フランス結婚事情:事実婚が増えて結婚は時代遅れに

フランスでは、カップルの約半分が、ユニオン・リーブル(自由結合)とかコアビタシオン(同居)と呼ばれる事実婚です。法的権利も、結婚とあまり変わりません。同性愛者の事実婚にも適用される、パクスという法律もあります。

結婚観が変わり、法律も整い、さらに結婚へのこだわりが薄れたようです。それでも、出生率は増加しています。婚外子への権利も確立しているからです。

日本はというと、意外に結婚観そのものは変わっていないような気がします。ブログなどで独身者の意見を拝見すると、事実婚を目指してはいる人はほとんどいない。やはり、最終目的は結婚のような。人と住んで男女関係や親子関係を築くことより、「結婚」が前にきている感じがします。今でも。

でも、昔ながらの結婚はイヤで、婚期(フランス語や英語で婚期という言葉があったかな?)が遅れる。結婚しなければ、子供も作れないから、少子化が進む。

果てしなく悪循環ですね。

今回は、1990年代に女性誌に掲載された、社会学者イレーネ・テリーのインタビューより、「結婚願望消滅」編です。
70年代、男女平等の社会になり、お互いを尊重しだしたことで、離婚は増加した。

愛もなく、対立しながらも同居する夫婦は消滅した。修復不可能なカップルは、離婚を望む。

当時の離婚ブームは、個人主義のワガママではなく、むしろ、男女関係の質が向上したことを示している。

90年代初頭からは、離婚率は全く増加していない。ある精神分析学者は、「20年前の患者は、どうしたら離婚できるかと相談に来たが、今では、どうしたら一緒に暮らしていけるかと悩んでいる」と語っている。

離婚が一般的となり、うまくいかなければ、簡単に別れることができるのである。

昔の夫婦は、多くの危機を乗り越えてきたであろうが、何がなんでも一緒に暮らすべきと強制することはもはやできない。

昔の夫婦は、「結婚し、たくさんの子供を育てる」だけで、その後はなかった。家族の定めに従うだけ。しかし、現在の夫婦は、家族を作るだけでなく、家庭に、個を持ち込みたがる。夫婦の対話を続けたいと主張するのだ。

夫婦とは、独立しながらも、家族組織として機能しなければならない。個人の期待が増加すると、それに比例して、男女の絆は弱まる。

以前は、固く結ばれた夫婦でいることを望み、妻は何も言えなかった。しかし、現在は、妻は夫と対等な立場で、対話しようとする。対話は、つねに対立や口論、別れのリスクを伴うということを、よく理解しなければならない。最近進歩したことといえば、女性が対話するようになっただけだ。

男女平等は、現実にはほとんど実現していない。フランス男性の60%が全く家事をしないため、多くの女性が、1日に仕事と家事の2つの労働を強いられている。夫婦間の無理解、育児ストレス、罪悪感はいまだに存在している。多くの女性がアイデンティティーを持てないでいるのだ。

70年代、家族の負担や束縛、偽善というイメージが強調され、結婚幻想は崩壊した。

しかし、現代の若者は、結婚に悲観的なイメージを持っていない。親とは違う関係を築いている。

現在の結婚の特長は、「伝統的なモデルに当てはまらない自分をどうわかってもらうか」ではなく、「一生ともに生きる相手に出会ったことをどうはっきり証明するか」である。

婚期を遅らせている人たちは、離婚を避けるための無意識な戦略として、結婚を急がないではないかと思う。同じ人との40、50年もの長期にわたる生活は、難しいと考えているのだ。

結婚の意味は、一緒に年をとり、それを証明することにある。ウエディングドレスのようには、結婚を評価できないのだ。

(2005.03.28 11:24)

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