子どもの楽園はどこに フランスと日本の子育て

『Boulevard』1995年7/8月号に掲載された記事です。

子どもはどの国で生まれるのが幸せか? 本人には選択の余地がないわりに、その後の人生に多少なりとも影響する問題といえる。

以前、妊娠した友人が興味深い手紙を送ってきたことがある。日本では妊婦がお産について学ぶ教室が開かれており、そこに通う“将来の母親”たちは、えらく気合が入っているという。お腹の中にいるうちから、わが子の人生設計を立ててしまっている親がいるというのだ。子どもが誕生したら、どこの幼稚園、そしてどこの小学校、と、特に東京など首都圏に住む親は忙しい。子どもの意思など考える余裕もない人もいるらしい。

子どものほうも、塾やおけいこ事で毎日大変。こちらもまた、自分が何をしたいのか考える時間などなさそうだ。この世に生まれ落ちた瞬間から受験戦争に巻き込まれてしまうのは、日本人に生まれた宿命なのだろうか。

それでは、フランスはどうだろう。子どもを持ったからといって、“母”としての役割だけを果たす女性は少ない。あくまで“女”であることを忘れないフランス女性は、子どもの人生を独り占めしない。父親もしかり。ただし、男、女を捨てないということは、ヘタをすれば子どもを犠牲にする場合もあるのだが…。

受験で暗記したことは、忘れるのも早い。日本人は、考えること、意見を述べることに慣れていないために、外国生活で苦労した人も多いはずだ。

まだ経験がないので大きなことは言えないが、未来の子供のために、何が彼らにとって幸せかを考えたいと思う。

パリの美術館、博物館では、親子連れの家族をよく見かける。幼児期からアートに触れる機会が多い彼らは幸せだ。緑が豊富で自然にも恵まれている。こうした環境が、大人にも子どもにも心の余裕を与えているのだろう。

子育てはとてもクリエイティブな仕事だと思う。まずは我々大人が“センス”を磨かなければならないのかもしれない。

 

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