フランスでは本気の恋もインターネットで始める

この夏に発売されたヌーヴェル・オブセルヴァトゥール誌で、出会い系サイトの特集が掲載されました。それによると、少なくとも600万人のフランス人が、インターネットで恋人探しをしているそうです。出会いの場は多種多様なのだから、インターネットもそのひとつとして受け入れる。これがフランス人の考え方のようです。

恋愛先進国フランスのla la laナンパ事情
自分から声をかけなければ、恋がスタートしない。まずは誘う。それがフランス人の恋愛の第一段階だ。しかし、それができない人も増えている。そこでインターネットを利用した出会いビジネスが登場。筆談パーティや、出会い応援ガイドも。2005年の記事。

2002年に創設したMeeticの会員は、現在13カ国で1700万人。これは氷山の一角で、フォーラムやチャットをはじめとする多くの出会いサイトがあり、かつてのダンスホールや仲介好きの友人サークル、結婚相談所にとってかわっている。
フランス国内に1200万から1400万人は存在するといわれ、その半分がこうしたサイトに参加している計算になる。

Meeticの経営者は、「最初は30代がナンパ目的にはじめたが、今では多くの人が社会的な関係を築こうと参加している」と述べる。

以前は、内気な人やコンプレックスを抱えた人、農業従事者、障がい者、移民といった人々が疎外感から逃れるために使っていたが、このところ、再婚を望む40代や老後に不安を抱く中高年者の利用が増えている。

特に女性の利用者が著しく、40%を占めているという。もはやインターネットの出会いは恥ではなく、カフェや学校の職員室でも普通に話題に上るようになったのである。

ウェッブ上には、インターネット・カップルが顔を出し、サイトのロゴが入った結婚式の写真を貼り付けている。人々は新しい道具を使いこなしているようだ。
簡単なクリックでチャットができ(21時頃がピーク)、そこにはドンファンやロメオが待ち構えている。

しかし、こうした出会いには危険が伴い、虚偽のプロフィールを掲載したり、自分の目的とは異なる相手と知り合う可能性も高い。

社会学者パスカル・ラルドリエさんは、「感情のザッピングだ」を指摘している。好みの相手と出会ったにもかかわらず、さらに良い人を見つけようと欲が出る。より美しく、より知的な、よりスポーティで、と要求がエスカレートし、次々に相手を乗り換えていくというのだ。Meeticには毎日2500人の新しい登録者が加わるのも、その証拠といえる。

また、精神科医シルヴィー・アンジェルさんは、「ネットでの出会いは、契約する準備が整っている人にとっては救いとなる。簡単にコネクトできるインターネットは、面倒な手順なしに価値ある会話をはじめることができ、複雑な人間関係で傷ついたナルシズムを慰めてくれる。ただ、その代償として、理想化に陥る危険がある」と語る。

インターネットでの出会いの場合、まずはメールでのやりとりからスタートし、文章スタイルや用いる言葉で相手を見定める。次なる手段は電話で、声や話し方によって判断する。それから面会へと進むのだが、ここで現実に目覚める人が多い。

また、本気で愛を求めている人は、目的が違う人との出会いにうんざりする。そういう人のためにうってつけなのが、心理学者のチームが創設した真面目なサイトParshipだ。ドイツや北欧では一番人気といわれ、フランスに最初に入ってきた心理学系出会いのサイトである。写真やごまかしの挑発はなく、チャットも限定されている。最初にユング風の心理テストを行い、その性格分析を基に、適合点数の高い人が紹介される。メンバー同士のコンタクトはメールだけ。

心理学者サブリナ・フィリップさんは、「昔の関係をひきずったままで新しい恋愛関係は築けないが、現代社会はテンポが速く、成長のために必要な期間が用意されているとはいえない」と語る。さらに、「男女の選択は、冷蔵庫や車とは違うことを、人々が忘れてしまっている。理想の基準を増やすことで、“良い”人を規定しようとしているのだろう。それは結局、消費社会の延長でしかない。基準はできるだけ限定すべきだ。なぜなら、二人の人間が面と向かって知り合うのが出会いであり、2つのカードの比較ではないのだから」と警告する。

社会学者ジャン=ピエール・カフマンさんはこう語る。「ネットは、出会いという最初の機会を容易に提供するが、長期的な交際という次の段階の問題を解決してはくれない。人々が求めている理想の男性や女性は稀な存在で、奇跡が起こったかのように実生活にはめこまれる。これは現実社会の裏に潜むイリュージョンでしかなく、自分自身を何も変えないで他人と関わろうとしているだけだ。こうした関係は恋愛において全く不可能である。男女関係を築くということは、自分の進む道を全面的に転覆させざるをえないからだ」

Meetic
登録は無料。出会いの目的は特になく、若者向けのお遊び感覚が強い。
登録をしなくても、地域と年齢を入力するだけで、1005人の写真入りプロフィールを無料で見ることができる。
ヨーロッパ13カ国のほか、ポーランド、ブラジル、中国、アジア、スペイン語圏(中南米)、英語圏(米国ほか)を網羅し、日本からの登録も。18から99歳の日本人で入力してみたところ、780人の日本人が英語のプロフィールと写真付きで検索された。

Parship
会員は200万人ほどで、女性が52%を占めている。料金は、3ヶ月117ユーロ、6ヶ月140.40ユーロ、1年238.80ユーロ。
心理テストは無料で、結果と相性のいい相手のリストを見ることができる。設問は90ほどあり、回答するだけで30分以上はかかる。単純な質問から、イラストを選択するタイプまで幅広く、かなり頭を使う。全て入力し終わると、「性格」「パートナーへの態度」「恋愛タイプ」などの詳細な結果が出る。
登録しなくても、自分とマッチする男性のリスト(写真や詳しいプロフィールは省略されている)140人以上を見ることができる。ただし、彼らと知り合うには、入会する必要がある。

(2006.11.22 22:40)

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