パリの店:環境保護NGOの店 Robin des Bois

『専門店』「世界の専門店拝見 こんな店・あんな店」1999年11月に掲載された記事です。

エコロジー、自然志向のショップはパリでもここ数年急増している。この動きに敏感なのは、ファッションにもうるさい知的スノッブたち。パリでもっともファッショナブルなエリア、マレ地区にある「ロバン・デ・ボア」は、独創的な商品で、若者に人気のエコロジーショップ。スタッフのアレキサンドラ・エデさんにショップについて語ってもらった。

-どのようにこの店が誕生したのですか?

この店の母体は、「人類および環境保護NGOロバン・デ・ボワ」です。グリーンピースのメンバーだった一人が、15年前にこの団体を創設しました。非営利団体なので、資金調達が必要となり、10年前にこの店がオープンしたのです。ここの売り上げは、地方職人の援助、カメルーンのピグミー調査などの出張費、また、団体の環境保護活動の最新情報を伝える新聞フレッシュの発行資金になっています。もちろん、この店の商品を通して、私たちの活動、環境問題について知ってもらいたいという目的もあります。

-フランスにはこのような店が他にもあるのでしょうか?

環境をテーマにしたショップはたくさん存在していますが、このような団体がやっているところはほとんどありません。

-どのようなお客さんがここにやって来ますか?

あらゆるタイプの人が来ますね。とてもおしゃれな人から、好奇心旺盛な人まで。ここがどんな店なのか興味のある人や、環境問題についての話をするために来る人もいます。

-日本語の表示もいくつかありますね。

日本人もよく来ますよ。手作りの温かさ、エコロジー商品に興味があるようです。団体としては、日本と核問題の件で関係が深いのです。また、ハンコに使う象牙を植物象牙で代用するという話も聞きました。私個人としては、あまり日本について詳しくないのですが、日本人も環境保護に熱心になってきたのではないでしょうか。

-環境問題といった硬さを感じさせない、ユニークでおしゃれなものが多いですね。

最大目標である核全滅運動をはじめ、公害問題、熱帯樹林伐採反対、伝統的漁業活動の保護など、団体はあらゆる環境問題に取り組んでいるのですが、ショップで扱うものは、いつも新しさを意識しています。モダンで個性的なもの、他の店では絶対見つけることのできない、オリジナリティ豊かなものばかりでしょう?

-場所柄、流行の先端であることが必要なのでは…。

そうですね。この地区はパリのなかでもおしゃれに敏感な人が多いので。でも、サンジェルマン・デ・プレやフォーブル・サントノレとは違う雰囲気があります。この周辺の人々はとてもフレンドリーです。“村”のような、リラックスしたムードが漂っているのです。近所の人はみんな顔見知りで、このような関係は、店にとってとても大切なことなんです。ですから、店の移動は全く考えていません。

-ペーパー類からバッグ、化粧品まで、いろいろありますね。

現在50種類以上の商品はあるでしょうか。扱っている商品はほとんどがフランス国内で制作され、すべて手作り。大量生産はしていないものばかりです。ずっと昔から受け継がれている伝統を保護するため、各地の職人から商品を仕入れています。外国客が店を訪れ、自分の作品を売ってほしいと依頼されることもありますよ。

-おすすめ商品は何ですか?

この店で最も大切な商品は、ホホバオイルと植物象牙です。ホホバオイルは、メキシコの砂漠地帯に生息する灌木の実から抽出されるオイルで、化粧品の原料として知られています。うちの店では、純粋なホホバオイルの他に、液体ソープ、シャンプーなどを製造、販売しています。ソープは石けんの代わりにコプラというヤシの実の胚乳を乾燥させたものを使い、これにホホバオイルとエッセンシャルオイルを加えています。固形石けんも同じ原料です。100%ナチュラルなので、肌が敏感な人でも大丈夫。ホホバオイル商品は、この店で一番売れています。

-この木のボールのようなものは何ですか?

これが植物象牙の元となるものです。エクアドル、パナマ、アフリカなどで取れるヤシの実なのですが、これを磨くと白くツヤツヤの、本物そっくりの象牙になるんです。植物象牙は、50年代以前にボタンの素材として使用されていました。プラスチックが登場して以来、忘れ去られていましたが、環境問題が取りざたされるようになって、再び脚光を浴びることになったのです。デザイナーやアーティストたちは、植物象牙のボタンやアクセサリーの価値を見直しはじめています。ファッションが自然志向である現在、植物象牙は彼らのエスプリを満足させるもののようです。

-その他にはどのようなものがありますか?

面白いものでは、ブルターニュ地方の小さな缶詰工場が製造しているオイルサーディンがあります。コンカルノーという港町の最後の缶詰工場で、昔ながらの漁法を続けています。新鮮な魚を缶に詰めるのも、すべて手作業で行われています。缶の裏には、魚の解説が書いてあります。この店で積極的にPRすることで、工場維持の援助になっています。

-紙を使った商品も多いですね。

再生紙、もしくは回収紙を使った商品です。30年代から50年代の古い紙は、品質も良く、美しいものが多いのです。これらの紙を再利用する意味で、これらの商品が生まれました。封筒のシリーズは、評判がいい商品です。古い楽譜、海洋地図、60年代のフランスの漫画を使っています。手作りで、もちろん郵送も可能です。この手帳もとてもユニークでしょう?

-コーヒーフィルター?

そうなんです。フランスのアーティストが制作しているものなんですが、使い終わったフィルターを再利用したものです。メモ用紙に使ったり、デッサンしたり。とてもオリジナリティ豊かですよね。さらに、再生紙のノート、画用紙、レターセットなどもそろっています。

-楽しい再利用ばかり。

ええ。このバッグも人気の商品。オープン当時から一緒に仕事をしているデザイナーの作品です。軍隊用毛布を利用したバッグなんです。状態のいいものを選び、きれいに洗った毛布が、このような大小さまざまなバッグに変身します。取っ手の部分は、フランスのベレー帽の裏のテープを利用しています。この素材は、昨年からファッション業界で注目されているものです。うちでは10年前から売っているので、もっともアバンギャルドなショップといえるかもしれませんね。

Robin des bois

*店は現在ありません。

 

世界の専門店拝見 こんな店・あんな店 パリ
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