男性学「男に生まれる―神話と実話」

10月から6回にわたり、「男に生まれる―神話と実話」という講座の進行を担当します。

「男も弱い人間である。ということを、女性は忘れていないか? 『男女の役割が変わったことによる男の戸惑い』を、女性はどれだけ理解しているか? 女性の権利を主張するだけでいいのか? 男性は自分の弱さを見せまいと虚勢を張っていないか? 弱さを認めることは恥ずべきことではなく、弱い自分を認めることで、女性や弱者の気持ちがわかるのではないか?」
こうした疑問がこの企画を提案した理由。

男性学は、90年代ごろ、欧州で盛んに語られていました。
女性が力をつけたら、男女の関係も必然的に変化する。
新しい男女の関係とはどうあるべきか。
こうした論点から、「男性についてもっと知ろう」という議論が活発に展開されていたのです。

でも、日本ではいまだにほとんど話題にならず、”男性と女性の新しい関係”など真剣に考えようとはしません。
女性は従うだけではなくなりました。
そうした社会変化のなか、男性は、強い女性の前ではやや腰を引きながらも、隙あれば「男らしさ」を主張し、自分より弱い女性を見つけて専横的な振る舞いをしています。

女性もまた、男性の弱さを認めようとしない傾向にあります。
女性は権利を要求したり、封建的な男を否定しながらも、「男にモテるメイク法」に夢中になり、「夫は自分より給料がいいのは当たり前」と言い張ったりします。
男性に”責任”と”頼りがい”を求める受身の姿勢はあまり変わっていません。

一番気がかりなのは、お互いがお互いを知らなすぎること。
その結果、悲惨な事件が生まれているのではないか、とも考えます。
たとえば、最近起きた福岡の事件のように、母親がわが子を殺めるといった事件が後を絶ちませんが、そのほとんどに、”夫”の存在が見えません。
相談相手として、”夫”は含まれていないのは、どういうことなんだろう。
「夫婦とはそういうもの」なのだろうか?
夫婦だけでなく、職場でも、社会のあらゆるところで、男女の関係が歪んでいます。
暮らしていくうえで、非常に息苦しい。

と、ここまで書きましたが、実は、少し自信がなくなっています。
男性学は、女性の権利がある程度保障されている成熟した社会で語られるべきで、現在の日本では尚早で、受け入れられないのではないか、と。
女性が力をつけるには、男性とよりよい関係を築くことが大切だと思います。
女と男の役割に変化が生じているのであれば、関係の変化にも焦点を当てるべきでなはいか、と。
多くの方がこの講座に参加し、活発な意見交換していただきたい、と思っています。

男に生まれる:神話と実話
全体コーディネーター:瀬名波栄潤(せなはえいじゅん) 北大文学部准教授 英米文学ジェンダー論

●日時:10月7日(火)開講 全6回(隔週火曜) 18:30~20:30
●会場:さっぽろ自由学校「遊」 (札幌市中央区南1条西5丁目愛生舘ビル2F)
●受講料:通し 一般6,000円 会員・学生4,800円 (単発 一般1,500円 会員・学生1,000円)
●問い合わせ:NPO法人さっぽろ自由学校「遊」
TEL.011-252-6752 FAX.011-252-6751
syu@sapporoyu.org  http://www.sapporoyu.org

生物としての男、社会が作り出す男性像、そして男達の本当の姿。フェミニストのボーヴォワールが『第二の性』で発した「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」はあまりにも有名ですが、男に生まれるとはどういうことなのか。
本コースでは、初回と最終回を除いては毎回ゲストスピーカーをお招きし、「男」についての研究やエピソード、そして多様な性を生きる「男」たちの生の声を紹介します。さあ、「男」について楽しくそしてまじめに考えましょう。

①10月7日(火) イントロダクション:男性神話と男たちの今
瀬名波 栄潤(せなは えいじゅん):北大文学部准教授 英米文学ジェンダー論
ウォーミングアップです。男の歴史、理想的男性像と男の現実、男の多様性、男として生きる楽しさやむずかしさなど、男を取り巻く環境を、映画を紹介しながら概観します。

②10月21日(火) 分子細胞遺伝学:生物としての男
黒岩 麻里(くろいわ あさと):北大創成科学共同研究機構講師
生物学的には女性は「原型」、男性は「模型」といわれ、デフォルトの女性か男性を作ります。男性がどのように作られるのか、男性とはどのような生物なのかを紹介します。

③11月4日(火) 男性学/男性性研究ヘの誘い
兼子 歩(かねこ あゆむ):大学非常勤講師 歴史学・ジェンダー論
「男について研究する」とはどんなことなのでしょう。いろいろな分野で行われている「男性学」とは何か、いったいどんなことが語られているのか、紹介いたします。

④11月18日(火) 楊貴妃になりたかった男たち2008
武田 雅哉(たけだ まさや):北大文学研究科教授 中国文学
男も女もそれらしい服装を–この規範はここ何千年、基本的には変わっていないようですが、ひねくれ者は必ずいるもの。その諸相を、中国の奇譚の海から拾い読みしてみましょう。

⑤12月2日(火) 性の多様性
田中たみえとHSA札幌ミーティングの人たち
田中さんは「性のバリアフリーをめざす会ピーナツハート」代表、HSAは「北海道セクシャルマイノリティ協会」のこと。彼らにとって、「男に生まれる」とはどういうことなのか。真面目に耳を傾けましょう。

⑥12月16日(火) 「男に生まれる」とは...?
瀬名波 栄潤(せなは えいじゅん):北大文学部准教授 英米文学ジェンダー論
最終回です。「男」って何なんだろう。参加者の皆さんとじっくり考えます。

(2008.09.23 22:23)

「男らしさ」から解放された男たち ・フランスの場合
フランスでは「男は仕事、女は家庭」と主張する男性が消滅し、マッチョは崩壊したが、男女の力関係の変化に戸惑ってもいるとか。女性は勝利に微笑んでいるわけではない。男性たちが求めているのは、媚びる男ではなく、一緒に新しい関係を模索したいのです。
不感症に陥る男性たち・フランスの場合
1990年代のフランス女性誌によると、性の悩みで診察に来る男性患者が、ここ数年20%ずつ増加しているそうです。 以下、抜粋です。 これからは、女性が男性の“弱さ”を理解してあげる時代。 70年代のフェミニズム運動で、男性の...
「男性の草食化進行」に合わせた生きやすい社会を
2014年の新聞記事に「男性『草食化進む』69%」とあるが、日本では否定的に茶化すだけに使われがちで、社会に反映されない。これは最近の現象ではなく、昔から延々とつづいている。無理して肉食系を装わなければならいのであれば、男性も苦しいはず。
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