 渡辺満久さん

『ビッグイシュー日本版』2013年3月1日号に掲載された記事です。

3.11・東北沿岸の巨大活断層が動いた

阪神・淡路大震災以降、急速に知られるようになった”活断層”。
活断層を調べることによって、何がわかるのだろうか?
大飯原発の活断層調査専門チームのメンバーでもある渡辺満久さん(東洋大学教授)に話を聞いた。

原発の再稼動をめぐる調査で、最近頻繁に見聞きするようになった“活断層”という言葉。活断層とは、数十万年前以降の比較的最近動いた断層で、近い将来にも動く可能性のある断層のこと。地震の発生する場所や規模を予測するのに、重要な情報源となっている。

「断層が動くと、地面の軟らかい断層が盛り上がったり、崖ができます。崖や坂を調査して、それができたのは川の浸食なのか、それとも断層の活動によるものなのかを判断します」と、渡辺満久さんは話す。地震学者にとって活断層は一つの状況証拠にすぎないが、「どこに活断層があり、どのように動いてきたかという変動履歴を扱うのは、変動地形学研究者なんです」

活断層は古い断層と違い地表に起伏として痕跡が残っているので、航空写真や地形図で「ここが怪しい」という箇所を確認し、活断層と予測できる地点で数メートル程度の溝(トレンチ)を掘って壁面の地層についての綿密な調査を行う。

最近は陸上と同じ方法で、海底の活断層が認定できるようになってきた。海底の活断層の位置や規模がわかれば、より地震の起こる場所や程度が予測可能になるのではないか。こうした期待も高まっている。

「忸怩たる思いがあるのです。3.11の前に、東北の沿岸にひとつづきの巨大断層があるのがわかって、驚いていたんですね。今回、その断層が動いてしまいました」

従来、海底活断層はプレート境界の地震とは関係ないと考えられがちだったが、そうではないとわかってきたのだ。津波の高さについても、理論的なシミュレーションだけでなく、海底活断層がどのように動くのかを計算したほうが、実際の高さに近い数値が出るという。

ずれの被害は防げない
立て直し必要な六ヶ所再処理工場

調査や研究は理系なのにもかかわらず、地形学は日本では地理学に入り、専門家は人文科系学部に所属している。

「文系に、活断層の専門家がいるとは思わないですよね。ですから、これまで活断層や地震の専門委員会や国の審査委員会では地形学ははずされ、ほとんど地震学と地質学の専門家で構成されていました」

こうした理由もあり、原発立地のずさんな活断層評価がまかり通ってきたという。日本の陸上には、グループにして200ぐらいの活断層がある。それらが集中する地域のひとつが、美浜やもんじゅなどが立ち並ぶ一帯だ。渡辺さんは反原発の立場には立っていない。しかし、「問題は、活断層が最も基本的な情報なのに、『ここには活断層がない』とごまかしてきたり、本来の長さを短縮してデータを勝手に書き換えてきたことです」と言う。

渡辺さんらが原発施設の再調査をした結果、現存する活断層の存在が相次いで明るみに出てきた。

「活断層の観点からだけですが、大丈夫なのは玄海原発のみです。そのほかはすべて、たとえば40キロの活断層を8キロに値切って地震規模を小さく見積もったり、活断層を無視しています」

「地面がずれる」場所にある原発は再稼動してはいけない、と渡辺さんは指摘する。

「活断層が動いて地震が起きると、地盤の悪いところの建物は崩壊し、大変な被害になります。これは、地震規模を適切に想定し、耐震性を高めれば、揺れによる被害は軽減できます。活断層によるもうひとつの被害は、土地がずれること。それをみんな忘れているのです」

ずれの被害は防ぎようがなく、致命的だ。六ヶ所再処理工場は、活断層でしなり、曲がった土地の上に建てられているという。

「原子力を維持したいのであれば、核燃料リサイクルの基地である六ヶ所再処理工場を建てなおさなければなりません。この施設の耐震補強は無理なので、場所を変えるしかありません。巨額を費やさなければならないでしょう」

六ヶ所で事故が起きたら、日本のみならず、北半球が放射能で汚染される。

「原発が必要だというのはわかりますが、だからといって危険なところに建設していいというのはおかしいじゃないですか。疑わしきは止めるべきですよ。今の状況では再稼働は容認できません。すべての施設の安全性を新調に検討すべきだと思います。

 

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