国立人口問題研究所(INED)のシンポジウム(2000年)の資料で、興味深い箇所を見つけました。
Henri LERIDON(国立人口問題研究所ディレクター)の「家族:崩壊と継続」。
家族における進化は2つある。ひとつは、少子高齢化で、家族組織は再編成されている。
少子化により、兄弟姉妹、従兄弟、義兄弟は減ったが、両親、祖父母、曾祖母の数は減らない。二人の両親、四人の祖父母、八人の曾祖母は変わらないのである。
しかも、高齢化により、これらの縦の関係は延長しているともいえる。
子供たちにとって、同世代の横の関係は縮小しているが、縦の関係は拡大しているのである。
これを読んで思い浮かんだのは、最近日本で頻発している「親殺し」「祖父母殺し」。横の関係でのストレスを解消できず、すべてのエネルギーが縦の関係に集中している可能性があるのではないでしょうか。
もうひとつは結婚の衰退で、70年代からその現象ははじまっている。
1945年生まれの女性の92%、男性の88%が50歳前に結婚をしているが、拡大適用してみると、1967年生まれは女性の71%、男性の65%が50前に結婚し、30~35%が未婚という計算になる。
この未婚率の高さは、結婚制度が成立して以来、前例のない数字である。
フランスでは、結婚を基本にしたカップル関係や親子関係の考え方が変わりつつあります。
30%にいたると、発言力が増すそうです。 1967年生まれが50歳に達した頃には、未婚者がその域に達する計算です。
ただし、あくまでも未婚で、事実婚している場合もあるので、完全なる独身とは限りません。
いずれにしても、これまでの結婚制度には頼らないカップル関係がより市民権を得ることになりそうです。
日本では、30~39歳の男性の30%以上、30~34歳の女性の約30%が未婚。もうすでに、結婚していないことが普通になっているともいえます。
それなのに、未婚を異常事態のように騒ぎ立てるのはどうしてでしょう?
考えてみれば、男性は40代でも子供を作るのにそれほど支障があるわけでもなく、医療技術の向上して高齢出産の年齢も上がっているので、30代後半から40代で二人ぐらい子供を作るのも悪くないはず。
もちろん、育児に費やす体力を考えて、それをカバーする仕組みを作り上げる必要はあるけれど。
また、離婚は増加し、1980年には結婚したカップルの1/3が離婚している。
さらに、婚外子が増加し、1997年の出生数のうち、40%が結婚していないカップルから産まれた子供である。
これらもまた、結婚制度が成立して以来初めての現象である。
さらに、25歳以下の子供を持つ片親家族も増加している。そのうち、母子家庭が圧倒的で、85%を占める。
ただし、結婚の減少が、独身者の増加とはならない。
結婚以外の方法で、男女関係を築く、新しいカップル生活が生まれているのである。
カップルで生活する人のうち、同棲から始めた人は、1968年の15%から、1988年の90%に上昇している。
1994年の調査によると、20~49歳の男性の51%が「既婚」、20%が「同棲」、8%が「安定した恋人がいる」、21%が「恋人がいない」という結果になった。
男性の場合、同棲の多い年齢は、25~29歳で33%。30歳以降は、結婚が5割を越す。
女性の場合、20~49歳の女性の56%が「既婚」で、18%が「同棲」、8%が「安定した恋人がいる」、18%が「恋人がいない」。
同棲と結婚の関係をみると、同棲が5年続いているのは48%、籍を入れたカップルが30%、22%が崩壊。
10年前に同棲を始めたカップルの場合、47%が結婚し、21%が同棲状態を続けている。
20~49歳の男性で同棲の経験がないのは21%。同棲相手の数は、63.8%が一人の相手、二人以上相手が変わったのは14.6%。
女性の同棲未経験者は14.6%、ひとりと同棲が72.5%、二人以上が12.9%。
もうひとつの特徴として、カップルが誕生した段階では、子供が介入してこないことがあげられる。
パートナーとの時間を最も重視し、二人の生活を楽しもうとする。
そして、子供を持つと決心した段階で、結婚へと移行するケースが多い。
ただし、子育ては物質的な問題だけでなく、カップルを維持する点においても難しい。
それが、子供を作るのをためらう理由になっている。
結婚制度はゆらぎ、それにかわる関係として、同棲が一般化しています。単純に比較はできませんが、日本ではまだそこまで進んでいませんね。進むという表現は的確ではないのかもしれません。
結婚制度に変わる関係については、あまり語られませんね。
そこまでして、男女一緒にいたいとは思ってないのでしょうか?
(2005.08.01 00:02)