浮気を許せますか・フランス編 (1994)

故ミッテラン大統領の愛人騒動で、フランスのマスコミは、不倫や浮気問題を大々的に特集しました。

当時(1994年)の某女性誌に掲載された2つの記事の抄訳です。

・浮気を許しますか
・浮気が絆を強める:夫婦関係を維持しようと必死になるより、絆を強めるために「浮気」をうまく利用すべき。

浮気を許しますか

フランスでは、今でも、離婚の一番の理由は「浮気」。

しかし、不穏で失業率の高い現代社会、100年程前の妻のように、夫の浮気をがまんする女性が増えている。将来が不安で夫と別れられないのだ。

浮気を許すかどうかは、年齢、経済状況、階級によって違う。若ければ若いほど許せず、信心深ければ深いほど宗教の教えに従おうとする。

愛が神聖で、純愛を求める場合、浮気を許すことができなくなる。

人間は起きてしまったことを忘れることができない。何もなかったかのように、過去をクリアにではないのだ。

浮気の疑惑は簡単には消えない。浮気により、愛の理想は崩れ、幻想が壊れる。

許しとは、傷をいたわり、思い出を癒すこと。愛があれば許せると思っていても、実際は、許しているようで、ただ見逃したり、妥協しているだけだ。

本当の許しなど、存在しないのではないか。

アンヌ
行方不明だった夫(結婚10年)が、1年後、日曜の朝に戻ってきた。何もなかったように一緒に朝食を食べ、それ以来、あのときのことについて一度も話していない。これが許すということ。

ポーリーヌ
夫の浮気を知り、男友達に泣きつき、そのまま彼と一晩過ごした。この体験で救われた。相手と同じ立場にならなければ、許すことができない。自分が犠牲者だと思ってしまったら、寛大になれない。

ムリエール
夫の愛人との間にできた子供は、日陰の身を嫌がり、父親を追い求め続けた。やがて、その子は小児精神病院へ入ることに。愛人は、これこそ復讐したと大喜びした。

ヴィルジニー
9年間同棲した彼が、昔の恋人と浮気したと告白。私が許したため、関係は悪化した。私は、弱さや恐れ、過剰な依存から、彼を許したのだと思う。それは、相手に服従することを意味し、自分を惨めにした。許したことで、情熱を失った。

浮気のすすめ

マダム・フェガロの1994年調査では、浮気を完全に許せるフランス人は47%。

10年前の53%に比べ、その数は減っている。しかも、若い世代ほど浮気は許せないと断言。

一緒の生活が長いカップルは、「一時的な浮気で全ては壊れない」と考えている。

故ミッテラン前大統領には本宅と愛人宅の2つの家庭があった。フランス人の80%が、「両家族が良好な関係である」ことに好感を持っていた。

現代人が浮気と呼ぶ行為は、30年前には浮気とみなされていなかった。

失業や不況、エイズなど不安に満ちた時代には、人々は安定を最重視する。そして、純愛や誠実さが問われ、浮気が忌み嫌われる。夫婦生活を滅ぼす忌まわしい行為として。

しかし、そう思うところから、苦しみが始まる。完璧な愛を追求すれば、お互いを束縛し、身動きできなくなってしまう。

結婚3組のうち平均1組が離婚という数字は、誠実な愛を追求しすぎた結果でもある。

「私たちの愛は本物」「二人は心が通じ合っている」「お互い誠実でなければならない」

確かにこれは、美しい愛の形ではあるが、愛を理想化しすぎると、ささいなことで不満を感じ、二人の関係が不安定になってしまう。

絶対的な愛を求めるのは、お互いの首を締めることなのだ。

お互いの浮気を認め合い、うまくやっているカップルもいる。

二人きりでは息が詰まり、感情に乏しくなる。お互いを結びつける接着剤として、第3者の存在がいつも必要なのだという。

浮気はエンジンを作動させる燃料のようなもの。それぞれの自由を尊重しながらも、夫婦関係は崩さない。矛盾しているようだが、強い絆で結ばれているからこそ、このような関係が保てるのだ。

このようなカップルは、浮気を肉体関係だけと割りきっている。そして、一般のカップルのように、捨てられる恐怖や嫉妬に悩まされることはない。

二人だけの世界に閉じこもると、関係が円滑に機能しなくなる。それぞれが新鮮な外気を吸い、別の人と交流するのが大切だ。

もちろん、浮気は、人を傷つけ、死に追いやる可能性もある。

浮気は、いつも「終わり」がなければならない。浮気が本気に発展すると、悲劇を招くからだ。

頭で理解できても、人の感情は予想不可能。
浮気で誠実な愛を見出せるかどうかは、二人の信頼度にかかっている。

(2005.02.23 02:26)

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