出会いの場・日欧の違い

「結婚支援事業に、4割の市町村が否定的」との記事がありました。
この事業に4000万円も費やしている自治体もあるといいます。

フランス婚活事業:日本の自治体対策とは大違い
日本の少子化対策は、時代にマッチしているのでしょうか? 「結婚支援事業(この名称自体、怖いものがある…)に、4割の市町村が否定的」とのこと(朝日新聞)。この事業に4000万円も費やしている自治体もあるとか。 役所が主催するお見合...

日本でも出会いビジネスが盛況らしいのですが、同じ支援事業でも、フランスと日本では対照的です。

出会いビジネス日仏比較
2005年4月16日の朝日新聞で「出会いビジネス」の記事を見つけたのですが、たまたまフランスの資料があったので、比較してみました。 フランスでも独身者が社会問題化し、「出会いがない」と嘆く人が増加しています。 そのため、出会いビジネ...

日本は、集団見合いやデータのマッチングが多いようですが、フランスの場合は、独身者たちが自ら出会いの機会を作っています。

恋愛先進国フランスのla la laナンパ事情
自分から声をかけなければ、恋がスタートしない。まずは誘う。それがフランス人の恋愛の第一段階だ。しかし、それができない人も増えている。そこでインターネットを利用した出会いビジネスが登場。筆談パーティや、出会い応援ガイドも。2005年の記事。

その差は、両国の出会い方、交際の進め方の違いからきているのでしょう。

現代の日本の出会いの場としては、「見合い」「友だち・きょうだいを通じて」「学校で」「職場や仕事で」「アルバイトで」をあわせると8割ぐらいになります。

朝日新聞(2005年4月16日)の記事「結婚年次別、夫婦の出会いのきっかけ構成比(日本労働研究雑誌05年1月号から)」から引用しますが、54年以前(これが最も古い)では、「見合い結婚」が約6割。00年以降、「見合い」は10%以下と減少し、「友だち・兄弟を通じて」が30%、「学校」10%、「職場や仕事(アルバイト含む)」40%、「街中や旅先」5%、「サークル・クラブ・習い事」3%、「結婚相談所」2%ほど、その他が約7%といった結果でした。

「職場」が多いのですが、実際には「仕事場では出会いがない」という声も聞かれます。
職場結婚は、90~94年をピークに年々減る傾向にあるので、職場で見つけられない人が増えているのは筋が通ります。
人とのつながりが疎遠になっている点も、出会いの場を狭める要因になっています。

日本の場合、自分の生活圏内に属し、身元がある程度わかる相手を選ぶ傾向にあるようです。
狭い範囲での出会いが中心ともいえます。

一方、フランスでは街中で声をかけるといった突発的な出会いが大きな割合を占めます。リスクも高くなりますが、許容範囲は広がるので、出会いのチャンスは多くなります。

実際、日本の配偶者選択の過程を調査した結果でも、日本の特長として、「交際相手が少なく、デート期間が短い」となったそうです。

古本屋で買った「日本の社会学4 現代家族」(東京大学出版会)のなかの論文、「配偶者選択」(望月嵩氏)にそのような記述がありました。

この調査は1973年に行われ、調査対象は、川崎保健所で実施していた「婚前学級」の受講者。昔、婚約しているカップル向けに、「健全で明るい家庭」を築いてもらうのを目的に、「婚前学級」を開催されていたそうです。

それ自体、ちょっと怖い気もしますが。

論文を簡単に引用すると、「1960年代に入ると見合いから恋愛結婚へ移行。……1975年に調査した18~25歳の男女の95%前後がデートの経験がある。……デートは相手の理解を深め、人格形成に寄与し、配偶者選択に欠くことができない過程である。……このような観点から見ると、日本のデート文化はきわめて未熟でルールが不明確である……」

これを読んで、自分の若い時(80年代)はどうだったか思い出してみたのですが、当時、「ポパイ」や「ホットドック」などが創刊され、洒落た店やスポットへ行くマニュアル・デートが流行っていました。あの時代でさえ、デートのやり方も教えてもらわないとできない人が多かったのかもしれません。

2000年に入って、若い人たちは成熟したデート(この言葉は死語?)をしているのか疑問です。

現在40歳前後の男性が結婚できないのは、もはやマニュアルは通じず、どうしたらいいかわからないからという気もします。

結局、デート文化を発展させられなかったともいえます。

話しはそれましたが、日本のデート文化が未熟なのは、コミュニティー内で相手と知り合うため、相互理解や人格形成はコミュニティーを通してある程度できるからかもしれません。

フランスでは、未知の人間との出会いが多いので、相手を理解するために、より密度の濃いデートが必要になるのだと思います。また、個人主義が確立しているため、コミュニティーに依存するより、個々の関係において人格形成していくのでしょう。

映画やテレビで観る西欧人のデートは、必ずしも日本人のデートと同じではなく、同じ恋愛結婚でも、そこにいたるまでの過程は違うようです。

日本の出会いがない現象は、コミュニティーが崩壊しつつあること、だからといって、個として人と交際するほど男女お互いが自立していないこと、が要因とも考えられます。

それでは、どのように出会いを作るか。コミュニティーを復活させるか、自立した人間に育てるか。

今日本でやっているのは、コミュニティーの復活路線でしょうか。

日本の出会いビジネスは、見合い型やデータのマッチングが多く、事前に相手を把握するコミュニティータイプといえるでしょう。そのほうが安心でき、自立した人間を作るより、時間もかかりません。ただ、それが機能しているかどうか。非婚化は歯止めがかかっていません。

「少子化対策」の一環としての結婚支援は、肌寒さを感じてしまいます。

このような記事に登場する結婚したいけどできない人は、まず結婚ありきで、相手にかなりの完成度を求めている印象を受けます。

恋愛過程でお互いを理解し、人間形成をしながら愛を育み、結婚の意志が生まれるというのとは違い、「とにかく嫁さん」的な(女性の場合は夫)、古い型の結婚の匂いがプンプンします。「楽して目標を達成したい」といった都合の良さというか。

恋愛には失望がつきものですが、自分が傷つくのを避け、結婚を夢見ているような。
恋愛の喜びや傷みを一度も経験しないまま、いきなり結婚相手を探そうとしても、うまくいかないのではないか、と個人的には思ってしまいます。

(2005.04.26 00:05)

フランスでは本気の恋もインターネットで始める
この夏に発売されたヌーヴェル・オブセルヴァトゥール誌で、出会い系サイトの特集が掲載されました。それによると、少なくとも600万人のフランス人が、インターネットで恋人探しをしているそうです。出会いの場は多種多様なのだから、インターネットもその...
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