「男らしさ」から解放された男たち ・フランスの場合

日本では、「仕事を持つ妻」に賛成が5割に達した(2005年)と喜んでいますが、半分は反対ってことだよね。

1995年ごろのフランスでは、24~34才の男性の80%が、「働く女性に好意的」でした。ちなみに、彼らは現在、50~60歳になってます。

つまり、幼い頃に「男は強い、泣くな」と教えられ、思春期にフェミニズム運動を目の当たりにした世代。学校でも職場でも、女性はすでに権力を手にいれ、積極的に生きる女性に慣れているのです。

フランス5月革命から30年の女性解放:教育と仕事
フランスの女性解放運動の出発点となった1968年5月革命。1998年の仏女性誌の特集記事を参考に、教育の男女平等、仕事の男女差別撤廃、政治への女性参加の過程を追った。90年代までフランスは「男は仕事、女は家庭」という日本と似たような状況だった。

「24~34才(現在、50~60歳)のフランス男性が最優先したいこと」を調査した結果、1位「カップルで仲良く暮らす」、2位「子を持ち、育児の時間を作る」。「仕事の成功」は3位。

「男は仕事、女は家庭」と主張する男性が消滅し、マッチョは崩壊したそうです。

ただし、男女の力関係の変化に戸惑ってもいるとか。

女性の社会進出に賛成しつつも、「女性にはかなわない」と認めるのが悔しい気もするのです。でも、時代には逆らえません。そこで、彼らは決心する。「優しくしよう。女はマッチョが嫌いなんだから…」と。

フランス男性が見た女性(2002)
女性誌DSが、2002年5月17・18日に18歳以上の男性480人を対象に行ったもの。 Le regard des hommes sur les femmes, TNS 女性のどこに惹かれるか 優しさ 48% 知性 45% ...

フランスでは、子供を欲しがる男性が増えているとも。

以前、「女は子を産む道具ではない」と主張するのは女性でしたが、今では、「男はただの“種”ではない」と抗議する男性が現れました。70年代のピルの解禁で、女性は産む産まないの決定権を手に入れた。でも、男性の意見も聞くべきだと訴えているのです。

現在65~75才ぐらいのフランス人は、フリーセックス世代で、男らしさを放棄。

60年代後半から70年代に青春を過ごした若者は、フェミニズムの影響で、強い男を演じる必要がなくなりました。「束縛されず楽しむ」自由を求め、家父長制度はガタガタと崩していったのです。

フランスのでも、自制と引退を心得た、責任感のある男性がいなくなったと嘆く声もあるそうです。

彼らは、 “永遠の子供”として人生を謳歌しています。見た目はイマイチでも、精神的にまだ若い。金もあるし、安定しているから、若い娘に評判がいい。

60年代後半から70年代に若者だった世代は、自分の欲望を最優先に考えます。セックスはしたいが、責任は取りたくない、と。

いつまでも若々しく生きるのは結構だが、50才で生まれた子供の将来はどうする?

団塊世代の子供たち(現在、45歳前後)は、“犠牲の世代”。

そんな親を見て育ったのが、「自由でありながら、いい父親になりたい」と考える若者たちで、不安に満ちた社会に、空しく投げ出されている状態です。

仕事がない、希望がない。抵抗してもムダだとあきらめ、無責任でエゴイスト。

自分が世界の中心だと思い込み、すぐ一人で突っ走ろうとする。

男性が威張る社会は崩壊したが、女性は勝利に微笑んでいるわけではない。男性たちが求めているのは、媚びる男ではなく、一緒に新しい関係を模索したいのです。

(2005.02.11. 00:54)

フランスの世論調査:21世紀男性像(2004)
フランスやイギリスでは、女性の生き方を左右する男性についての研究が盛んです。 ほとんど日中家にいるので、地方の情報番組をよく見てしまうのですが、「女性におすすめのレストラン」とか「女性にやさしいですね」という言葉をよく耳にします。 ...
フランス女性の夢見る男(2003)
2003年8月18日、エル誌が行った調査。15歳以上の女性525人にアンケート。 Comment les femmes rêvent-elles d’être aimées ? Ifop どのタイプの男性に愛されたいですか? ...
「男性の草食化進行」に合わせた生きやすい社会を
2014年の新聞記事に「男性『草食化進む』69%」とあるが、日本では否定的に茶化すだけに使われがちで、社会に反映されない。これは最近の現象ではなく、昔から延々とつづいている。無理して肉食系を装わなければならいのであれば、男性も苦しいはず。
タイトルとURLをコピーしました